プロフィール

総合保険代理店で個人を対象とした家計相談やライフプランニングを約10年経験。2021年以降は金融専門ライターとして複数メディアで活動しており、大手証券会社・保険会社や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。 暗号資産や投資信託、国内株式などによる資産運用も積極的に行っている。
投資信託を選ぶときに、どのように選べばいいかわからない方も多いのではないでしょうか? 本記事では、投資信託の特徴や選ぶ上での注意点など、投資信託の選び方を初心者向けに解説します。本記事を参考にして、自分に最適な投資信託を選んでください。
投資信託とは、投資家が投資したお金を1つの資金としてまとめ、運用の専門家(ファンドマネージャーとも言います)が代わりに運用する金融商品です。投資信託の収益には、基準価額(投資信託の値段)の値上がりによって生じる「譲渡益」と、運用で得られた収益の一部を投資家に還元する「分配金」の2種類があります。なお、投資信託の運用状況や運用方針によっては分配金が出ないこともあります。
<投資信託の特徴>
投資信託の特徴は以下のとおりです。
1.運用の専門家が投資してくれる
運用の専門家(ファンドマネージャー)が投資対象の調査・分析・選定を行ってくれます。そのため、投資にかかる手間を省きつつ、効率的な運用ができる可能性があります。
2.分散投資でリスクを軽減できる
分散投資とは、異なる投資対象や地域、分野に分散して投資を行うことで、リスクの軽減を狙うことです。投資信託は値動きの異なるさまざまな金融商品を組み入れています。そのため、1つの投資信託を購入するだけで、分散投資の効果を得ることが可能です。
3.少額から購入できる
投資信託のなかには100円程度の少額から購入できるものもあり、まとまった資金がなくても手軽に始められます。
投資信託に投資する際は、投資の目標を明確にさせておくことが重要です。その理由について解説していきましょう。
目標を明確にすることで、以下のことが可能になります。
投資の方法が定まる
目標を設定することで「どのような金融商品に、どのくらいの期間投資すればいいか」が明確になります。目的によって投資方法や投資期間が変わるため、あらかじめ決めておきましょう。
リスク管理できる
資金がいつまでにどのくらい必要なのかわかれば、そこから逆算して「どれだけリスクを取れるか」が明確になります。投資家の属性(年齢・資産額など)や時間の制約(いつ資金が必要なのか)によってリスク許容度(投資収益がマイナスになったとき、どれくらいまで受け入れられるか)が変わってくるので、確認が必要です。
運用方法の見直しが可能になる
ゴールを定めることで、設定した目標や想定から現状が大きく外れていないかといった比較が可能になります。結果に応じて定期的に運用方法や投資する商品の変更を行うなど、目標の数値に近づけるよう見直しましょう。
投資信託には、長期投資運用と短期投資運用のどちらが向いているのか、投資信託の性質を含めて説明します。
一般的な投資の方法としては、長期投資と短期投資があります。
長期投資とは、数年〜数十年かけて資産をゆっくり増やす運用方法です。長期投資では以下の利益を狙って運用を行います。
・利子(債券などの資産を保有中に得られる定期的な収益)
・配当金(企業が業績に応じて株主に分配する利益)
・分配金(投資信託の運用成績に応じて投資家に還元される利益)
・株主優待(企業が株主に提供する特典)
長期投資はリスクが低い分、利益も少なくなりやすい(ローリスク・ローリターン)投資方法です。
一方、短期投資運用は、数分〜数カ月など短期間で取引を頻繁に行い、金融商品を売買したときの差額によって得られる「売買差益」による収益獲得を目指す運用方法です。価格変動を利用するため、大きな利益を狙える一方、リスクも大きくなります(ハイリスク・ハイリターン)。
投資信託は、長期投資が基本です。なぜなら、長期運用は「複利効果」を最大限に活かせる投資方法だからです。複利効果とは、運用で得た利益を再び投資することで、その利益にも新たな利益が加わり、資産が雪だるま式に増えていく効果のことです。
