プロフィール
伊藤亮太FP事務所代表、スキラージャパン株式会社代表取締役。ファイナンシャル・プランナーとして、年間平均約100~200件の相談(資産運用、相続、保険の見直し、住宅ローンなどのローン相談等)を行うほか、証券外務員やFP資格取得講師、金融経済情勢、富裕層顧客開拓スキル、ドクターマーケット開拓、年金、四季報活用講座などの研修講師を行う。
※本記事は2023年までのNISA制度の記事です。記事中では新NISAについての記事も合わせてご紹介しています。
通常の投資信託とは異なりリアルタイムで投資信託を売買できるETFは、投資している方にとって分散投資の一手になる魅力的な商品。また、少額から投資できて値動きがわかりやすい側面もあるので、初心者にもおすすめです。ETFへの投資を検討しているうちに、一般NISA・つみたてNISAでもETFを購入できるのか疑問を持った方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、NISA・つみたてNISAでETFの取引ができるのかを徹底的に解説します。さらに、NISA制度を利用してETFを購入することのメリット・デメリットも紹介するので、資産運用の幅を広げたい方はぜひ参考にしてみてください。(監修者:ファイナンシャル・プランナー 伊藤亮太)
本記事は2023年までのNISA制度についての記事です。2024年から開始した新NISAについての記事は以下からご覧ください。
2024年からスタートした新NISAとは?
2023年までのNISA制度について知りたい方は引き続きこちらの記事をご覧ください。
一般NISA・つみたてNISAともに、ETFの購入が可能です。一般NISAであれば、NISA口座を開設している証券会社のラインアップに ある銘柄は基本的にすべて購入可能。国内ETF・海外ETF問わず購入できるので、自由度の高い運用ができるでしょう。
一方、つみたてNISAで購入できるETFを取り扱っているのは、2023年5月現在、大和証券1社のみ。さらに、取扱本数は10本未満であり、つみたてNISAでのETF購入は選択肢が限られることを覚えておきましょう。
NISA口座を銀行で開設している方がETFで運用するには、証券会社へのNISA金融機関変更の手続きが必要な点にも注意。ETFは銀行では扱っていないので、購入するには証券会社の口座を利用しなければいけません。
ETFとは、東京証券取引所など金融商品の取引所に投資信託として上場している銘柄のことで、上場投資信託とも呼ばれています。
投資信託とは、複数の投資家から集めたお金を投資資金としてプロが運用し、その運用益を投資額に応じて投資家に還元する金融商品のこと。一般的には、投資信託の運用の一部として上場している株式に投資していますが、投資信託自体は上場していません。対してETFは、投資信託そのものが上場しているもののことを指します。
ETFは、株式のように証券取引所で売買されるので相場の影響を受けて値動きします。注文は、通常の投資信託が1日1回なのに対して、ETFはリアルタイムなのが特徴。日経平均株価やTOPIXなどの指数の動きと連動した、流動的な取引を行えるのが魅力です。
ファイナンシャル・プランナー 伊藤さん:
ETFの魅力は、株式市場に上場しているためリアルタイムの取引ができる点。投資信託なので分散投資が自動ででき、中期的な保有にも向いています。そのうえで即座の売買が可能なことによって、市場の値動きに対応しやすく、より利益を狙いやすい商品性になっています。
売買にかかる手数料は株式と同じなのでコスト面をさほど気にする必要もなく、ポートフォリオの一部として扱いやすいのがETFのよさといえるでしょう。
売買にかかる手数料は株式と同じなのでコスト面をさほど気にする必要もなく、ポートフォリオの一部として扱いやすいのがETFのよさといえるでしょう。
先述の通り、NISA制度を利用してETFを購入することは可能ですが、一般NISA・つみたてNISAのどちらを利用するかによってETF運用時の特徴に違いがあります。ここでは、NISA口座の種類ごとの特徴や注意点を解説したうえで、それぞれにおすすめの方を明らかにします。
一般NISAでは、株式・債券・不動産など幅広い種類の資産を国内・海外問わず幅広く投資できます。海外ETFの投資先は全世界・先進国・新興国と幅広いので、分散投資をしたり、狙っている資産を多く組み入れたりと、自由な運用が可能です。
そのため、株式や債券などと同列でポートフォリオにETFを組み込みたい方は、一般NISAの活用が向いているといえます。
ETFの購入につみたてNISAを利用するのが向いているのは、特定の銘柄を長期間コツコツと積み立てしておきたい方です。
基本的に、積立投資は投資先を変えずに長期間、一定のペースで購入を続けるものです。つみたてNISAの非課税期間は20年間なので、10年スパンで積み立てを継続したい際に選択しましょう。
ただし、先述の通り、つみたてNISAでETFを取り扱っている証券会社は2023年5月時点で大和証券1社しかなく、銘柄数は7種類のみです。ETFは魅力的な商品ですが、つみたてNISAでの利用となると選択肢がかなり限られることも把握しておいてください。
ファイナンシャル・プランナー 伊藤さん:
ETFは運用中にかかる手数料である信託報酬が、通常の投資信託よりも0.5%ほど高い傾向にあるので、長期での保有だとコストがかかるのがネックです。積立投資で保有したままにするなら、信託報酬が安いつみたてNISA専用の投資信託を検討してみるのもよいですよ。
