プロフィール

総合保険代理店で個人を対象とした家計相談やライフプランニングを約10年経験。2021年以降は金融専門ライターとして複数メディアで活動しており、大手証券会社・保険会社や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。 暗号資産や投資信託、国内株式などによる資産運用も積極的に行っている。
資産運用をしていると「投資」や「投機」という言葉を見聞きすることがあるかと思います。しかし、実際にどのようなものなのか、わからない方もいるでしょう。本記事では、投資と投機の違いや、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。初心者の方にはどちらがおすすめなのかも説明しますので、ぜひ参考にしてください。
まずは「投資」と「投機」の違いを見ていきます。それぞれの違いを知らなくても、資産運用は始められます。しかし、お金に関する基礎知識は今後の資産運用にも役立つものですので、身に付けておきましょう。
投資とは、将来的に利益が出ると予測し、企業の成長や経済の発展に期待して 長期的な目線で出資することです。代表的な投資先としては、株式、債券、投資信託などがあります。投資で得られる利益は、主に以下の2つです。
・金融商品の売買によって得られる利益(キャピタルゲイン)
・株式の配当金や投資信託の分配金などの利益(インカムゲイン)
配当金や分配金とは、利益の一部を投資家に還元する際に支払われるもので「株式」を持っていれば配当金、「投資信託」を持っていれば分配金を得られます。購入した金融商品を保有している間は配当金や分配金を定期的に受け取れるため、短期間に売買を繰り返すよりも、安定して利益を積み重ねられる傾向にあります。そのため、長期間保有する投資は初心者におすすめの資産運用といえるでしょう 。ただし、配当金や分配金は必ずもらえるとは限らないため、投資する前の事前確認は必須です。
投機とは、相場の変動を利用し、短期間で売買を繰り返して利益を狙う手法のことです。中長期的な目線で運用する投資とは異なり、投機は短期での利益確保を目指します。
投機には、以下のような取引があります。
・先物取引:金融商品の売買金額、取引する期日をあらかじめ決めておく取引
・FX(外国為替証拠金取引):異なる通貨の売買により差額を利用して利益を得る取引
先物取引は金融商品の売買金額や取引期日を事前に決めておくため、市場価格の影響を受けずに安定した取引ができます。FXは特定の2種類の通貨を対象に「安くなったら買う」「高くなったら売る」を繰り返して通貨間の差額が利益となります。
このように、投機は取引対象の価格差が利益となるため、取引するタイミングが重要です。
投機は、短期間で大きな成果を得られる可能性があります。しかし、かえって損失が大きくなる危険もはらんでいるため、ある程度の経験や知識が必要です。
投資と投機の違いに、明確な線引きはありませんが、大きく異なるのが「取引期間」です。投資は長期的な運用で利益を目指し、投機は短期的な取引で利益を目指します。
また、リスクの高さも異なる点です。一般的に、投資はリスクが低く、投機はリスクが高い傾向にあるため、初心者の方は投資から始めてみるといいでしょう。

投資には、以下のようなメリットがあります。
・複利の効果が得られる
・少額からコツコツ資産運用できる
・分散投資でリスクを軽減できる
特に長期運用が基本の投資は、複利でさらに資産を増やせるのがポイントです。
投資のメリットは、利子を元本に再投資して、その合計金額からさらに利益を得る「複利」の力を生かせる点です。
複利の効果は、利子が元金に加算され、その合計金額に対してさらに利子がつく仕組みです。例えば、元金が100万円で年利3%の場合、1年後には103万円になります。翌年にはその103万円に対し3%の利子がつくため、106万900円となります。このように、長期で運用するほどお金が増えるスピードが早くなっていきます。
そのため、なるべく若いうちに運用を始めたほうが複利効果の恩恵を受けやすくなるでしょう。
ちなみに、得た利子を元本に再投資せずに受け取り、当初の元本のまま運用していく手段を「単利」と呼びます。単利は元本が変わらないため、長期運用しても得られる利子は変わらず一定のままです。
投資には、まとまった金額が必要だと思う方もいるかもしれませんが、1,000円程の少額から購入できる商品も少なくありません。
金融サービスによっては、100円から積み立てできる投資信託や、貯まったポイントを投資にあてられるものもあります。
投資のリスクを軽減させる方法のひとつに「分散投資」があります。分散投資とは、投資先を1つに絞らず、株式や債券、投資信託といったさまざまな金融商品を購入して分散させることです。
投資先を分散させておけば、どれか1つの価値が下がってしまったとしても、他の商品の値上がり分で損失をカバーし、ダメージを最小限に抑えられる可能性があります。一方、単一の商品のみに投資して価格が急落した場合、そのまま損失につながってしまいます。
「どんな商品を選べばいいかわからない」という方は、資産運用のプロが選別し、複数の投資先が入っている投資信託を選ぶといいでしょう。

投資には、以下のようなデメリットがあります。
・利益を上げるまでに時間がかかる
・小見出し長期的な予測が難しい
投資は、成果を上げるまでに時間がかかります。自分の投資スタイルに適しているか、デメリットについても知っておきましょう。
投資は長期的な運用によって利益を得る手段のため、まとまった成果を上げるには時間が必要です。例えば、株式の場合、投資で得られる利益は企業の業績によって決まります。
一般的に、企業は長い時間をかけて成長していくため、短期間で大きな見返りを期待するのは難しいこともあるでしょう。また、メリットでも解説したように、複利の効果は長期的な運用で得られることから、コツコツ長い目線で運用する必要があります。
投資は数年または数十年という期間を要するものであり、将来いくら利益を得られるのか予測を立てることは簡単ではありません。投資先の価値は、政治や世界情勢など、さまざまな要因によって大きく変動します。
例えば、2008年のリーマン・ショックが発端となった金融危機や、2020年の新型コロナウイルスの流行などは世界規模で影響を与えましたが、誰もこのような事態が起こるとは予測できなかったでしょう。
投資したタイミングでは利益が見込めると思っていても、将来的には想定通りにならない可能性もあるのが、投資の難しいところです。

