プロフィール

総合保険代理店で個人を対象とした家計相談やライフプランニングを約10年経験。2021年以降は金融専門ライターとして複数メディアで活動しており、大手証券会社・保険会社や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。 暗号資産や投資信託、国内株式などによる資産運用も積極的に行っている。
お金を増やす手段として投資に興味はあるものの「難しい」「リスクが怖い」といったイメージを持っている人は多いかもしれません。確かに投資にはリスクがつきものですが、お金が増える仕組みやリスク管理の方法など、基本的な知識を身に付けておけば、安心して取り組むことができます。本記事では、投資初心者の方に向けて、投資の基本的な仕組みや必要性をわかりやすく解説します。これから投資を始めようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
投資とは単にお金を貯めるだけでなく、リスクを取ってでも資金を運用し、利益を狙う行為です。まずは、投資の基本的な仕組みや必要性を詳しく見ていきましょう。
投資とは「将来の利益に期待して自己資金を投じること」です。
投資は、農業に例えると理解しやすいかもしれません。農業では作物の種をまき、水や肥料を与えながら大切に育てることで、最初に種を買ったときのお金では買えないくらい多くの収穫を得られます。
同様に、将来性のある資産に資金を預け、それが成長するのを待つことで、最初に投じた金額よりも多くのお金を得ようとするのが投資です。
ただし、投資したからといって必ずしもお金が増えるわけではありません。投資のタイミングや投資先の選択次第で、投資したお金が戻ってこない場合もあります。
なお、投資は「お金が増えるか減るかわからない」という点でギャンブルと混同されがちですが、両者は本質的に異なるものです。
投資には資金を投じて企業や社会全体の成長を支援する、いわば経済活動に貢献する側面があり、リスクもある程度コントロールできます。そのため、適切な方法で取り組めば、短期間で資金がゼロになるケースは考えにくいでしょう。
一方、ギャンブルは娯楽を目的に行うものであり、経済活動との関連性はほとんどありません。利益を得られるかどうかは運の要素が強いため、投じた資金が一瞬でゼロになる可能性もあるのです。
投資が必要な理由は主に2つあります。
「インフレ」とは、物価が継続的に上昇する現象を指します。
物価が上昇すると、同じモノやサービスを買うにしても、以前よりも多くのお金を払わなくてはなりません。これは別の見方をすると「お金の価値が下がっている状況」ともいえます。つまり、何もしなければ、お金の価値は時間とともに減少してしまう可能性があるのです。
1980年代から1990年代前半のように預金の金利が3〜4%を超えていた時代は、少しずつお金が増えていったため、インフレの影響をあまり心配する必要はありませんでした。しかし、2024年8月時点での預金金利は、一般的に0.1%程度と非常に低く、ただ預金しておくだけでは資産が実質的に減少してしまう可能性があります。
日本では平均寿命が延び「人生100年時代」が現実となりつつあります。
しかし、老後の生活期間が長くなり、必要な生活費が増加する一方で、公的年金の給付水準が低下する可能性が指摘されています。
老後の生活費を自助努力で蓄える必要性は高まっていますが、子どもの教育費や住宅ローンの返済など、他の出費が多くなる場合もあり、貯蓄だけで十分な老後資産を準備するのは難しくなることも考えられます。
そこで、若いうちから投資を始めることが重要になるのです。長期的に投資を行えば、資産を効率的に増やせる可能性があります。
投資と貯蓄は、目的や特徴が大きく異なります。
投資は長期的な運用を通じて利益を狙う行為であり「お金を増やす」のが主な目的です。一方、貯蓄は「お金を貯める」のが主な目的であるため、大きな利益は期待できません。その代わり、投資した元本(元手となるお金)は保証されています。
また、投資の場合は資金を引き出すまでに時間がかかる商品もありますが、貯蓄の場合は必要なときにすぐに現金を引き出せる柔軟性を備えています。
投資と貯蓄は、それぞれの目的に応じて使い分けることが重要です。普段の生活に使わない余裕資金(当面使う予定がなく、なくなっても困らないお金)を増やしたい場合や、老後資金などの長期的な目標に向けて資産を増やしたい場合には、投資が適しています。
一方、日々の生活費や災害・病気といった不測の事態に備えて確保しておくお金、子どもの教育費のように必要な時期が明確な支出などに備えるためには、貯蓄が適しているでしょう。
