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NISAは相続税対策になる?

日本では、贈与税・相続税の最高税率は55%と、非常に高いです。2015年から相続税の基礎控除が引き下げられ、相続税を支払うことになる方の割合は、約11人に1人とも言われています。近年では株価や不動産価格の上昇などから相続税の申告をしなければならない件数も増えているようです。富裕層以外の普通の会社員などでも、相続税対策を考えなければならない時代になっているのです。相続や贈与の仕組みやNISAは相続対策になるのかを考えていきます。(ファイナンシャル・プランナー 花輪陽子)

2024年から贈与税も実質増税に

相続税が高いなら、生前に贈与をした方がと考える方もいます。人生の早い時期にまとまったお金を取得することができれば、長期で運用をしてお金を増やすことも考えられます。しかし、2024年から贈与税に関しても実質的に増税になります。

贈与税は個人から年間110万円を超える財産をもらった場合、もらった個人が負担する税金です。現行では贈与者が亡くなった際に、死亡前3年以内の贈与額(110万円以下の贈与財産も含む)を相続財産に加算しなければなりません。2023年の税制改正で、2024年からは生前贈与加算(持ち戻し)の対象期間が、相続開始前の3年以内から7年以内に延長されます。

従来どおり相続開始前の3年以内の贈与が加算対象となり、4年以上前のものに関しては、その期間の生前贈与の額から100万円を控除した額が持ち戻しの対象です。例えば、年間100万円の生前贈与を受け続けていた場合、3年以内の300万円はそのまま持ち戻しの対象ですが、4年前から7年以内の400万円は100万円を控除した300万円が持ち戻しの対象になりますす。

これは非常に大きな増税となるために、生前贈与を考えている方は注意が必要です。相続対策は早めに準備をし、より早い時点での生前贈与、あるいは貸付などを検討する必要がありそうです。また、相続を受ける側も早い時期から資産運用をして相続税を支払う資金作りを準備することも考えられます。

加えて、2024年からはジュニアNISAも廃止になるという変更点もあります。ジュニアNISAとは日本に住む、1月1日時点で18歳未満の未成年向けのNISAのことです。2024 年以降廃止になるため、新規に投資ができるのは2023年までで、2024年以降はジュニアNISAの非課税口座では新たな投資ができなくなります。


どのくらい資産があると相続税を払うのか

「自分は富裕層ではないから相続税は関係ない」と考えている方も、都心部にマイホームを持っていたり、金融資産が大きいと、相続税が発生する可能性は極めて高くなるのをご存じでしょうか。

相続税の基礎控除は、以下の計算式で算出します。

「3000万円+600万円×法定相続人の数」

相続人が一人の場合、基礎控除は3600万円です。例えば、資産運用などによって金融資産が3600万円以上あり、子供は一人という場合、その子どもは相続税と無縁ではなくなるわけです。

なお、地価の高い都心にマイホームを持っている場合、評価額が数千万~1億円を超える場合もあります。しかし、自宅の場合は、一定の基準を満たすと限度面積の330平米(100坪)まで、評価額を80%減額してもらえる特例(小規模宅地等の特例)があります。

つまり、評価額1億円の土地を相続したとしても、特例を受けることができれば、評価は80%オフの2000万円になるのです。特例を受けることができる相続人は、被相続人の配偶者、同居親族、持ち家のない親族、生計を一にする親族などに限られます(配偶者以外が相続する場合は「申告期限まで売らない」などの要件あり)。

なお、都心にマイホームがあって、金融資産もあるような場合、いずれその相続人が高額な相続税を課されることは免れられないでしょう。不動産に関してはさまざまな優遇がありますが、換金がしやすい金融資産に関しては、ほとんど優遇はありません。例えば、上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価をするなどです。現金化しやすいので、分けやすいというメリットはあるものの、評価を下げるという効果は見込まれません。


相続税の納税資金を増やす方法

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に行うことになっています。申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合があります。

相続税の支払い方は、特別な納税方法として延納と物納制度がありますが、現金で一度に納める方法が原則です。そのために、相続税を支払うために早期から貯蓄などをして準備する方もいます。なぜなら、相続財産は現金や預貯金以外にも、不動産、会社の株式なども含まれるからです。中小企業のオーナー社長が自社株式を保有している場合、その株式は社長の財産となって、相続人に継承されます。不動産や非上場企業の株式など換金しづらい財産のために、納税資金の確保が必要です。具体的には、手持ちの貯蓄を運用してお金を増やす、生命保険に加入するなどが考えられます。


生命保険との違い 貯蓄は三角、保険は四角

よく、相続対策として生命保険に加入したほうがよいと言われています。なぜ、相続対策に生命保険が有効なのでしょうか。「貯蓄は三角、保険は四角」と言われます。「貯蓄」は少しずつ貯めていき、増えるのにも時間がかかるためです。他方で、保険は損失(リスク)に備えて保険料を払っていれば、損失を賄うお金がすぐに確保できます。

