シェア

株主優待とは? 優待制度の仕組みや種類、銘柄選びのポイントまでわかりやすく解説

特定の企業の株を一定数以上保有することで、企業製品の詰め合わせやサービス券などの特典がもらえる「株主優待」をご存じでしょうか。聞いたことがある方や、興味を持っている方も多いかと思いますが、どのような制度なのか、具体的にはわからないという方もいるでしょう。本記事では、投資初心者の方に向けて、株主優待の仕組みや基礎知識をわかりやすく解説します。また、株主優待のメリットやリスクにも触れ、より深く理解できる内容にしています。

株を持っているともらえる? 株主優待の基礎を解説

株式会社のなかには、株主への還元策として年に1〜2回、商品やサービスの提供を実施している企業があります。この還元策は「株主優待」と呼ばれ、日本では上場企業の約4割が導入している制度です。
株主優待実施企業の割合

株主優待とは? 配当金とは何が違うの?

株主優待は、配当金とは異なる形で株主に還元される制度です。多くの企業が、さまざまな独自の特典を提供しています。配当金や売買益との違いや、株主優待の具体的な内容について、以下で詳しく解説します。

1.配当金や売買益とは別に受け取れる
「株主優待」と「配当金」は、どちらも株主に対する企業からの還元策ですが、性質が異なります。配当金は企業が利益を株主に分配するもので、売買益(株価が上昇した際に株式を売却することで得られる利益)と同様に現金で受け取ります。一方、株主優待は株主に対する謝礼として提供される現物の商品やサービスを指し、これらとは別に受け取ることができます。

2.株主優待限定の商品が手に入る
多くの企業が株主優待として自社や提携先の商品またはサービスなどの特典を提供していますが、なかには株主優待でしか手に入らない特別な商品やサービスもあります。このような限定品は、株主だけが享受できる特権として、特別感や希少価値を感じさせるものでしょう。

3.長期保有で新たな特典が得られる場合も
一部の企業では、株を長期にわたって保有し続ける株主に対して、優待内容を追加する場合があります。これにより、株主は株を長期保有するメリットを感じやすくなる一方で、企業にとっては安定した株主の確保につながるというメリットがあります。

株主優待の仕組み

1.権利確定日に一定数の株を保有することで権利が発生
株主優待を受け取るためには、企業が定めた「権利確定日」に、その企業の株式を一定数以上保有していることが必要です。権利確定日とは、株主としての権利が確定する日を指します。この日を基準に株主としての権利が確定し、株主優待の対象となります。
 
2.単元株数と株主優待の関係
単元株数とは株式の購入に必要な最低株数のことで、2018年10月1日に株式の売買単位が1単元100株に統一されました。しかし、優待を受けるための条件は、必ずしも単元株数と同じではありません。企業によって異なるため、優待を受けられる単元数に注意が必要です。通常「100株以上」としている企業が多いですが、なかには「500株以上」や「1,000株以上」を条件にしている企業もあります。確実に優待を受けるために、必要な単元数は必ず確認しましょう。

3.権利確定日は企業ごとに異なる
権利確定日に、企業は株を保有している株主に対して配当金や株主優待などの権利を付与します。権利確定日は企業ごとに異なり、多くの企業では3月末や9月末に設定されていますが、それ以外の時期に設定している企業もあるため確認が必要です。

株主と優待の関係

企業は、なぜ株主優待を実施するのでしょうか?その主な理由は、個人投資家を増やしたいからです。株主優待には一定の手間やコストが伴いますが、それを考慮しても、個人投資家が増えることは企業にとって大きな利点があります。

株主と会社の関係

個人投資家が増えると、企業の業績に左右されず、長期で株式を保有してくれる株主(安定株主)を獲得できます。外国人投資家や機関投資家(法人の大口投資家)と比べて、個人投資家は長期にわたって株式を保有する傾向があるからです。安定株主を確保することは株価の安定にもつながりやすく、企業にとって敵対的買収に対する防御力を強化する効果もあるといえるでしょう。

敵対的買収とは、買収対象となる企業の同意を得ずに、企業の支配権を取得しようとする買収行為を指す言葉で、通常、株式市場を通じて大量の株式を購入することで行われます。

また、株主優待は企業のファンを増やすための手段としても用いられます。優待を通じて自社の商品やサービスを体験してもらうことで、企業への愛着を深め、優良顧客になってもらえる可能性が高まります。

