プロフィール

総合保険代理店で個人を対象とした家計相談やライフプランニングを約10年経験。2021年以降は金融専門ライターとして複数メディアで活動しており、大手証券会社・保険会社や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。 暗号資産や投資信託、国内株式などによる資産運用も積極的に行っている。
異なる2国間で通貨を交換(売買)する外国為替取引。なかでも、FX(外国為替証拠金取引:一定の証拠金を業者に預けることで証拠金以上の金額で外国為替取引ができる取引制度)は少額から始められ、また、少ない資金で大きな金額を取引できる仕組み(レバレッジ)を活用することで、大きな利益を狙えるため人気の取引方法です。
しかし、為替取引のリスクを理解せずにFXなどの外国為替取引を利用すると、思わぬ損失を被ることがあり注意が必要です。そこで本記事では、初心者の方にわかりやすく、為替取引のリスクを解説します。リスクを正しく理解し、適切な対策を講じて、安全な資産運用を目指しましょう。
海外旅行やFX取引など、自国の通貨を外国の通貨と交換する場面では、常に「為替リスク」が伴います。この為替リスクは、取引リスク、経済リスク、会計リスクの3つに大別されます。まずは、為替リスクの種類や発生する理由について詳しく解説していきましょう。
為替リスクとは、通貨を外国のお金に交換するときの価格(為替レート)の変動により、損失を被ってしまう可能性のことです。
例えば、海外旅行に行くために、1ドル=140円で両替したとしましょう。帰国時に1,000ドルが残った場合、その金額は両替時の価値にすると140,000円です。ところが、旅行中に為替レートが変動して、帰国する際には1ドル=130円になっていました。ドルを再び円に戻すと、1,000ドルは130,000円にしかなりません。このように、為替レートが変動することで、両替したときよりも少ない金額しか返ってこない現象が起こります。これが為替リスクです。
為替リスクには、主に3つの種類があります。
1. 為替取引リスク
FXでは、常に2つの通貨をセットで取引します。これを通貨ペアといいます。例えば、「米ドル/円」という通貨ペアでは、ドルを買って円を売る、またはその逆を行います。もしドルを買って、その後ドルの価値が下がった場合、持っているドルを売るときに損失が出ることがあります。これが為替取引リスクです。つまり、買った通貨の価値が下がると損失が出るリスクがあるのです。
2. 為替経済性リスク
FXで使われる通貨ペアのレート(交換レート)が変わると、経済にも大きな影響があります。例えば、円安になると、日本の企業が海外に商品を売るときは安く売れるので、利益が増えることがあります。一方で、外国から物を買う企業や、輸入品を買う私たち消費者にとっては、物が高くなってしまい、生活費が増えることもあります。これが為替経済性リスクと呼ばれるものです。
3. 為替換算会計リスク
企業が外国の取引先と通貨ペアを使って取引をすると、為替レートが変動することで企業の帳簿上の利益や損失に影響が出ることがあります。例えば、日本の企業がドルで取引をしている場合、決算時に「米ドル/円」の為替レートが変わると、実際の利益が帳簿上変動して見えることがあります。これは主に企業に影響するリスクですが、個人投資家にとってはそれほど重要ではありません。
FX初心者の方は特に、基本である為替取引リスクについてしっかりと理解しておきましょう。
為替レートは、さまざまな要因によって常に変動するものです。日々のニュースや出来事に反応して、価格が上下に動いています。
主な要因は以下のとおりです。
・各国の経済状況を示す指標(経済指標)
国内総生産(GDP)、雇用統計、消費者物価指数などの経済指標が発表されると、その内容によって為替レートが大きく変動することがあります。
・各国の中央銀行が実施する政策(金融政策)
政策金利の変更、量的緩和などの金融政策も、為替レートに影響を与えることがあります。
・各国の政治の状況変化(政治情勢)
選挙の結果や国際関係の変化など、各国の政治情勢によっても為替レートが変動することがあります。
・投資家たちの心理状態(市場心理)
投資家の市場心理が楽観的な場合や悲観的な場合にも、為替レートに影響が出ることがあります。
