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つみたて投資枠とはなにか、どう使うべきか知りたい

毎月のお給料から定期的に資産運用をしたいという方も多いでしょう。本記事はNISA(少額投資非課税制度)の「つみたて投資枠」について解説をしていきます。(ファイナンシャル・プランナー 花輪陽子)

つみたて投資枠とは

つみたて投資枠とは旧制度のつみたてNISAを引き継ぐ形の枠になります。復習になりますが、つみたてNISAとは、2018年1月より開始された新たな少額投資非課税制度のことです。つみたて投資枠ではつみたてNISAと同じく、国が定めた厳しい条件をクリアした投資信託が対象になります。また、買い付けの方法が「積立投資」に限定されています。

積立投資とは、定額を定期的に続けて投資する手法です。購入金額を一定に保つことで、価格が低い時に購入量が多くなり、価格が高い時に購入量を少なくする効果があります。全体の平均購入単価を平準化させる効果(ドルコスト平均法)があり、資産形成を長期で継続的に行っていく上で有効な手法の一つとして考えられています。また、最低購入単位は月100円程度からの金融機関もあり、多くの方が少額からの投資が可能になります。

つみたてNISAの対象となっている投資信託は、手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、「長期」「積立」「分散投資」に適した公募株式投資信託などに限定され、2023年6月23日時点では約230本のラインアップとなります。

長期投資が重要なのでしょうか?投資というと、「半年で3倍になった」「あっという間に元本が半分になってしまった」といったような極端なイメージを持たれている方も多いかもしれません。短期間でもうけようとせず、長期間コツコツと継続させていくことが大切です。また、毎日株価を見張って機敏に売り買いをすることも必要ありません。こうした短期売買は多くの方にとって失敗に終わることの方が多いのです。

タイミングを見計らっていると、多くのケースで株式相場の上昇トレンドに気づかず、利益を獲得する機会を逃してしまう傾向があります。利益獲得の機会を逃してしまうと、リターンは大きく損なわれる可能性があります。しかし、ドルコスト平均法を継続させることによって、利益獲得の機会を毎月教授することができるようになります。

また、なぜ分散投資をすることが重要なのでしょうか?例えば、A社のファンが自分の投資資金を全部、A社に投資していたとします。この場合、A社の株価が暴落すれば、大損することになります。しかし一社だけにお金を突っ込まずに、いろんな会社の株や債券などに分散して投資をしていたらどうでしょう。いくつかの株式で損はしても、ほかの株や債券で利益が出て、資産全体としてはプラスになるということもあり得ます。資産を1つの商品に集中して投資をしていると、その商品が大きく値下がってしまった場合に大損をしてしまう、それを防ぐためにまんべんなく投資をするというのが「分散投資」の考え方なのです。

つみたて投資枠では長期の資産運用をする上で有利と言われている「長期」「積立」「分散投資」に適した投資が自然とできるのがメリットと言えます。


分散運用

つみたて投資枠とつみたてNISAの比較

つみたて投資枠での年間投資上限額は120万円で、「生涯非課税限度額」が新たに設けられ買付金額ベースで合計1,800万円となります。生涯非課税限度額はつみたて投資枠だけで1,800万円を使うことも可能です。

さて、旧制度の一般NISAとつみたて投資枠は何が違うのでしょうか。一般NISAの年間投資上限額も120万円でした。あまり知られていませんが、一般NISA口座でも単元未満株や投信の積立サービスを利用できる金融機関もあります。

単元未満株取引とは、上場株式の単元未満株(銘柄ごとに決められている最低売買単位である1単元の株数に満たない株式のこと)を売買できるサービスのことです。各証券会社によって名称などが異なる場合があります。株式投資は一般に決められた売買単位(単元)での売買となります。東京証券取引所に上場している株式の購入は1単元100株(2018年10月1日以降)なので株価×100株分の金額が必要です。そのため、株価の高い銘柄を買うにはある程度まとまった資金が必要になります。例えば、ファーストリテイリング(9983)の株を1単元買おうとすると、数百万円の投資金額を準備する必要があります。しかし、単元未満株なら、単元未満の1株などから売買することができます。400万円が投資額として必要な株式の場合も4万円から投資が可能になるのです。

このように、旧制度の一般NISAでは、積立での購入もスポットでの購入もできましたが、つみたてNISAやつみたて投資枠では指定された銘柄(投信)を積立投資することになります。一般NISAでは約6,000本の投資信託、上場株式(外国株も含む)から選ぶことができ、選択肢が非常に広かったです。

しかし、選択肢が多くなると、初心者にとっては投資対象を選ぶことが難しくなる場合もあるようです。そうした方には国が長期投資に向く投資信託に絞り込んでくれている、つみたて投資枠のほうが比較的簡単に選ぶことができそうです。