投資でお金を増やす際は、利子や配当による利益(インカムゲイン)を狙う方法と、値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う方法の2つがあります。
どちらを狙うかによって、投資の方法やリスク、運用にかける時間なども変わります。
利子や配当による利益(インカムゲイン)とは、資産を持ち続けることで得られる利益です。預金などで発生する利子や、不動産投資における家賃収入などが代表例として挙げられます。
投資した商品の価格変動に左右されず、安定的な利益を狙えるのがメリットです。ただし、投資元本が少ない場合、大きな利益を得るのは難しいという側面もあります。
投資に使える時間が少ない人や堅実な利益を目指したい人は、利子や配当による利益を狙ってみるといいでしょう。
値上がり益(キャピタルゲイン)とは、資産の値上がりによって得られる利益です。例えば、20万円で購入した株を30万円で売却すれば、10万円の値上がり益が得られます。
この方法は、大きな利益を狙えるのが特徴です。株式投資を例に挙げると、株価が購入時の価格から10倍以上に跳ね上がる銘柄(テンバガー)もあります。
一方で、売却価格が購入価格を下回ると、大きな損失を出す可能性も考えられます。
頻繁に相場をチェックできる人や、短期間で大きな利益を目指したい人は、値上がり益を狙って投資するといいかもしれません。
投資商品によって、期待できる収益やリスク、運用方法は大きく異なります。そのため、投資の目的や「どのくらいの損失まで受け入れられるのか」などを考慮して投資商品を決めましょう。
株式とは、企業が資金を集めるために発行する証券です。
株価は市場の需給バランスに影響されて常に変動しているため、購入時よりも高い価格で売却できれば値上がり益を得られる可能性があります。
また、銘柄によっては業績に応じて利益の一部を還元する「配当金」や、株主に自社商品やサービスなどをプレゼントする「株主優待」などを受け取れる点も魅力です。
ただし、株式投資では大きな利益を狙える一方で、株価が大きく下落し、損失を出すケースもあります。株式はリスクを承知の上で、大きなリターンを期待する人に向いている投資商品です。
投資信託は、投資家から集めた資金をもとに運用の専門家が複数の投資商品に投資し、その収益を投資家に分配する投資商品です。
証券会社によっては、100円程度の少額から購入できます。「どのような銘柄をいつ・どのように売買するのか」を専門家に任せられるので、投資に関する知識や経験の少ない初心者でも始めやすい商品のひとつです。
ただし、投資信託によって運用方針が大きく異なるので、選んだ銘柄によっては期待したほどの利益が得られない場合もあります。一般の投資家が購入できる国内の投資信託は約6,000本にのぼり、その中から自分に合った銘柄を見つけ出すのは難しいこともあるでしょう。
FX(Foreign Exchange)は「外国為替証拠金取引」のことで、異なる国の通貨を売買して利益を狙う投資商品です。
FXでは、通貨の交換比率(為替レート)の変動を予測して利益を狙います。
例えば、米ドルを1米ドル=150円のときに買って、1米ドル=151円になったときに売れば、差額の1円が利益になります。反対に、1米ドル=149円のときに売ると、1円の損失が発生する仕組みです。
また、金利の高い通貨を買って金利の低い通貨を売ると、その金利差分の利益(スワップポイントともいいます)を得られる場合もあります。
さらに、FXは「証拠金」と呼ばれる少額の資金を口座に預けることで、何倍もの金額を取引できる「レバレッジ」を活用できます。このレバレッジにより、少ない元手で大きな利益を狙えるのが大きな特徴です。
ただし、相場が予測と反対の方向に動いた場合には、損失も大きくなる可能性があります。そのため、FXは頻繁に相場をチェックし、リスク管理ができる人向けの投資商品といえるでしょう。
国債は、国が資金を調達するために発行する債券(借用証書のようなもの)です。
国債には満期と呼ばれる返済期間が決められており、満期を迎えると投資した元本が返還され、保有期間中は定期的に利子を受け取れます。
ただし、国債の利率は1%に満たない場合が多く、大きな利益を狙うのは難しいでしょう。そのため、安全性を重視して資産を増やしたい人に適している投資商品です。
土地やマンションなどの不動産を購入し、その価値が上がったときに売却したり、家賃収入を得たりして利益を狙う投資方法を「不動産投資」と呼びます。
不動産投資の魅力は、災害などの大きなトラブルがない限り、急に価値がゼロになることは考えにくく、比較的安定した収益を期待できる点です。