これらの要因が複雑に絡み合って為替レートが日々変動し、それが為替リスクの発生源となっています。
FX取引には、レバレッジや取引の仕組みに特有のリスクが潜んでいます。具体的に、主なリスクの種類はレバレッジリスク、約定力リスク、
信用リスクの3つです。それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
FXは、少ない資金で大きな取引ができる仕組み(レバレッジ)があります。レバレッジとは、手元の少ない資金で、それ以上の金額を取引できる仕組みです。10万円を元にしてレバレッジ25倍を使うと、250万円相当の取引が可能になります。これは、FX取引において少額の資金でも大きな取引ができるメリットのひとつです。
ただし、利益が増える分、損失も同じように大きくなるため、リスク管理が重要です。また、日本国内のFX会社の場合、金融庁によってレバレッジは最大25倍に制限されています。
約定リスクとは、自分が希望するタイミングで売買できず、注文したレートと実際に約定(やくじょう:取引が成立すること)するレートにズレが生じるリスクです。
例えば、1ドル=100円のときに「1ドルを買いたい」という注文を出したとします。しかし、注文を出したあとに為替の変動があり、取引が実際に成立するタイミングでは、1ドル=99円になってしまうことがあります。このように、注文を出したときの価格と、取引が成立したときの価格がずれてしまうことがあるのです。
約定リスクが生じる理由は、主に以下の3つです。
・相場が急に動いたとき
価格が大きく変動しているタイミングで注文すると、FX会社に注文が到達するまでの間に価格が変わってしまい、思った価格で売買できないことがあります。
・FX会社の処理能力が低いとき
注文がたくさん集中すると、処理が遅れて思った価格で売買できないことがあります。
・注文方法と注文額
売値や買値を指定せず、その瞬間の市場価格で売買する成行(なりゆき)注文という注文方法では、価格が変わるリスクが高まります。大きな金額の注文は、約定しにくく、不利なレートで約定する可能性もあります。
FX会社が倒産すると、自分のお金がどうなるか心配になるでしょう。これを「信用リスク」といいます。国内のFX会社であれば、法律でお金は守られ、FX会社が倒産しても返ってくるようになっています(信託保全)が、海外の会社ではそうとは限りません。
特に、海外のFX会社の中には、あなたのお金と会社のお金を一緒に管理しているところがあります。そのような会社が倒産した場合は、あなたのお金も一緒に消えてしまうかもしれません。そのため、FXを始める際は信頼性の高い会社を選ぶことが大切です。
FX取引で非常に重要なのが、為替レートです。世界中のさまざまな出来事が、為替レートを動かしています。為替レートの変動は私たちの生活にも影響を及ぼし、さらにFX取引では急激なレート変動によるリスクもあります。
以下で為替レートが動く具体的な理由と、その影響について詳しく見ていきましょう。
為替レートは、異なる国の通貨を交換するときの比率を示すものです。為替レートは、通貨をほしい人の数(需要)と、通貨を提供したい人の数(供給)の関係によって決まります。
例えば、アメリカ経済が好調な場合、多くの人がドルを買おうとします。ドルの需要が増えることで、ドルの価値が上がり「ドル高」になります。一方で、ドルが上がると円の価値が下がることが多く、これを「円安」といいます。円安になると、同じ1ドルを買うのに以前より多くの円が必要になり、輸入品の価格が上がるなどの影響があります。
為替変動は、私たちの生活や経済全体にもさまざまな影響を与えます。
例えば、円安になると以下のような影響があります。
・海外旅行の費用が高くなる
同じ金額のドルを買うために、より多くの円が必要になります。
・輸入品の価格が上昇する
海外から輸入する商品の価格が、円換算で高くなります。
・輸出企業の収益が増加する
海外に販売する商品の価格が現地通貨換算で安くなるため、販売量が増加したり、利益率が向上したりする可能性があります。
短時間に大幅な為替変動が起こる現象を、フラッシュクラッシュといいます。例えば、ドル円の取引をしている場合、1ドル=100円で取引していたものが、数秒で1ドル=90円や80円といった大幅な変動をすることがあります。