株主優待の種類を3つに分けて解説

株主優待は、大きく以下の3つに分けられます。順に紹介していきましょう。

1.自社(またはグループ会社)の製品

自社製品を優待として取り扱う企業の優待銘柄は人気が高く、企業の株主である実感も湧きやすいでしょう。食料品や日用品の詰め合わせといった優待が代表的です。

・食品会社、飲料会社、乳業会社など:食料品ギフトセット
・日用品会社、化粧品会社、医療品会社など:日用品ギフトセット

その他、グループ会社で使える食事券やプリペイドカード、写真撮影権、コンサートチケットの優先予約制度など、企業の強みを生かした優待が提供されています。

2.自社(またはグループ会社)サービス利用の割引券

自社サービスを直接体験できるチケットや、割引券がもらえる優待も人気です。運賃や買い物、食事など、そのサービスをよく利用している株主にとってはお得な特典となり、企業の売上向上にも貢献できます。

・鉄道、航空会社など:運賃の割引特典
・デパート、家電販売、衣料品販売会社など:商品券や割引券
・レストランチェーンなど:割引クーポン
・不動産関連、ホテルなど:割引券
・エンターテインメント関連企業など:サービス無料クーポン
・地方銀行など:銀行の金利上乗せ

その他、買い物金額からキャッシュバックされる還元特典カードの発行や、レンタカーの利用割引などがあります。

3.自社と直接関係がない汎用的な特典やサービス

自社製品やサービスと直接関係しない金券類は換金性、汎用性が高く、人気の優待品です。その他、企業の本社がある地域の特産品を優待としているところもあります。

・金券類:カタログギフト、QUOカード、図書カード、おこめ券、JCBギフトカード、マックカードなど
・地元特産品:地方の企業や銀行などで取り扱っている場合が多い

上記で取り上げたもの以外にも、株主優待として優待品を受け取る代わりに特定団体への「寄付」を選択できる企業もあります。株主は優待を通じて社会貢献に直接関与することができるため、企業の応援を兼ねた支援が可能です。

株主優待のトレンドを知ろう

投資家にとって魅力的な株主優待ですが、株主優待を新設する企業もあれば廃止する企業もあり、企業の対応に変化が見られます。その背景にある要因を、詳しく見ていきましょう。

廃止と新設の動向

株主優待を廃止する企業が増加傾向にある一方で、新設する企業も増えています。こうした企業の対応には、いくつかの要因が共通して見られます。

株主優待の新設と廃止の割合の画像

株主優待を廃止する企業が増えている背景には、海外投資家の増加が挙げられます。株主優待は内容によって使用できる地域が限定されることが多く、特典を利用しにくい海外投資家にとっては、メリットを感じにくいという課題があります。

また、株主優待の実施や維持には、物品の制作や配送のための人件費や費用が発生します。管理コストの合理性を利害関係者に対して説明するのが難しいということもあり、株主優待を無くすことで株主間の公平を図ろうとする動きが強まってきているのです。

さらに、2022年4月に東京証券取引所が「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3区分に再編されました。上場を維持するための株主数の要件が緩和され、企業が株主数を増やす必要性が低下したことも、企業が株主優待の廃止を選択する追い風になったといえるでしょう。

一方で、株主優待を新設する企業も依然として存在します。
海外投資家の増加などの影響に伴い、企業経営に透明性や効率化が一層求められるようになりました。その結果として、企業同士が互いに株式を保有し合う「株式の持ち合い」が減少しつつあります。この「株式の持ち合い」の減少を背景に、企業は新たな安定株主確保の手段として個人投資家に注目するようになっていると考えられます。

加えて、NISAの導入により、個人投資家が増加していることも、企業が新たに株主優待を導入する理由の一つになっているといえるでしょう。株主優待は投資を始めたばかりの個人投資家にも理解しやすく、魅力的に映ることが多い制度だからです。

株主優待は、個人株主を増やしたい企業と、配当金や売買益以外の価値を投資に見いだそうとする個人投資家の双方にとって、相互に利益をもたらす関係を築くことができる制度といえるでしょう。

株主優待で銘柄を選ぶ際のポイントと注意点

続いて、優待銘柄を選ぶときのポイントについて解説していきましょう。

優待内容の充実度を調べる

まずは、優待内容をチェックします。チェックする際は、以下のような情報源を活用しましょう。

・企業の公式サイト:企業が株主や投資家に対して情報を提供するためのIR情報のページなど
・株式投資の情報誌:会社四季報など
・株主優待の専門サイト:優待情報に特化したサイト

優待内容を確認するポイントは、次のとおりです。

・何がもらえるのか:具体的な商品やサービスの内容
・何単元もしくは何株が必要か:優待を受けるために必要な株数や単元数
・優待利回りはどのくらいか:投資額に対してどれだけお得な優待がもらえるか