預貯金と生命保険

特に若い時期に生命保険に加入をすると、支払う保険料に対して、受け取ることができる死亡保障金が高くなるというレバレッジ効果を期待できます。例えば、1億円の死亡保険金を設定している生命保険に分割払いで毎月支払う場合を考えましょう。1年経過したところで亡くなった場合、1年分しか保険料は支払っていなくても一般に1億円の死亡保険金を受けることができます。もちろん、年齢の経過と共に、払い込んだ保険料は増えていきます。長生きをすることによって、受け取ることができる死亡保険金の額は払込額と同じくらいになる場合もあります。

また、保険は相続時に保険金の非課税枠があります。被相続人の死亡時に遺族が受け取る生命保険の保険金は、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象になる場合があります。

相続税の課税対象となるケースでは、次の計算式で求められる「非課税枠」が適用されます。

500万円×法定相続人の数

相続税の基礎控除額を上回る相続財産には、通常は相続税がかかります。しかし、基礎控除額を超える分のお金を事前に保険会社に払い込み、死後に保険金として相続人が受け取れるようにしておけば、非課税枠が適用され、相続税を減らす可能性があるのです。

この非課税枠は保険だけの優遇なので上場株式や投資信託等の場合はこのような優遇はありません。ですが、将来発生するであろう相続に備えて、早期から株式などで運用をして、自分のお金を増やしておくことは納税資金を調達する方法としては有効です。


亡くなった方のNISA口座はどうなるか

さて、親が突然なくなって、NISA口座を持っていた場合どうなるのでしょうか。NISA口座に金融商品を保有する方が亡くなった場合、相続人が引き続き自身のNISA口座で被相続人(亡くなった方)の金融商品を持ち続けることはできません。相続人は死亡を知った日以後遅滞なく、金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。

被相続人がNISA口座で金融商品を保有していた場合、非課税の恩恵を受けることができるのは亡くなった日(相続発生日)までです。この際、亡くなった日の終値に相当する金額により、その上場株式等を売却したものとみなされます。亡くなった時までの含み益に関しては、非課税措置の適用があります。ただし、死亡日以後の配当金や分配金は非課税とはならず、その他、所得税や地方税も課税されます。その後は相続人の通常口座(特定口座もしくは一般口座)に引き継ぐこととなります。詳しくは、被相続人が金融商品を保有している金融機関に確認をするとよいでしょう。

参照元:国税庁 非課税口座の開設者が亡くなった場合(Q29)(外部サイト)


高齢者の株式投資

NISAでは日本に住んでいて1月1日時点で18歳以上の人であれば誰でも利用できます。年齢の上限や働いているかどうかも問われないためにリタイア後のシニアの方も制度を活用できます。

ただし、金融機関によっては75歳、80歳以上など年齢に応じて一部の取引に制限がかかる場合もあります。例えば、ネット証券の信用取引口座開設の年齢基準は18歳以上、80歳未満などです。また、75歳以上の場合も確認作業が必要な場合もあります。

参照元:財務省関東財務局(外部サイト)

また、シニアの方もつみたてNISAなどのつみたてサービスを行うことができますが、若い方と比べると投資期間が短くなるために十分なリターンが期待できない場合もあります。

人生100年時代なので高齢者が趣味で株式投資を行うことも考えられます。しかし、いくつか制限があるのと、相続対策にはそれほど有利ではないということは知っておくべきでしょう。それよりも早い時期から、子どもなどに少しずつ財産移転をして、子どもが相続税の納税資金を準備するほうが有効です。

本人も元気だからと自分の終活や相続対策を後回しにしがちですが、残された家族が苦労をする場合もあります。早期から親子で家族会議をして、相続・事業承継について話し合うべきです。生命保険に加入する場合も早く加入しないとレバレッジ効果が十分に得られない場合もあるからです。子どもの数が多く、その配偶者や孫なども巻き込むと相続は大ごとなります。しかし、弁護士や税理士などの専門家に早期から相談をすることでもめ事やお金の問題を減らすことができます。


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NISAを活用して、老後資金を作るには
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子どもの教育資金にNISAは活用できる?
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本記事に掲載されている情報は2023年9月30日時点のものです。NISA制度に関する最新の情報は、金融庁ホームページ(外部サイト)をご確認ください。

  • プロフィール

     監修者(専門家):花輪 陽子のプロフィール画像

    監修者(専門家):花輪 陽子

    ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)

    外資系投資銀行を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。『夫婦で貯める1億円』(ダイヤモンド社)など著作多数。日本テレビ「有吉ゼミ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数。

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