フラッシュクラッシュが発生すると、相場が急激に下落または上昇するため、トレーダーの損失が瞬時に大きくなる可能性が高くなります。また、急激な変動で市場が混乱すると、注文が正しく処理されない「約定拒否」や、取引が成立しにくくなるケースも発生します。そのため、損切りが間に合わず損失が拡大する場合もあります。
FX取引には、為替リスクが欠かせません。しかし、きちんと対策すれば損失を抑えられ、安心して取引を楽しめます。具体的には、情報収集、損切り注文の活用、資金管理の徹底などが挙げられます。これらの対策について、順に見ていきましょう。
為替リスクを軽減するためには、経済指標、金融政策、市場の動向といった情報収集が重要です。以下に、常にチェックするためのツールや情報源を紹介します。
・経済指標カレンダー
経済指標の発表日時や予想値、結果を一覧で確認できるツールです。特に、重要な指標が発表される前後の為替の動きを予測するために使います。例えば、米国の雇用統計や日本のGDPなどが表示され、結果次第で為替が大きく動くことがあります。
・為替関連のニュースサイト
為替市場に影響を与える経済や政治のニュースを素早く確認できるサイトです。こういったサイトでは、世界各国の最新の出来事や金融政策の変更など、相場に影響を与える情報がリアルタイムで提供されます。これにより、投資家は市場の変動を予測し、適切なタイミングで取引を行う助けとなります。
・専門家の意見やアドバイスを参考にする
XやFacebookなどでは、専門家や投資家がリアルタイムで意見を発信しています。為替市場に影響を与える出来事に対する反応をすぐに参考にできます。信頼できる専門家をフォローすることで、役立つ情報が得られます。その他、FX会社が開催するセミナーや投資家が運営するオンラインコミュニティに参加するのもよいでしょう。
損失が大きくなる前に、ポジション(通貨ペアの保有している取引状態のこと)を決済して損失を確定させることを「損切り注文」といいます。初心者の方は、事前に損切り注文を入れられる「逆指値注文」がおすすめです。
損切りラインの設定方法は、以下のとおりです。
1. 許容できる損失額を決める
自分の資金やリスク許容度に合わせて、事前に損失の上限を決めておきます。リスク許容度とは、自分が取引でどれだけの損失を精神的にも経済的にも受け入れられるかの基準です。これに基づいて無理のない範囲で取引を行うことが重要です。
2. 逆指値注文を設定する
逆指値注文を設定するには、まず「この価格になったら自動的に取引を終わらせたい」という価格を決めます。この価格を指定すると、相場がその価格に達したときに自動的にポジションが決済され、損失を最小限に抑えることができます。設定方法としては、取引プラットフォームの注文画面から「逆指値」や「ストップ注文」を選び、希望の価格を入力するだけです。
上図のように、損切りラインに逆指値注文を設定しておけば、損失が拡大する前に自動的に決済できます。
資金管理を徹底するためには、以下を実践すると効果的です。
・損切り幅を決める
許容できる損失額と目標とする利益額を事前に決めておき、それに基づいてポジションサイズを調整します。ポジションサイズとは、1回の取引でどれだけの通貨を取引するかを指します。FXや株式取引において、ポジションサイズを決めることは、自分の資金やリスク管理において非常に重要です。
・2%ルールに従う
2%ルールとは、1回の取引における損失を総資金の2%以内に抑えることを指します。例えば、資金が100万円であれば、1回の取引の損失を2万円以内に設定します。
・余剰資金で取引する
生活費や緊急資金に手を付けることなく、余裕を持った資金で取引を行うことが重要です。
FXは、少ない資金で大きな利益を狙える可能性があるものの、リスクも高い投資手段です。そのため、まずはリスクを十分に理解し、適切な対策を取ることが大切です。
投資初心者の方は特に、最初は少額から始めて徐々に経験を積み、取引に慣れていくことが安全な方法です。焦らず、一歩ずつFXの仕組みを学びながら進めることで、安定した取引を目指しましょう。FXを楽しみつつ、リスク管理を怠らない姿勢が成功の鍵です。