一方で、不動産投資には物件の購入費用や維持費など、多額の初期投資が必要です。また、物件によっては収益性が大きく異なることから、適切な投資対象を選ぶのが難しい面も持ち併せています。
そのため、すでにある程度の金融資産を保有しており、投資のリスクを十分理解している人に向いているでしょう。
投資は無計画に始めると大きな損失を招くこともあります。リターンに期待するだけではなく、リスクについてもしっかりと理解しておきましょう。
投資を行う際には、基本的に元本保証がないことを念頭に置き、余裕資金で取り組みましょう。
余裕資金とは、3〜6カ月分の生活費や、緊急時に必要な資金以外の「当面使う予定のないお金」を指します。余裕資金を使えば、もし損失が発生しても、生活に影響を与えず投資を続けられるでしょう。
数百円〜数千円程度の少額で購入できる商品もあるので、自分の身の丈に合った投資からスタートしましょう。
投資におけるリスクとは「危険」を意味するものではなく、収益(リターン)がプラスになるかマイナスになるかわからないという「不確実性」を意味しています。
「リスクが高い」とは、収益(リターン)がプラスまたはマイナスに触れる幅が大きいことを意味します。
例えば、レバレッジを活用して手元資金以上の取引ができるFXは、短期間で大きな利益を狙える可能性があるものの、予想に反して相場が動いた場合は、大きな損失を被ることもあり、リスクが高い投資といえるでしょう。
一方、預貯金は元本が保証される代わりに利子はほとんどつきません。そのため、投資のリスクは低いといえます。
このように、リスクとリターンは比例するため「ローリスク・ハイリターン」の投資は基本的に存在しません。「簡単・確実に儲けられる」といった甘い言葉の商品は、詐欺の可能性が高いため十分注意が必要です。
リスクを抑えるための効果的な方法として「分散投資」があります。分散投資とは、投資対象を分散させたり、投資するタイミングを分散(時間分散ともいいます)させたりすることでリスクを軽減する手法です。
投資対象の分散とは、簡単にいえば「複数の投資商品や銘柄に投資して、お金を置く場所を分ける方法」です。
投資の世界には「卵は1つのカゴに盛るな」という格言があります。
これは、たくさんの卵を1つのカゴに入れて一度に運ぼうとすると、カゴを落とした時に全て割れてしまうかもしれないが、複数のカゴに卵を分けて運べば、一つカゴを落として卵が割れても、他の卵は割れずに済むという教えです。ここでの卵とは「お金」を、カゴは「投資対象となる株式や債券などの資産」を指します。
株式投資の例で考えてみると、1つの企業の株だけに投資していると、その企業の業績が悪化した際に損失が大きくなるリスクがあります。しかし、複数の企業の株に投資していれば、他の銘柄の値上がり分で損失をカバーできる可能性があるということです。
「時間分散」は、一度に投資資金の全額を投資するのではなく、投資するタイミングをずらす方法です。
例えば、投資するタイミングを1回に限定してしまうと、最も高いタイミングで買ってしまい、その後商品がすぐに値下がりして大きな損失を出す可能性もあります。
一方で、毎月一定額をコツコツ積み立てていけば、価格が高いときには少ない量を購入し、逆に価格が低いときには多く購入できます。その結果、平均購入価格を低く抑えられ、安定した利益を期待できるようになるのです。
投資は目の前の値動きに惑わされず、長期的な視点で取り組みましょう。
投資商品の価格は日々変動しており、上がることもあれば下がることもあります。一時的に価格が下がったとしても、その後に相場が回復して、元の価格水準に戻るケースもあります。
実際に日経平均株価(※)は、2020年3月に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け16,000円台まで下落しましたが、その後は徐々に回復し、2024年2月にはバブル期につけた市場最高値(3万8,915円)を更新しています。
※日本の株式市場を代表する225社の株価から算出した指数
多くの投資商品は長い目で見れば価値の上昇が期待できるため、目先の値動きに一喜一憂して売買しないようにしましょう。
投資は、資産を増やすために有効な手段のひとつです。一定のリスクは存在しますが、商品の選び方や投資方法によってリスクをコントロールできます。
投資で成功するには知識を身に付けるだけではなく、実際に経験を積むことも必要です。まずは少額からでもいいので、お金の流れや市場の動きを肌で感じてみましょう。
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