プロフィール

明治大学卒業。金融ソフトウェア開発、国内生命保険会社の法人営業を経て、独立系FPとして開業。個人や法人オーナーへのコンサル業務、企業型確定拠出年金の導入支援の他、金融ライターとしても活動中。 保有資格:CFP®・DCアドバイザー・証券外務員二種
会社員や公務員の中には、投資信託の利益が出ても、できることなら確定申告をしたくないと考える方がいるかもしれません。投資信託を売って利益を得ると原則として確定申告が必要ですが、しなくてもよいケースもあります。
本記事では、投資信託の利益の種類や税金の計算方法、確定申告の方法についてわかりやすく解説します。
投資信託を買った場合、確定申告が必要になるのは利益を得たときです。投資信託の利益には、分配金と値上がりしたときに売って得られる売却益(譲渡益ともいう)があります。最初に、投資信託の利益について見ていきましょう。

投資信託の分配金とは、運用で得た収益を決算時に投資信託の購入者に分配するお金のことです。分配金には普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の2種類があり、普通分配金は運用によって得られた利益、つまり、個別元本(投資信託を購入した時点での投資信託の値段)に上積みされた分が分配されます。
普通分配金を受け取るには、投資信託の決算日(投資信託において一定期間の運用成果の収支計算をする日)の前日時点で投資信託を買い付けしていなければなりません。決算日は投資信託によって異なりますが、通常は年1~12回程度設定されています。
普通分配金は投資信託の利益部分から支払われるため、受け取った分配金は課税対象となります。
例えば、基準価額(投資信託の値段)が10,000円のときに購入した投資信託が、決算時に11,000円と値上がりし、分配金は1,000円だったとします。この場合、分配金は利益部分から支払われているため、全額が普通分配金となり、課税されます。
ただし、受け取る前に所得税・住民税が金融機関によって源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。
投資信託の売却益とは、投資信託を売却または解約した際に、購入したときよりも値上がりしていた場合に得られる利益のことです。
投資信託は、日々変動する基準価額で取引されます。
例えば、基準価額が10,000円の投資信託を1口(くち:投資信託の取引の単位)購入した後、基準価額が12,000円に上昇したタイミングで売却すると、1口あたり2,000円の売却益が発生します。
逆に、売却時の基準価額が購入時よりも下回っていた場合は売却損となり、税金はかかりません。

特別分配金(元本払戻金)とは、投資信託の個別元本の一部を払い戻すものです。分配金の支払い後の基準価額が個別元本を下回る場合、その下回った部分が特別分配金として扱われます。
例えば、基準価額が10,000円のときに購入した投資信託が、決算時にも10,000円のままで、分配金は1,000円だったとします。この場合、分配金は利益部分から支払われていないため、全額が特別分配金となるのです。この場合、個別元本は9,000円に修正されます。
特別分配金は投資家が投資した元本の一部が戻ってきたものと考えられるため、課税の対象外となり、確定申告は不要です。
投資信託の分配金を受け取ったり、値上がり益を得たりすると税金がかかります。以下で、税金の計算方法を解説します。
投資信託で得た利益にかかる税率は、20.315%です。内訳は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%となっています。
この税率は、普通分配金と売却益の両方に適用されます。