運用期間が長くなるほど、元本が大きく膨らんでいくため、利益の増加率も大きくなります。効率的に資産を増やしたいのであれば、複利効果を最大限に生かせる長期投資に取り組んだ方がよいでしょう。
株の取引であれば、リアルタイムで売買ができるので、価格が下がったタイミングで買い、値上がりしたタイミングで売るなどして、利益を狙うことができます。
しかし、投資信託で短期的に利益を得るのは難しいとされています。なぜなら、投資信託の取引では、売買の申し込みをした時点では基準価額がいくらになるかわからない「ブラインド方式」というものが採用されているからです。投資信託の基準価額は注文の締め切り後(通常15:00)、その当日もしくは翌営業日に決定するため、予想外の価格で注文が成立する可能性もあります。
投資を行う際に、どの程度の価格変動まで許容できるかを確認することが必要です。投資目的や年齢、経験、保有資産、収入によってリスク許容度は変わってくるでしょう。リスク許容度を明らかにすることによって、金融商品の選び方も変わってきます。
投資信託は、運用方法(インデックスファンド・アクティブファンド)、投資対象資産(株式型投資信託・債券型投資信託など)、投資対象地域(国内・海外)と、さまざまな切り口で分類できます。それぞれの分類ごとの特徴や違いを見ていきましょう。
投資信託の運用方法には「インデックスファンド」と「アクティブファンド」の2つがあります。インデックス運用をする投資信託を「インデックスファンド」、アクティブ運用をする投資信託を「アクティブファンド」と呼び、それぞれの違いは以下です。
インデックスファンドとは、日経平均株価(日本経済新聞社が選定した東京証券取引所プライム市場に上場している225銘柄から構成される平均株価指数)や東証株価指数(東京証券取引所に上場している企業の時価総額の増減を表す指数。TOPIXとも言います)、S&P500(えすぴーごひゃく。アメリカで上場している大型株500銘柄の時価総額を元に算出した株価指数)などの指数に連動するように作られた投資信託です。指数に沿った運用を目指すため、ニュースなどを見ながら値動きを追いやすいのが特徴です。また、銘柄の調査や分析の必要もありません。コストが抑えられる分、手数料も安くなります。
アクティブファンドとは、目安となる指数を上回る値動きを目指して、より大きな利益を狙う投資信託です。高い利益を目指す分、運用コストはインデックスファンドよりも高くなる傾向があります。ファンドマネージャーによって組み込む金融商品が異なり、類似した投資信託であっても運用成績が変わります。
投資信託は投資対象資産(投資による主な収益の源泉となる対象資産のこと)によって分類もできます。なかでも株式と債券(国や企業などが投資家からお金を借りるために発行する借用書のようなもの)を対象とした株式型投資信託と債券型投資信託は必ず理解しておきたいものです。それぞれの特徴や違いを見ていきましょう。
株式型投資信託は、株式を投資対象とした投資信託です。株式型投資信託を一口購入することで、さまざまな銘柄の株式に投資する効果を得られます。組み入れた株価に影響されるため、債券型投資信託に比べて値動きは大きい傾向にあり、多くの利益を狙える場合もあるでしょう。ただし、同時にリスクも高く、大きく損をする可能性があります。
債券型投資信託は、債券で構成される投資信託です。組み入れた債券の値動きに連動するため、比較的緩やかな値動きになる傾向があります。株式ほどの利益は望めませんが、その分、リスクも低く安定した運用成績を狙えるでしょう。
債券型投資信託は、国債・地方債・社債など、どのような債券に投資を行っているかでリスクや利益が変わります。社債は、国債や地方債に比べて利益が期待できますが、リスクも大きくなる傾向があります。
例えば、信用力が低い代わりに利回りの高い債券(ハイイールド債券)で構成されている投資信託などもあるので、商品選びには注意が必要です。
投資信託を選ぶ際に、組み入れる金融商品が国内か海外かによっても大きな違いがあります。それぞれ違いを見ていきましょう。