NISAでETFに投資するメリットは、なによりも非課税の恩恵を受けられること。ここでは2つのメリットについて詳しく解説します。
NISA口座を活用してETFに投資すれば、運用で得た利益を非課税で受け取れるのは大きなメリットです。
通常、運用で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISAを利用すれば利益に対して税金はかかりません。2023年時点のNISA制度では年間120万円までの購入なら非課税であり、2024年から始まる新NISAでは年間360万円まで拡大される予定です。
株式のようにリアルタイムで取引するETFは、売買の回数が通常の投資信託よりは多くなる可能性が高く、非課税枠があることのメリットは大きいといえます。
ETFのなかには少額で取引できる銘柄があります。そのため、初心者にとっては始めやすく、また経験者にとっては細かな売買がしやすいというメリットがあります。ETFをポートフォリオに組み込むことで、分散投資をしながら柔軟な取引ができるようになるでしょう。
また、年末などにNISA枠が少し余ってしまった際でも、ETFを細かく購入することで、無駄なく効果的にNISA枠を使い切ることができます。株式などを個別に購入しながら、隙間を縫うようにETFを購入していくのは、有効な選択肢といえます。
NISAでETFに投資する場合、デメリットもいくつかあります。分配金が自動で再投資されない点など、購入前に抑えておくべきポイントがいくつかあるため、以下で詳しく解説します。
NISA口座は1人1口座しか開設できないため、非課税でETFを運用したい場合、ETFは利用している証券会社の取扱銘柄に限定されます。ネット証券や大手証券会社は、基本的にETFを取り扱っているものの、特定の銘柄を狙っている方は注意が必要です。
すでにNISA口座で運用しており、ETF目当てに別の金融機関に乗り換えたい方は、NISA口座の金融機関変更手続きが必要になることは把握しておきましょう。開設先を変更する場合、これまでNISAで運用してきた資産は課税口座に移さなければならない点にも注意してください。手続きには手間もかかるので、いまの証券会社の取扱銘柄のなかで似た運用ができないか検討してみるのも手です。
NISAを利用してETFを購入する際、自動積立は利用できないことが多い点に注意しましょう。通常の投資信託で自動積立を利用できていても、ETFの場合は対応が異なることもあるので、必ず証券会社の対応状況を確認してください。
自動積立サービスは決まった時期に決まった金額で購入するので、利用すれば買うタイミングに悩まなくて済むことがメリット。加えて、時間分散の効果が高まるので、中長期的な値上がりを狙いやすい資産形成ができるのが魅力です。
しかし、通常の投資信託が1日1回売買価格が決まるのに対して、ETFは株式同様、市場価格でリアルタイムに取引されるため価格が動きやすく、証券会社側も自動積立サービスを適用しづらい側面があります。NISAでETFの積立を行おうとしている方は注意しておいてください。
NISAでETFを運用する際に覚えておきたいのが、分配金が自動で再投資されない点。
投資信託には、運用で出た利益を分配金で 投資家に還元する分配金型と、運用益を配布せずに再投資し複利効果を大きくする再投資型の2種類があります。基本的に再投資型のほうが複利効果が働くので運用効率がよいと考えておきましょう。
ETFは決算時に分配金が払い出されるのが一般的。つまり分配金型といえます。再投資するには自分で改めて買付を行う必要があります。手続きに手間がかかるうえに、非課税枠を消費しやすい仕組みであることは注意しておきましょう。
NISAを活用して海外ETFで運用する場合、分配金には外国税額控除が適用されないことは覚えておいてください。
海外ETFの分配金は、外国で源泉徴収されたあとに日本でも再度課税されます。このような二重課税を避けるため、確定申告の際に外国で課された税額を日本の所得税や住民税から差し引くのが、外国税額控除です。
課税口座での海外ETFの売買であれば、確定申告時に外国税額控除を申請することで、還付金を受け取れます。しかし、NISA制度は外国税額控除の対象外。たとえばアメリカの場合。分配金に対して10%の税金がかかってしまう点には注意してください。
NISA口座は1人1口座しか開設できないうえ、ETFは証券会社によってラインアップが異なります。ETFの購入を検討しているのであれば、取扱銘柄数が豊富な証券会社、あるいは狙っているETFを取り扱っているところを選ぶ必要があります。
どの証券会社を選べばいいか迷っている方は、以下のページをチェックしてみてください。証券会社各社の取扱銘柄数や取引手数料を詳しく紹介しているので、自分に合った証券会社が見つかるはずです。
自分にぴったりのNISA開設先を探す
【NISA口座開設におすすめ】証券会社NISA取引手数料ランキング
2024年から始まる新NISAについて知りたい方は、以下の記事をチェックしてみましょう。
新NISAへの切り替えは必要?
新NISAで証券会社を変更するには
新NISAでシミュレーション
新NISAの成長投資枠 銘柄選びのポイント
※本記事に掲載されている情報は2023年5月23日時点のものです。NISA制度に関する最新の情報は、金融庁ホームページ(外部サイト)をご確認ください。
情報提供元:mybest
画像出典元:Getty Images