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つみたてNISAはメリットしかない? デメリットもあるのでは?

「つみたてNISAの仕組み、メリット・デメリットがわからない」という質問をいただくことがあります。本記事ではそんな質問に対する答えをわかりやすく解説していきますので、ご参考にしてください。 つみたてNISAとは、2018年1月より開始された新たな少額投資非課税制度のことです。非課税投資枠が1年間に40万円で、投資期間が最長20年です。つみたてNISAの対象となる商品は、国が定めた厳しい条件をクリアした投資信託です。また、買付けの方法が「積立投資」に限定されています。よく投資を始める際に「いつ買って、いつ売ればよいのか分からない」「何を買えばよいのか」という質問を受けます。つみたてNISAでは、国が投資対象や買付けの方法を限定してくれているので、初心者でも少額から毎月コツコツ、長期での資産形成を目指すことが可能です。(ファイナンシャル・プランナー 花輪陽子)

メリット1.積立投資でリスクを低減して投資ができる

積立投資とは、あらかじめ決まった金額を続けて投資することです。定期的に積立投資をすることで、安い時に買わなかったり、高いときにだけ買ってしまったりすることを避ける効果があります(ドルコスト平均法)。また、積立投資の場合、最低購入単位は月100円程度から始められる金融機関もあります。プロが運用をする金融商品に少額からアクセスすることができるのです。

ドル・コスト平均法とは、価格が変動する商品に対して「常に一定金額を、定期的」に購入する方法です。投資金額を一定にすることで、価格が低いときには購入量(口数)が多く、価格が高いときには購入量(口数)が少なくなり、平均購入単価を抑える効果が期待できます。

長期・積立・分散投資の効果(株式)


メリット2.国が厳選した投資対象に投資ができるので初心者でも安心できる

「どの投資信託を買えばよいのですか? 具体的に教えてください」―こういった相談をよく受けます。投資信託は国内で個人が購入できるものだけでも約6,000本もあります。このような膨大な数から初心者が最適な投資対象を選ぶことは困難です。

つみたてNISAの対象となっている投資信託は、手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、「長期」「積立」「分散投資」に適した公募株式投資信託などに限定されています。2023年6月23日時点では約230本のラインアップとなります。

投資信託とは、プロが運用をするパッケージ商品のことです。個別の株式に投資をする場合、投資をする最低単元が決まっており、1銘柄でも数十万円必要な場合もあります。また、どの株式がこれから値上がりするのかのタイミングを見極めることは金融のプロにとっても困難です。

これに対して、投資信託の場合、一括で買う方法の他にも、「積立投資」という方法もあります。つみたてNISAでは買付けの方法が積立投資に限定されています。

以下では、商品が厳選されていることでどのようなメリットがあるのかを解説します。


手数料が低水準

投資信託を保有すると、保有中に日々のコスト(信託報酬)がかかります。そのために、手数料が低水準ということは長期で資産運用をする上で非常に重要な要素になります。つみたてNISAで購入できる金融商品は手数料が低水準のものが厳選されているのがポイントです。

「信託報酬」とは、投資信託の運用や管理にかかる費用のことです。公表されている基準価額には、すでに信託報酬が差し引かれており、投資家が別途支払うことはありません。個別株式を自分で購入する場合、売買の判断や管理などを自分で行うためにコストはかかりませんが、プロに運用をお願いするとコストを支払う必要があるのです。

信託報酬がどれくらいかかるかというと、投資信託によって大きく異なり、年率0.5%未満から2%を超えるものまでばらつきがかなりあります。同じリターンの投資信託を保有する場合、もちろん保有中のコストが低い方が手取りは大きくなります。

例えば、信託報酬料が1%違う場合、資産総額にどのくらいのインパクトを与えるでしょうか。100万円を投資し、信託報酬を控除する前のリターンが4.5%の場合、20年間で約33万円も差が出ることになります。長期で保有をすると複利の効果で差が広がるからです。

投資するタイミング

信託報酬はたとえ運用が上手くいかない場合でも、投資信託を保有している以上は必ずかかります。そのため、信託報酬という投資信託にかかるコストもしっかり確認してから商品を選ぶことが大切なのです。

なぜこれほどまで個別の投資信託でコストが変わるのでしょうか。大きな理由として、運用手法の違いが挙げられます。株式運用にはインデックス運用とアクティブ運用があります。
日経平均株価などの市場全体の動きと連動する運用成果を目指す手法のインデックスファンドの場合、銘柄選定のプロセスが少なく運用会社の報酬などが低水準な傾向があります。また、銘柄の入れ替えも少ないことから、売買手数料などのコストも小さく済みます。

アクティブ運用は、今後上昇の期待できる銘柄を厳選し、運用成果を上げることをめざす運用手法です。情報の分析、意思決定、取引執行などのプロセスが多いことや、収益を求めて積極的な売買を行い、コストもかさむことから信託報酬が高い傾向があります。

インデックスを大きく上回るリターンを長期的にあげられるのであればコストを払う価値はあります。しかし、インデックスに勝つファンドは半数以下というデータもあるほどです。投資の初心者にとってはわかりやすく、確率的に勝率の高いインデックスから始めるもの一つでしょう。

インデックスファンドの代表的なものとして「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」、「セゾン・グローバルバランスファンド」などがあります。

