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株価チャートに表示される移動平均線の意味と見方をわかりやすく解説!

「株価チャート(過去から現在の株価を時系列でグラフに直したもの)の見方が難しい」と感じている投資初心者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。 株価チャートに表示されている移動平均線は、過去一定期間の平均価格をグラフ化させたものです。相場の方向性や転換点(方向性が変わるポイント)を調べる際に活用され、基本的なチャート分析法のひとつとされています。 たとえば、移動平均線のゴールデンクロスとデッドクロスという手法は、移動平均線2本の交差した方向や線の位置関係から相場の転換点を判断します。また、移動平均線を使いこなすためには、短期・中期・長期移動平均線の意味も理解しておく必要があります。 移動平均線を理解することで、株式投資の精度を上げることにも繋がります。本記事では、株価チャートに表示されている移動平均線の意味と見方、使い方について解説しますので、しっかり覚えて投資に活かしていきましょう。

移動平均線ってなに?

株価チャートに表示されている移動平均線は、株価の平均値を活用したグラフです。単体で用いることは少なく、株価チャートやほかの指標と合わせて活用するのが一般的といえます。

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まずは、移動平均線の意味と基本的な見方を確認していきましょう。


移動平均線は終値の平均値をグラフに直したもの

移動平均線は、各ローソク足(株価情報が1本にまとめられたものです)の終値(ある期間の株価情報のうち、最後に売買されたときの株価を指します)から平均値を割り出し、複数の平均値をグラフに直したものです。

主に株価の方向性や転換点を探る場合、移動平均線がよく活用されています。例えば、下落トレンド(トレンド=相場、上昇や下落・横ばいなど株価の状況や方向感を示したもの。下落トレンドは下落方向に株価が推移している状態)へ転換しているか調べたいときは、ローソク足が移動平均線を下回っているかどうかで判断できます。

移動平均線を活用する上で覚えておくべき基本のひとつが、ローソク足の時間軸です。ローソク足の時間軸を分足(ふんあし:1分ごとの株価情報を複数のローソク足にまとめたもの )や日足(ひあし:1日ごとの株価情報を複数のローソク足にまとめたもの)、週足(しゅうあし:1週間ごとの株価情報を複数のローソク足にまとめたもの)のどれにするかで、移動平均線の時間軸が変わり、表示されるグラフの形状やトレンド、転換点などにも違いが出てきます


移動平均線の計算方法と種類

移動平均線には種類があり、代表的なものとして単純移動平均線(SMA:Simple Moving Average)と指数平滑移動平均線(EMA:Exponential Moving Average)、加重移動平均線(WMA:Weighted Moving Average)に分かれています。 それぞれ計算式や特徴に違いがあるため、意味を理解した上で活用していきましょう

単純移動平均線は、ある一定期間(例:5日、25日、75日、200日など)における終値の平均値を算出し、グラフ化したものです。

例えば、5日移動平均線の場合は、以下の計算式で平均値を求めます。

(当日の終値+前日の終値+2日前の終値+3日前の終値+4日前の終値)÷5

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指数平滑移動平均線、加重移動平均線と比較して特徴は少ないものの、初心者の方にもわかりやすいシンプルな構造で、さまざまな分析に活用しやすいといえます。

指数平滑移動平均線は、直近終値を2回計算式に加えているのが大きな特徴です。例えば、5日移動平均線で計算する場合は、以下の計算式で平均値を求めます。

(当日の終値+当日の終値+前日の終値+2日前の終値+3日前の終値+4日前の終値)÷6

当日の終値を2回加える計算のため、直近の動きを反映したグラフを作り、かつトレンドの変化を早めに捉えやすいといったメリットがあります。ただし、ダマシ(誤ったトレンド転換や売買サイン)が発生しやすい側面もあるため、ほかの指標や移動平均線と組み合わせたり、慎重に分析したりすることが重要です。