つみたて投資枠ではなにが買える? 230銘柄の投資信託から選ぶ

つみたて投資枠で購入できる公募投資信託のリスト金融庁のホームページ(外部サイト)から確認をすることができ、運用会社別に対象の投資信託がリストアップされています。

投資信託を選ぶ際に運用会社を選ぶことは重要なポイントです。資産運用をする投資家としては投資信託を購入してから長い付き合いになるために、一貫した運用スタイルやクオリティを継続できる組織かどうかを選ぶ必要があるのです。一般的に資金が潤沢であれば安定性を確保でき、投資信託の数が少なく、ファンドマネージャーが多い方がきめ細かい運用が可能です。つみたて投資枠では国が一定の基準を満たした投資信託を選別してくれているのでその点、安心してリストの中から選ぶことができます。

つみたて投資枠のリストに掲載されている公募投資信託の多くはインデックス・ファンドです。インデックス・ファンドとは、パッシブファンドとも呼ばれ、TOPIXなどの指数(インデックス)と同じ値動きを目指す投資信託のことです。これに対し、ファンドマネージャーが積極的に銘柄選択をして、TOPIXなどの指数以上の運用成績を目指すアクティブファンドと呼ばれる投資信託もあります。

初心者にとっては「分かりやすい」「低コスト」という2つの理由からインデックスファンドが始めやすいです。国内で運用される投資信託は数千本もあり、その中からどのファンドマネージャーが運用する商品がいいのか選ぶことは至難の業です。それに対して、TOPIXなどの指数は新聞の一面やネットニュースですぐに知ることができ、初心者でも値動きなどが大変分かりやすいものです。


つみたて投資枠を使った方がよい方は

つみたて投資枠のご利用が向いている方は、投資初心者で何を買ったらよいかわからない方などです。成長投資枠では約1,000本も投資信託のラインナップがあるために初心者にとってはリスクが高い投資信託が紛れ込んでいます。そうした投資信託を選んで損をしてしまったという声も聞くからです。

また、貯蓄が苦手な方や投資に回せる予算が限られている方にとっても、計画的に毎月買い付けていけるので、つみたて投資枠は向きそうです。貯蓄が苦手な方の多くは毎月余ったら投資をしようという考え方が多いです。しかし、大抵お金は余りません。よほどの強い意志がないと、お金を余らせるのは至難の業だからです。


つみたて投資枠おすすめの活用法

① 月々とボーナスで資金に余裕があるAさん
〈Aさんプロフィール〉
・男性、26歳、一人暮らし
・職業:会社員
・住んでいる地域:千葉県
・手取りの世帯月収:20~25万円
・毎月の支出の目安:16万円程度

毎月の収支が黒字のAさんの場合、つみたてNISA枠を活用し、株式投資信託を購入するとよいでしょう。

Aさんは年齢が若く、未婚ですが、100%株式の積極的というよりも債券も加えたバランス型の投資信託で運用をしたいと考えています。

バランス型の投資信託とはあらかじめ「ポートフォリオ」が組まれて投資対象が分散されている投資信託のことです。NISAは株式がメインですが、債券のように安全性の高い投資対象を間接的に保有することも可能です。

例えば、セゾン・グローバルバランスファンドの主要投資対象は、国内外の株式及び債券で、インデックス型の外国投資証券への投資を通じて、世界30カ国以上の株式および10カ国以上の債券へ実質的に分散投資を行います。株式と債券の基本資産配分比率は、原則として50%ずつです。

セゾン・グローバルバランスファンド

こうしたバランス型ファンドのメリットとしては投資家が自身でリバランスという作業をしなくてもよいことが挙げられます。定期的にその資産配分の比率を当初の計画どおりに修正を行う作業をリバランスと言います。

また、月2〜3万円程度など積立額が少ない場合は、リバランスにそれほど神経質になる必要はないかもしれません。リバランスが面倒という方は最初からファンドのほうでリバランスをしてくれるバランスファンドを選ぶと楽です。あるいは若い方は全世界インデックス・ファンドなどの株式インデックスに100%投資してもよいと思います。その場合は基本的に放置でも大丈夫です。株式投資の収益率はタイミングによってはマイナスになる場合があります。しかし、投資期間が長くなるほどリスクに見合った収益が期待できます。また、若い方の場合、これから稼ぐことができる生涯賃金が大きいので、定年退職後の方と比べるとより高いリスクを取って、収益を追求することができるからです。

つみたて投資枠は若年層が資産運用をする上で少額からコツコツ投資を行い、時間を味方につけて複利効果で資産を雪だるま式に育てていくことを可能にさせます。無理のない金額からでよいのでできるだけ早くに投資を始めたいですね。

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本記事に掲載されている情報は 2023年12月15日時点のものです。NISA制度に関する最新の情報は、金融庁ホームページ(外部サイト)をご確認ください。

  • プロフィール

     監修者(専門家):花輪 陽子のプロフィール画像

    監修者(専門家):花輪 陽子

    ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)

    外資系投資銀行を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。『夫婦で貯める1億円』(ダイヤモンド社)など著作多数。日本テレビ「有吉ゼミ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数。

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