プロフィール

明治大学卒業。金融ソフトウェア開発、国内生命保険会社の法人営業を経て、独立系FPとして開業。個人や法人オーナーへのコンサル業務、企業型確定拠出年金の導入支援の他、金融ライターとしても活動中。 保有資格:CFP®・DCアドバイザー・証券外務員二種
投資で得た利益にかかる税金について、非課税制度や節税方法が気になる方は多いでしょう。適切な税金対策を身に付けることで、より効率的な資産形成が期待できます。本記事では、投資の利益にかかる税金の種類や計算方法をはじめ、NISAやiDeCoなどの非課税制度、損益通算や繰越控除といった節税方法を詳しく解説します。
投資で得た利益には所得税と住民税がかかり、納税方法は投資対象(株、投資信託など)や利益の種類によってさまざまです。投資の利益は、主に以下のような種類があります。それぞれの特徴と税金の仕組みについて、以下で詳しく見ていきましょう。
株式や投資信託などの上場株式等で得られる利益の種類には「配当金」(企業の株を購入した株主に分配される利益)や「分配金」(投資信託を購入した投資家に分配される運用益の一部)があります。
これらの利益には、税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の「源泉分離課税」が適用されます。
源泉分離課税とは、配当金や分配金を受け取る際、金融機関が自動的に税金を差し引く仕組みです。差し引かれた税金は金融機関が納めてくれるため、原則として確定申告は不要です。
しかし、以下のように確定申告をして、源泉徴収された配当金や分配金の税金を計算し直す方法も選べます。
配当控除とは、配当金や分配金を受け取った場合(配当所得)に、総合課税で確定申告すると適用される税額控除(計算された税額から一定の金額を差し引くこと)を指します。総合課税とは、給与所得や事業所得など、他の所得との合計から税額を計算する方式です。一方、申告分離課税はほかの所得と合計せずに、単独で税額を計算します。
配当控除を受ける場合は、総合課税を選択します。総合課税はほかの所得との合算で税率が決まるため、配当控除が得かどうかは、本人の収入などによって決まります。配当所得は、同じ年に発生した株などを売って損をした場合の損失(譲渡損)と損益通算できます。
損益通算とは、一定期間内の利益から損失を差し引いて、課税される所得を減らせる仕組みです。また、損益通算しても控除しきれない損失は、翌年以降3年間繰り越して控除できます。損益通算と繰越控除については、以降の章で詳しく解説します。
なお、投資信託の分配金には運用収益から支払われる「普通分配金」と、投資元本の一部が払い戻される「元本払戻金」があります。元本払戻金は特別分配金とも呼ばれ、利益ではないため課税されません。

株式や投資信託を売却して得た利益を「譲渡益」といい、給与所得などほかの所得とは別に計算される申告分離課税の対象となります。税率は配当金や分配金と同様、20.315%です。例えば、100万円の譲渡益があった場合、所得税・住民税は約20万3,150円です。
上場株式等の譲渡所得は、売却価額から取得費用(購入費用と購入時の手数料)と売却時の手数料を差し引いて求めます。
株式や投資信託を売るときには、損をするケースも考えられます。譲渡益と反対に譲渡損が発生した場合、同じ年に得た上場株式等の譲渡益や配当所得との損益通算が可能です。
FX(外国為替証拠金取引)で得られる利益は「先物取引に係る雑所得等」として扱われ、申告分離課税の対象となります。税率は20.315%です。
FXの利益には、以下の2種類があります。
・為替差益:為替レートの変動による利益
・スワップポイント: 異なる通貨間の金利差から生じる利益
FXで課税対象となる利益は、為替差益とスワップポイントを合算し、必要経費を差し引いた金額です。
FXで損失が出た場合、その損失をほかのFXや、ほかの先物取引に係る雑所得等に分類される利益と損益通算できます。損益通算しきれなかった損失は、3年間の繰越控除が可能です。
続いて、投資の利益の計算方法を見ていきましょう。投資の利益の計算方法は、投資対象や利益の種類によって異なります。株式の配当金や投資信託の分配金は、受け取った金額そのものに税率がかかる仕組みです。
その他の利益は、以下のような計算式で求めます。
株式・投資信託にかかる税金=(株式・投資信託の売却価額-(購入費用+売却にかかった費用))×20.315%
例えば、1株1,000円の株を100株買い付け(購入費用10万円)、1株1,200円(売却価額12万円)で売却し、売買にかかる手数料の合計が5,000円だったとします。
この場合、売却益にかかる税金は「12万円-(10万円+5,000円)×20.315%=3,047円」です。
FXの利益にかかる税金=(為替差益+スワップポイント -必要経費)×20.315%
必要経費とは、FXを行ううえで直接要した費用を指します。費用項目についての明確な規定はありませんが、FXとの関連性がないものは認められません。一般的には以下のような費用が該当します。
・PC購入費
・通信費
・新聞・図書費
・セミナー受講費
FXの利益の計算で必要経費を差し引く場合は、領収書のような証明書類が必要となります。
投資の利益の税金対策が重要な理由は、主に以下の3つです。
・投資の利益の最大化
・効率的な資産形成
・個人の状況に応じた対策の必要性