加重移動平均線は、計算式に日数を段階的に加えていくのが特徴です。
例えば、5日移動平均線で計算する場合は、以下の計算式で平均値を求めます。

(当日の終値×5+前日の終値×4+2日前の終値×3+3日前の終値×2+4日前の終値×1)÷(5+4+3+2+1)

傾向として、指数平滑移動平均線と同じく直近の動きをより強く反映するため、単純移動平均線よりもトレンドの変化を早めに捉えられる可能性があります。ただし、激しい動きを見せる相場では機能しないケースがあり、なるべく動きの緩やかな場面で活用していくことが大切です。


基本的な使い方と見方

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移動平均線を活用する際は、まずグラフの向きに注目します。

具体的には以下のような傾向があります。
・移動平均線が上向きの場合は上昇トレンドの可能性
・移動平均線が下向きの場合は下降トレンドの可能性
・移動平均線に方向感がない場合は横ばい(レンジ相場)もしくはトレンド転換の可能性

たとえば、ローソク足と移動平均線が右肩上がりであれば、上昇トレンドとして判断できます。反対にローソク足と移動平均線が右肩下がりであれば、下落トレンドへ転換した可能性が出てきます。また、ローソク足と移動平均線のどちらも方向感のない状態であれば、横ばい傾向で推移(レンジ相場:相場が一定の範囲内で推移する状態)する可能性から、トレンドが転換する可能性もあると判断します

ほかにも、日足チャートで分析しながらトレード(株式投資における売買、取引のこと)を行うときは、日足を基準に計算された「○日移動平均線」を活用することが大切です。なぜなら、移動平均線が示すトレンドは、ローソク足の時間軸に左右されるからです。


移動平均線の短期や中期・長期ってなに?

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移動平均線は、主に3種類です。短期・中期・長期とは、移動平均線に用いられているローソク足の期間を指しています。厳密に期間が区分されているわけではなく、25日移動平均線を中期または短期として捉える場合もあり得ます。

短期~長期移動平均線を理解すればチャート分析の幅が広がるため、この機会に覚えてみましょう

続いては、移動平均線の短期・中期・長期の意味を解説していきます。


短期移動平均線

一般的に短期移動平均線は、1分や5分のほか、5日・10日・12日といった比較的短期間の日足を基準に作られた移動平均線を指しています。特に5日・10日移動平均線は、チャート分析でよく用いられている傾向です。

株価の動きに対して早めに反応するのが特徴で、直近のトレンドを把握したいときや短期間のトレードで役立ちます

例えば、スキャルピング(秒単位、分単位で売買を繰り返す手法)やデイトレード(1日で売買を完結させる手法)といった短期トレードは、短期移動平均線と相性がいいといえます。

ただし、ダマシが多く、注意も必要です。


中期移動平均線

中期移動平均線は、一般的に20日、25日、50日、70日といった期間の日足から平均値を割り出し、グラフにしたものを指します。

数日や数週間単位のトレンド・市場の方向感を読む際に活用されるのが、中期移動平均線の大きな特徴です。20日や75日移動平均線に、よく用いられます。

特に、スイングトレード(数日~数週間単位で売買を行う手法)で相場のトレンドや売買のタイミングを計る際は、短期より中期移動平均線のほうが使いやすい場合もあります。


長期移動平均線

長期移動平均線は、一般的に週足や月足といった長期の時間軸から平均値を割り出し、グラフ化したものです。100日や200日移動平均線に、よく用いられます。

スイングトレードのほか、月・年単位のスパンで売買を行う長期投資では、長期移動平均線によるトレンド分析も重要です。


移動平均線を使うとトレンドがわかる!