国内株式などを投資対象とする投資信託の場合、なじみのある企業が多く、投資判断もしやすい傾向があります。株価や会社の動向に関してニュースや新聞で情報を得られるため、値動きもつかみやすいでしょう。また、為替変動の影響を受けにくい点も安心です。
海外の金融商品を組み込む場合には、投資先の金融商品の値動きだけでなく、為替の変動も関係します。為替が円高になると、円換算したときに利益が目減りします。そのため、投資する国の動向を注意深く確認しなくてはなりません。
ただし、国内から海外の情報を収集することは難しい場合もあるでしょう。NYダウ平均株価(アメリカで上場している主要30銘柄の平均株価)やS&P500などの指数に連動する投資信託であれば、値動きがわかりやすく安心です。
投資信託を選ぶ際には「純資産総額」「運用成績」「コスト」の3つに注意する必要があります。以下でそれぞれ説明します。
純資産総額とは、投資信託の大きさです。投資信託の純資産総額が増加している場合は、人気があるか、運用成績が伸びています。一方、純資産総額が減り続けていると、効率的に運用できず、「繰り上げ償還」(信託期間の満了日前に運用が終了して償還されること)されてしまう可能性があります。純資産総額が大きいほうが、安定的な運用に期待できるでしょう。
また、投資信託の運用にかかる費用は純資産総額の大きさにかかわらず発生するため、純資産総額が大きくなるほど経費率(純資産総額に占める経費の割合)を低く抑えられます。その結果、信託報酬が引き下げられるケースもあります。
良い投資信託を選ぶために重要となるのが、運用成績です。運用成績は、一定期間に投資信託の基準価額がどれだけ上下したかを表す数値(騰落率:とうらくりつ)などにより確認します。騰落率などのデータは、運用会社のホームページで入手できる「月次レポート」や「銘柄詳細」で確認が可能です。
運用の指標となる日経平均株価などの指数が類似している投資信託と比べて、運用成績が良いか悪いかを判断しましょう。相場が不安定なときほど運用力が試されるので、直近のものだけではなく、3〜5年の成績を参考にしてください。
投資信託を選ぶ際には、必ずコストを確認しましょう。運用の期間が長くなるほどコストの影響が大きく、負担も増加します。分配金が高い場合でも、コストが高くなると実質的な利益が少なくなってしまうので注意が必要です。
投資信託にかかるコストには、以下の「販売手数料」「信託報酬」「信託財産留保額」「隠れコスト」の4種類があります。
<コスト1>
販売手数料は、投資信託を購入するときにかかる手数料です。現在、販売手数料のかからない投資信託(ノーロード投資信託)が人気を集めています。類似した投資信託を検討している場合は、コストを比較するといいでしょう。
<コスト2>
信託報酬とは、投資信託を運用する際にかかる費用を指します。投資家は投資信託を保有している期間、支払い続けなければなりません。信託報酬額は年率で定められていますが、日割換算した金額が毎日発生しています。保有している期間が長くなると負担が大きくなるため、運用方針や投資対象が似ている銘柄であれば、より低価格のものが望ましいでしょう。
<コスト3>
信託財産留保額は、投資信託を解約するときにかかる手数料です。解約時の投資信託の基準額に対して、一般的に0.2〜0.3%の手数料が解約代金から差し引かれます。
<コスト4>
隠れコストとは、事前に算出できない「売買委託手数料」「有価証券取引税」「その他の費用」などの事後経費のことを指し、目論見書(投資信託の募集や売出しをするときに投資家に提供する書類)には「総経費率」の形で表示されています。
海外の株式や不動産を投資対象としたものは隠れコストが高い場合が多いため、必ず確認しましょう。
投資信託は、少額から始められ、分散投資によってリスクを抑えることもできる金融商品です。そのため、初めて投資を行う方に適しているといえます。多くの確認事項がありますが、長期的に安定した収益を上げるためにも、商品選びは非常に重要です。本記事を参考にして、自分に適した投資信託を選んでください。