適切な税金対策を行うことで、投資で得た利益から支払う税金を減らし、手元に残るお金を増やせます。 また、長期的な資産形成においても、税金対策は重要です。節税によって投資に回せるお金を増やし、効率的な資産形成を期待できます。
さらに、投資の利益により所得が増えると、所得税の税率が上がったり、社会保険料の負担が増えたりする可能性があります。個人の状況に応じて適切に対応すると、こうした影響を最小限に抑えられるのです。
次に、投資にかかる税金を抑えるための具体的な方法を2つ紹介します。
投資にかかる税金を抑える方法として「NISA(少額投資非課税制度)」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」があります。
以下の表で、NISAとiDeCoの主な特徴を比較しました。
NISAは、株式や投資信託などに投資した場合、年間360万円を上限に利益が非課税となる制度です。投資した年から無期限で非課税のメリットを得られます。
一方、iDeCoは私的年金制度のひとつで、掛金の全額が所得控除となる点が大きな特徴です。また、運用益も非課税で再投資されるため、資産を効率的に増やせます。ただし、原則60歳までは資金の引き出しができない点に注意が必要です。
NISAとiDeCoはそれぞれ特徴が異なりますが、どちらも投資の利益に対する税金を抑えられる点では共通しています。iDeCoは老後資金準備に特化した制度であり、NISAは老後資金だけでなく教育資金などさまざまな目的の資金準備が可能です。自身の投資の目的や資金の状況に合わせて、これらの制度を有効に活用しましょう。
投資では利益が出ると税金がかかりますが、損失が出た場合はどうなるのでしょうか。 投資の世界では、この損失を有効活用して税金を抑える「損益通算」と「繰越控除」という制度があります。
損益通算とは、同一年の利益と損失を相殺し、純利益に対してのみ課税する制度です。例えば、株式の売却で30万円の利益と20万円の損失が出た場合、損益通算によって課税対象となるのは10万円の利益のみとなります。
損益通算をしても損失が余ってしまう場合、余った損失を翌年以降3年間にわたり繰り越して、その間の利益と相殺できるのが繰越控除です。例えば、今年500万円の損失と100万円の利益が出ると、損益通算しても400万円の損失が残ります。この損失を、翌年以降3年間の利益から差し引けるわけです。
ただし、損益通算と繰越控除は、原則として同じ金融商品グループ内でのみ可能です。具体的には、上場株式等の譲渡所得等(株式や投資信託の売却益や配当金・分配金など)と、先物取引に係る雑所得等(FXやバイナリーオプションなどの利益)のグループ内で、それぞれ損益通算と繰越控除ができます。つまり、株と投資信託の間での損益通算はできますが、株とFXの間での損益通算はできません。
複数の金融機関やFX会社で取引をしている場合、それぞれの口座で利益と損失が出ていれば、損益通算と繰越控除の対象となります。
投資で利益が出たら基本的には確定申告が必要ですが、必要ないケースもあります。また、確定申告が不要でも、したほうが節税になるケースがあります。ここでは、以下の3つのケースについて詳しく見ていきましょう。
基本的に、以下のようなケースでは確定申告が必要です。
・一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で株式や投資信託の取引を行い、売却益や配当収入が発生した場合
・FXで利益が発生した場合
株式や投資信託の取引をする口座には、以下の4種類があります。
投資の利益には確定申告が必要ですが、以下のようなケースでは確定申告が不要です。
・特定口座(源泉徴収あり)・NISA口座で取引している場合
・給与以外の所得が年間20万円以下
株式や投資信託を特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、投資の利益は源泉徴収されるため、確定申告の必要はありません。また、NISA口座は利益に課税されないため、確定申告も不要です。
会社員や公務員のような給与所得者で、株式やFXの取引で得た利益を含む本業 以外の所得の合計が年間20万円以内の場合は、確定申告は必要ありません。本業以外の所得とは、投資の所得以外に副業の所得なども含めた合計のことです。ただし、利益がある場合、少額でも住民税の申告が必要な点に注意しましょう。
取引口座や投資の利益金額によって確定申告が必要ない方でも、以下のように、あえて申告したほうが節税になるケースがあります。
・損益通算や繰越控除を行いたい場合
・配当控除を受ける場合
・外国税額控除を受ける場合
損益通算・繰越控除と配当控除については、すでに解説したとおりです。
外国税額控除とは、二重課税を避けるために外国で支払った税金の一部を日本での納税額から差し引く制度です。外国株式の配当金は現地で源泉徴収された後、日本でも課税されます。この場合、確定申告すれば、外国で源泉徴収された税額の控除が可能です。
投資の利益にかかる税金を理解し、適切な対策をすると、効率的な資産形成が期待できます。投資の初心者は、NISAのような非課税制度を最大限に活用するといいでしょう。投資金額が大きくなって確定申告が必要になった場合は、損益通算や繰越控除を活用して支払う税金を抑えましょう。
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