移動平均線を活用していく際は、ゴールデンクロスやデッドクロスといったパターン、ローソク足との位置関係についても押さえておく必要があります。

ここからは、移動平均線を活用しながらトレンドを見極めていく方法を確認していきましょう。


ゴールデンクロスとデッドクロス

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ゴールデンクロスとデッドクロスは、2本の移動平均線で作られる形状から売買のサインとトレンドの転換点を読む分析方法です。

計算期間の短い移動平均線(例:5日移動平均線)が長い移動平均線(例:25日移動平均線)の上を抜けてクロスする形状を、ゴールデンクロスと呼びます。

下降トレンドから上昇トレンドへ切り替わるポイントを示すパターンで、買いサインのひとつとして捉えることが可能です。

反対に、計算期間の長い移動平均線(例:25日移動平均線)が短い移動平均線(例:5日移動平均線)の下を抜けてクロスする形状を、デッドクロスと呼びます。上昇トレンドから下降トレンドへ切り替わる際に見られるパターンでもあるため、売りサインとして捉えられています。

株価が横ばい傾向で推移していたり、方向感に乏しかったりする場合は、両パターンが機能しないこともあるため注意しましょう。


ローソク足との位置関係

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移動平均線とローソク足の位置関係を見れば、トレンドを見極めることができます。

移動平均線がローソク足より下の位置にある場合は、サポートラインと呼ばれています。サポートラインは、過去の安値同士を結ぶ線です。

サポートラインが出ている場合は、上昇トレンド(右肩上がりの相場)の傾向として判断できます。移動平均線は過去の株価を反映したもので、現在の株価よりも下の位置であれば上昇傾向(右肩上がり)と分析できるためです。

反対に、移動平均線がローソク足より上の位置にある場合は、レジスタンスラインと呼ばれています。過去の高値同士を結ぶレジスタンスラインは、一般的に下降トレンドで見られる形です。

サポートラインとレジスタンスラインは、それぞれ上昇・下落トレンドの転換点としても機能することがあります。たとえば、株価がサポートラインを突き抜けると上昇から下降トレンドへの転換、レジスタンスラインを突き抜けると下降から上昇トレンドへの転換を示すケースがあり、注目すべきポイントのひとつです。


トレンドの転換サインと注意点

前述したゴールデンクロスやデッドクロス、サポートラインやレジスタンスラインは、必ずしもトレンドの転換を示すものではありません

理論通りの動きにならないダマシもあるため、それぞれの分析手法から見えた動きや結果を鵜呑みにせず、慎重に判断したり、ほかの指標を組み合わせたりすることも重要です。

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移動平均線を活用した手法にはなにがある?

移動平均線をより活用した手法には、グランビルの法則や移動平均かい離乖離率の活用、MACDとの併用などが挙げられます。

グランビルの法則とは移動平均線から売買ポイントを探る方法で、8つの法則から構成されています。移動平均かい離率は、株の買われすぎや売られすぎを数値化した指標です。MACDは移動平均線と別の指標で、売買タイミングを探る際に活用されます。以下で詳しく解説していきましょう。


グランビルの法則で売買ポイントを探る

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グランビルの法則は、移動平均線を生み出したチャート分析家のジョゼフ・E・グランビル氏が考案した手法です。移動平均線と株価チャートの位置関係には8つの法則が存在し、それぞれ売買ポイントを示しています

上記のイラストと照らし合わせながら、順番に説明していきます。

4つの買いポイント(1、2、3、4の上昇サイン)は、以下のとおりです。
1、移動平均線が一定期間下落したのち、横ばい状態もしくは少し上昇し、なおかつ株価チャートが移動平均線を上に突き抜けたとき
2、移動平均線が上昇している場面で、株価チャートが移動平均線を下に抜けるとき
3、移動平均線が上昇している場面で株価のほうがより大きく上昇し、移動平均線とかい離している状態で株価が下落したのちに移動平均線のライン上付近で再び上昇し始めたとき
4、株価が下落傾向で、移動平均線より大きくかい離しながら下落したとき

4はほかのパターンと異なり、下落傾向での買いポイントです。移動平均線を大きくかい離しながら下落すると、その後、大きな反発=上昇が起きるケースがあるため、下落相場でのかい離は買いポイントとして扱われています。