続いて、投機のメリットを見てみましょう。
・短期間で大きな利益が狙える
・取引スタイルを柔軟に変更できる
投機は投資と比べて、短期間で大きな成果を狙えるのが魅力といえます。
投機の取引期間は数時間や数日、長くても数週間です。投資先の値動きが予想した通りになれば、長期的に資産を運用してコツコツとお金を増やしていく投資と比較して、短期間で大きな利益を得られる可能性があります。
株式投資とFX取引を例に説明しましょう。例えば、株式投資で100万円の元金を年利3%で運用した場合、1年後には103万円になります。一方、FXで100万円の元金を運用する場合、米ドルが100円の時に10,000ドル買い、米ドルが100.1円になった時点で売れば1,000円の利益となります。このような取引を毎日10回、3日間繰り返せば利益は30,000円となります。
さらに、FXでは資金を担保にして高い倍率で取引できる仕組み(レバレッジ取引と呼ばれる)を利用すれば、レバレッジ10倍で100,000ドルを購入し、米ドルが100.1円になった時点で売れば一度の取引で10,000円の利益となります。これを3回繰り返すだけで、株式投資の1年分の利益を稼げるわけです。
しかし、値動き(相場の変動)の傾向やパターンを分析するには経験や知識 が不可欠ですし、必ず値動きを当てられるということはありません。
投機は短期間で取引を行うため、市場の状況に応じた選択を取ることが可能です。取引量の多い市場であれば比較的容易に売買が成立するため、経済指標や各国の金利政策の動向など様々な短期的変動要因をもとに、その瞬間において投機判断が下せます。
また、株式やFX、先物取引といった様々な金融商品があるため、自身の得意な市場や商品を選ぶなど、多様な選択肢を選ぶことができます。

投機のデメリットもチェックしておきましょう。
・損失が大きくなる可能性がある
・取引回数が多いためコストが高い
・常に価格変動に気を配るため精神的負担が大きい
投機で成果を上げるためにも、取り組む前にリスクについて理解しておいてください。
投機は短期間で利益を得られる可能性がある一方、大きな損失になる危険もあります。特に「レバレッジ取引(自己資金よりも大きな金額での取引)」をした場合は、損失が膨らむ可能性があります。
例えば、レバレッジ倍率が10倍だった場合、100万円の資金であれば1,000万円分の取引ができます。レバレッジ取引は少ない資金で大きな利益を得られることもありますが、場合によっては損失が膨らむ可能性もあることを覚えておきましょう。
投機は、短期間で頻繁に取引を行います。売買のたびに手数料がかかり、投資に比べてコストが高くなる傾向にあります。
例えば、円やドルなど異なる通貨同士の買値と売値の差額によって利益を得る「FX(外国為替証拠金取引)」では、数秒や数分単位で売買を繰り返すこともあります。
短期間で利益を積み重ねられるケースもある一方、FX取引ではスプレッド(買値と売値の差)が手数料としてかかるため、取引回数が多いほどコストが増えてしまいます。取引回数に見合った利益が得られなかった場合は、コストが上回る点は注意しなければいけません。取引手数料は金融サービスによって異なるので、事前に確認しておきましょう。
投機は、市場動向に絶えず気を配らなければなりません。価格の上下に一喜一憂し、精神的負担が大きくなる可能性も考えられます。市場は常に変化しているため、迅速な判断が必要です。数分の判断の遅れが損失につながる場合もあります。
また、保有している金融資産の価値が下がると、冷静な判断ができないこともあるでしょう。たとえ小さなストレスだったとしても、積み重なると精神的なダメージが大きくなってしまいます。

これまでの内容を踏まえ、これから資産運用を始める初心者の方におすすめなのは「投資」といえます。
投資は分散投資でリスクを軽減し、複利効果を活用しながら建設的な資産運用ができるからです。また、投資で長期的に資産運用する場合、毎月指定した金額を定期的に買い付ける「つみたて投資」を利用することもできます。
一度設定しておけば自動で買い付けてくれるので、放っておいても運用できる点が魅力です。
また、これから資産運用を考えている方は、「NISA」や「iDeCo」も併せて利用しましょう。通常、投資で得た利益は課税対象となり、税金を支払わなければなりません。
しかし、NISAやiDeCoを利用すれば投資で得た利益が非課税となるため、効果的に資産運用できます。初心者の方はこのような非課税制度を利用しつつ、リスクが抑えられる投資を選ぶのがおすすめです。
投資と投機の大きな違いは、取引期間の長さです。短期間で大きな成果を出したいか、長期間でコツコツと実績を積み上げていきたいか、資産運用のスタイルによっても選択は変わるでしょう。
ただし、投資初心者で資産運用を検討している方は、はじめのうちはリスクを抑えた運用方法が望ましいです。投資は利益を得るまでに時間がかかりますが、少額から始められ、金融商品を保有しているだけで複利の効果が得られます。「投機」よりもリスクの少ない「投資」から始めてみて、慣れてきてから投機を検討してみるといいでしょう。
投資についてもっと知りたい方は、以下の記事をチェックしてみましょう。
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