投資信託の税額は、普通分配金や売却益に税率をかけて計算します。売却益の計算式は以下のとおりです。
売却益 = 売却金額 - (購入金額 + 諸費用)
売却金額や購入金額は、その時点での基準価額に口数をかけて計算します。諸費用とは、購入時手数料や消費税、売却時にかかる信託財産留保額(投資信託の換金時に投資家が負担する費用)などです。これらの費用は、かからない場合もあります。
例えば、投資信託の購入金額500,000円、売却金額550,000円、諸費用がかからなかった場合、税金は以下のとおりです。
所得税・住民税 = 550,000円 - (500,000円 + 0円) × 20.315% = 10,158円(端数切り上げ)
普通分配金を10,000円受け取った場合、源泉徴収される税額は2,031円(10,000円 × 20.315%)となります(端数切り捨て)。
投資信託で得た利益については原則として確定申告が必要ですが、不要となるケースもあります。次に、確定申告が必要なケースと、不要なケースを解説します。自分の場合はどうなるかを確認しましょう。
投資信託で利益が出た場合、以下のケースでは確定申告が必要となります。
・特定口座(源泉徴収なし)で取引している場合
・一般口座で取引している場合
・損益通算や繰越控除を適用したい場合
・配当控除を受けたい場合
(※用語注釈)
・特定口座:個人投資家の申告・納税手続きを簡単にするための口座。
・一般口座:譲渡損益、利子や配当などの損益通算などの計算や納税手続きを投資家自身で行う口座。
・損益通算:投資信託の売却損と分配金のような同一年分の利益と損失を相殺すること。
・繰越控除:損益通算した結果生じた損失額は、翌年以後3年間繰り越すことができ、利益に対する控除として適用できる。ただし、損失を繰り越すためには毎年確定申告が必要。
・配当控除:受け取った分配金について総合課税(所得を合算して所得税を計算する方法)を選んで確定申告する場合に適用される控除。
特定口座(源泉徴収なし)と一般口座では税金が自動的に差し引かれないため、投資家自身が確定申告で税額を計算し、納付する必要があります。ただし、特定口座では金融機関が年間取引報告書を発行するため、税金の計算は簡単です。
特定口座(源泉徴収あり)で投資信託の取引をしている方は、口座内の利益と損失は自動的に損益通算されます。しかし、複数の口座に利益と損失がある場合、確定申告をしなければ損益通算ができません。
また、投資信託の利益にかかる税金は、基本的には給与所得のようなほかの所得とは分けて計算する「分離課税」という課税方式です。しかし、配当控除を受けたい場合は、ほかの所得と合算して税金を計算する「総合課税」という課税方式になり、確定申告が必要になります。
投資信託で利益が出ても、以下のようなケースでは確定申告が不要となります。
・会社員で給与所得以外の所得が20万円以下の場合
・特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合
・NISA口座で運用している場合
NISA口座とはNISA制度(少額投資非課税制度)に基づき、株式や投資信託から得られる利益が非課税になる口座です。
会社員や公務員で給与所得以外の所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。具体的には、副業や投資から得た利益がこの範囲に収まっている場合が該当します。ただし、住民税については別途申告が必要である点に注意しましょう。
投資信託の取引口座が特定口座(源泉徴収あり)の場合、金融機関が税金を徴収して納めてくれるため、確定申告は不要です。また、NISA口座から生じた利益には税金はかからないため、確定申告の必要はありません。
上述のように、投資信託で利益が出た場合でも確定申告の必要がないケースもあります。しかし、確定申告が必要になる可能性も考えておくことが大切です。投資信託の利益について確定申告する場合、その方法を確認しておきましょう。
取引口座が特定口座の場合、源泉徴収あり・なしにかかわらず、確定申告に必要な情報は金融機関が発行する「特定口座年間取引報告書」に記載されています。特定口座年間取引報告書は毎年1月頃、前年分が発行されます。
特定口座年間取引報告書の記載項目は、年間の譲渡損益や配当等の金額、源泉徴収税額などです。この項目をもとに、比較的簡単に確定申告ができます。
投資信託の取引口座が一般口座の場合は、確定申告を行う際に自分で損益計算をする必要があります。計算には金融機関が発行する「取引残高報告書」と「取引報告書」を使用します。
取引残高報告書は、金融機関が顧客に対して一定の頻度で、期間内のすべての取引内容と取引残高を報告する書類です。また、取引報告書は投資信託や株式の取引内容が記載された書類で、金融機関によって取引のたびに発行されます。
これらの書類をもとに年間の損益を計算し、確定申告書に必要事項を記入します。
確定申告は、毎年2月16日~3月15日までに行う必要があります。
確定申告で必要な書類は、以下のとおりです。
また、確定申告の流れは以下のとおりです。
1. 申告書の作成:所得金額や所得税額を計算し、その他の必要事項とともに申告書に記入
2. 申告書の提出:郵送、税務署に持参、e-Taxなど
3. 納税(納付税額がある場合):納付書、振替納税、クレジットカード、インターネットバンキングなど
申告書の作成では、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に沿って入力するだけで自動的に所得税が計算されます。損益通算などにも対応しているため、ミスなく簡単に申告したい方は積極的に利用しましょう。
投資信託の分配金は税金が源泉徴収されるため、取引口座の種類にかかわらず確定申告は必要ありません。売却して利益が出た場合、NISA口座や特定口座(源泉徴収あり)で取引していた方以外は確定申告が必要になる可能性があります。
初めて金融機関に証券口座を開設する場合、確定申告の必要がない特定口座(源泉徴収あり)を選ぶといいでしょう。