優待利回りとは、株主優待がどれだけお得なものであるかを測るための指標です。優待利回りが高いほど、お得な銘柄といえます。

<優待利回りの計算方法>
優待利回り(%)= 株主優待の年間価値(現金換算)÷ 株主優待をもらうために必要な投資金額x100

たとえば100株保有で6,000円分の商品券を株主優待で受け取れる銘柄があるとしましょう。株価を1株=3,000円とした場合、優待利回りは、6,000円÷(3,000円x100)=2%です。

株価の動向や財務状況のチェックを忘れずに

株主優待だけに注目するのではなく、銘柄を選ぶ際は株価の動向や配当金にも目を向けましょう。いくら株主優待が魅力的だったとしても、値下がりし続けている銘柄や、財務状況が悪く成長に期待が持てない銘柄を選ぶと、売買で利益を出しにくく、損失を出すこともあります。結果的に株主優待のメリットが薄れてしまうこともあるでしょう。株主優待だけではなく、さまざまな事項を総合的に考慮して、銘柄を選ぶことをおすすめします。

株主優待の受け方と注意点とは

株主優待を受けるための具体的な流れと、注意点を解説します。

株主優待の受け方

前述したように、株主優待を受けるには権利確定日までに株式を保有する必要があります。具体的な流れは、次のとおりです。

1.証券口座の開設:証券会社で口座を開設します。
2.株式の購入:株主優待を実施している企業の株式を、権利付き最終日(権利確定日を含む3営業日前。土日や祝日は営業日にカウントしない)までに購入します。
3.権利確定日まで保有:株式を権利確定日まで保有します。
4.権利確定日:この日に株主として認められ、株主名簿に記載されます。
5.株主優待の受取:後日、株主優待が手元に届きます。

該当金をもらうにはいつまでに株を買えばいい?の画像

株主優待を受ける際の注意点

株主優待を受ける際には、いくつか注意するポイントがあります。まず、優待銘柄は権利付き最終日を基準として高値で推移する傾向があります。これは、優待や配当の権利を得るために株を購入する投資家が一定数いることを表します。しかし、権利確定後に株が売られて株価が急落するケースもあるため、注意が必要です。また、権利確定後に多くの投資家が一斉に株を売却しようとすると、売り注文が殺到して株価が下がり、希望する価格で売れなくなる「流動性の問題」も生じます。

こうしたリスクを避けるために、あえて権利確定後に株価が下がったタイミングで購入し、次回の権利確定に備えるのも選択のひとつです。短期的な株価の変動を利用して比較的割安な価格で株を購入し、次回の権利確定日まで保有することで、優待を受けられます。

さらに、長期保有戦略も有効です。株価が一時的に下がったとしても、企業の長期的な成長を見込み、株主優待や配当を受け取りながら株を長期間保有することで、安定したリターンを狙うことができます。短期的な株価の変動に惑わされず、企業や株価の成長を見据えた姿勢も必要といえるでしょう。

権利が確定してから優待が発行されるまでには、比較的長い期間がかかることがあるため、発行時期を各企業のIR情報で確認しておくことをおすすめします。

最後に、株主優待で受け取った商品やサービスは「優待」という名目でも、原則「雑所得」として課税対象になる点にも注意が必要です。優待を受ける際は、税務上の扱いも考慮しておくといいでしょう。

株主優待制度を活用して投資を始めよう

株主優待制度は、株式を購入することで、企業から消費やサービスを受け取る楽しみがあります。制度を最大限に活用するためには、優待の内容だけに目を向けるのではなく、企業の財務状況や株価の動向も考慮し、過度なリスクを減らすことが大切です。優待の内容や利用条件をしっかり確認し、自分にとって価値のある銘柄を選んで賢く投資を始めましょう。

投資についてもっと知りたい方は、以下の記事をチェックしてみましょう。
株価分析の基本:ファンダメンタルズ分析
企業の業績情報読み解き
企業の決算と配当情報
この企業の優待を受けたい:投資金額、権利確定日について
チャートを見てみよう:移動平均線の見方
チャートを見てみよう:ローソク足の見方

  • プロフィール

    荒木和音(監修者)のプロフィール画像

    荒木和音(監修者)

    2級ファイナンシャル・プランニング技能士

    総合保険代理店で個人を対象とした家計相談やライフプランニングを約10年経験。2021年以降は金融専門ライターとして複数メディアで活動しており、大手証券会社・保険会社や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。 暗号資産や投資信託、国内株式などによる資産運用も積極的に行っている。

    NISAにおすすめの証券会社ランキング

    更新

    証券会社ランキングをもっと見る

    注意事項

    © LY Corporation