TOPIX(東証株価指数)とは、東京証券取引所に上場する銘柄を対象として算出・公表されている株価指数です。SBI・全世界株式インデックス・ファンドはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスという全世界の株価動向を表す指数に連動することを目指して運用されています。また、セゾン・グローバルバランスファンドは国内外の株式市場及び債券市場を投資対象としたインデックス型の投資信託です。

これらのファンドの詳細は以下のページから確認いただけますので、興味のある方はチェックしてみてください。
eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)
SBI・全世界株式インデックス・ファンド
セゾン・グローバルバランスファンド


分配金が少ない

投資信託には、運用で得られた収益の一部を分配金として投資家に還元する仕組みがあります。この分配金の支払いが毎月行われるものが「毎月分配型」と言います。

分配金を受け取らずに運用を継続させると、複利効果で利益が増幅していくことが期待できます。投資期間が長いほど複利効果は大きくなります。

複利とは「利息と元金の合計」に対して利息を計算する方法のことを言います。複利によって得られる効果のことを「複利効果」といいます。雪だるまをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。利息と元金の合算に対しても利息がつくため、長期的に運用することで効率よくお金を増やしていくことができるのです。

分配金について

これから長期で資産を育てていきたいという投資初心者にとっては国が長期投資におすすめの投資信託と買い付け方を限定してくれているので、あれこれと迷わずに投資を継続できると言えそうです。


デメリット1.年間投資額の制限

つみたてNISAのデメリットは1年間の投資額の上限が40万円に限定されていることが挙げられます。働き始めたばかりで貯蓄がこれからの方、投資を始めたばかりの方にとっては問題にならないかもしれませんが、より多くの金額を投資したいと考えている方にとっては非課税枠が不足する可能性があります。

NISAの年間投資枠が足りないという場合は、課税口座と併用をして運用をすることが考えられます。非課税枠を使って運用をする投資対象は株式投資など期待リターンが高い金融商品が検討されます。値上がり益や分配金が非課税になるので、それらが大きく見込める投資対象を選ぶ方が確率的に有利になり得るからです。

期待リターンとは、ある資産について将来にわたる運用から獲得することが期待できる平均的な収益率(リターン)のことを言います。

株式に対して国内債券などは期待リターンが低く、大きな利益を狙いにくいです。そうしたものは課税口座を使うことも考えられます。


デメリット2.投資対象の制限

つみたてNISAの対象となる商品は、メリットとしてご説明したように、手数料が低水準で、分配金の少ない約230本の投資信託などに厳選されています。一般NISAでは投資ができる上場株式等の金融商品もつみたてNISAでは対象外となります。

しかし、つみたてNISAのラインアップを見ると、S&P500、TOPIXなどの代表的なインデックスや8資産均等型(国内・先進国・新興国の株式と債券、国内・先進国の不動産の合計8資産に1本で投資する)のバランスファンド(投資対象が分散されている投資信託のこと)など資産形成をする上で十分なラインアップにアクセスをすることが可能です。対象外の金融商品の取引に関しては、趣味的に課税口座で運用をするのも一つでしょう。

つみたてNISAは若年層でこれから資産を形成していきたい初心者には最適です。しかし、既に資産を築いており、運用をしながら資産を取り崩していきたいという人、分配金が頻繁に支払われるタイプの投資信託を利用したいと考えている人には不向きかもしれません。


2024年のNISA制度改正後はどうなる?

2023年までは、つみたてNISA では1年あたり最大40万円までしか投資できませんが、2024年以降は「つみたて投資枠」として最大120万円まで投資できるようになります。加えて、これまでは「1年あたりの上限額」のみの制限でしたが、新たに「一生涯の上限額」が設けられ、NISAで投資できるのは1人あたり1,800万円までとなる予定です。

また、成長投資枠(従来の一般NISAと類似商品が購入できます)とつみたて投資枠の併用も可能になります。また、非課税保有期間は無期限になり、期日を気にせずに長期投資ができるようになります。2024年以降は非課税枠が大幅に拡大し、より多くの人にとって利用しやすい制度に変わる予定です。

若年層を始めとして老後不安が大きいと思います。世界的なインフレなどもあり、日本円の預金だけではお金を育てることは困難になりつつあります。しかし、新しいNISAを上手に活用していけば、毎月少額の積立を継続させることによって、複利の力を利用しながら資産を大きく増やしていける効果が期待されます。ぜひ、この機会につみたてNISAを勉強し、少額から資産運用を実践していきましょう。毎月100円からならお試しで始めやすいかもしれません。

2024年以降の新しいNISA制度については以下の記事で解説しています。新しい制度を知って、賢く活用しましょう。

2024年から始まる新NISAを知りたい
新NISAへの切り替えは必要?
新NISAで証券会社を変更するには
新NISAでシミュレーション

※本記事に掲載されている情報は2023年6月23日時点のものです。NISA制度に関する最新の情報は、金融庁の公式ホームページ(外部サイト)をご確認ください。

  • プロフィール

     監修者(専門家):花輪 陽子のプロフィール画像

    監修者(専門家):花輪 陽子

    ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)

    外資系投資銀行を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。『夫婦で貯める1億円』(ダイヤモンド社)など著作多数。日本テレビ「有吉ゼミ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数。

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