続いて、4つの売りポイント(5、6、7、8の下落サイン)は、以下のとおりです。
5、移動平均線が一定期間下落したのち、横ばい状態もしくは少し下落し、なおかつ株価チャートが移動平均線を下に突き抜けたとき
6、下落トレンドの状況で株価が移動平均線を突き抜けたとき
7、株価が大幅に下落し、移動平均線からかい離、そのあと一旦株価は上昇するものの移動平均線を超えずに再び下落し始めたとき
8、株価が上昇傾向で、かつ移動平均線の上にある状態、この場面で移動平均線より上昇方向で大きくかい離したとき

売りポイントの形状や流れは買いポイントと異なる部分もあるため、混同しないよう注意が必要です。


MACDとの併用

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MACD(Moving Average Convergence Divergence:マックディー)はテクニカル指標(チャートの形状から株価や相場を分析、予測するツール)のひとつで、MACDラインとシグナルラインという2種類のグラフが用いられています。

MACDラインがシグナルラインの上に抜けた場合(ゴールデンクロス)は上昇トレンドへの転換・買いポイント、MACDラインがシグナルラインの下を抜けた場合(デッドクロス)は下落トレンドへの転換・売りポイントと判断します。

移動平均線よりも買い・売りのサインが早めに出現する点が、MACDの強みです。ただし、ダマシが多い指標でもあるため、単体での活用に注意しなければなりません。

そこで取り入れたいのが、移動平均線とMACDの併用です。

移動平均線はMACDよりダマシが少ない傾向なので、併用することによってそれぞれの強みを活かしつつ、ダマシを避けられる可能性もあります

使い方はシンプルで、MACDのゴールデンクロス(上昇サイン)と上昇傾向の移動平均線が同時に出ていれば、買いポイントとしてチャートを注視または売買ポイントを判断します。反対に、MACDのデッドクロス(下降サイン)と下落傾向の移動平均線が同時に出ていれば、売りポイントとして捉えながら状況を見ましょう。


移動平均かい離率で買われすぎ・売られすぎを判断

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移動平均かい離率とは、移動平均線が株価に対してどれだけ離れた位置にあるか(かい離しているか)を数値・グラフ化したものを指します。

株の売られすぎや買われすぎを分析できるのが、大きな特徴です。株の売られすぎは上昇トレンドへの転換、買われすぎは下落トレンドへの転換を示しています。

つまり、移動平均かい離率を活用すれば、売買ポイントや転換点を見つけることが可能です。

売買ポイントを探る際は、移動平均かい離率のグラフ内に記載されている縦軸と横軸の意味をそれぞれ把握しておきましょう。縦軸には「-15」や「0」「+15」といった数値、横軸には時間軸が示されています。

例えば、縦軸の天井付近までグラフが上昇している場合は、株の買われすぎ=下落トレンドへの転換や売りポイントを示している状態です。株を保有している場合、売りのタイミングを探る状況といえます。

反対に、縦軸の底付近までグラフが下落している場合は、株の売られすぎ=上昇トレンドへの転換や買いポイントを示している状態です。

具体的に、どこまでグラフが上昇・下落すれば買い・売りポイントなのかは、分析する人の感覚や相場の状況によって変わります。そのため、実際に経験しながらポイントを覚えていく必要があるのです。


移動平均線を活用しながらトレンドやサインを判断しよう!

移動平均線は、ある期間の終値から平均を割り出し、グラフ化したものです。グラフの向きや流れを見れば、相場が上昇か下落かを判断できます。また、移動平均線を2本組み合わせることで、トレンドの転換点を見極められる場合もあります。

投資をこれから始める方やチャート分析について勉強し始めた方は、株価チャートと移動平均線の位置関係やグラフを活用したトレンド分析などを行いながら、ご自身に合う方法を選んでみましょう

  • プロフィール

    菊地 祥(きくち しょう)のプロフィール画像

    菊地 祥(きくち しょう)

    FP3級技能士、フリーライター

    個人事業主としてWebライター・Webディレクター・Webデザイン業務を行う。 Webライターとしては、クレジットカードの比較解説や保険の解説、株式投資や投資信託の経験を活かした投資関連の記事執筆なども行う。 投資初心者の方に向けたやさしい解説を心がけている。

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