生保の為替ヘッジ比率が14年ぶりの低水準、円高期待高まらず
U.S. one-hundred dollar bills in Hong Kong, China. Photographer: Bloomberg Creative Photos/Bloomberg
(ブルームバーグ): 国内生命保険会社が外国資産に対する為替ヘッジ比率を14年ぶりの低水準にまで引き下げている。これは円相場の持続的な上昇に対する慎重な見方を示唆している。
ブルームバーグ・ニュースが主要生保9社の決算報告書を分析したところ、外国証券にかける為替ヘッジ比率は3月末時点で44.4%と、昨年9月末の45.2%から低下した。
トランプ米政権の予測困難な政策により為替相場のボラティリティーは高まったが、3年にわたるヘッジ比率低下を止めるには至っていない。日本銀行の政策金利は国内のインフレ率をなお3%ポイント下回っており、次回の利上げはさらに遅れるとみられている。
三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、生保は「かつてのような円高に戻る可能性は低いと見始めており、外債をオープンで持ち、為替のエクスポージャーをある程度保持する必要を感じているのではないか」と指摘。「何といっても実質金利が低過ぎる」と話す。
円高リスクをヘッジするコストは高止まりしている。ブルームバーグがまとめたデータによると、日本の10年物国債の複利利回りは150ベーシスポイントと、為替ヘッジコストを考慮した米国、英国、ドイツ、オーストラリアの国債利回りを大きく上回る。
財務省のデータによると、生保は3月末までの半年間に外国債券を7562億円売り越した。売り越しは7半期連続。外国株式は昨年9月末までの半年間に1兆55億円買い越した後、3月末までに212億円の売り越した。
円の名目実効為替レートは広範なドル安を背景に3月に半年ぶりの高水準を付けた。しかし、上昇は続かず、日銀が経済と物価見通しのリスク要因に通商政策を加えたこともあり、2024年度下期には1.6%下落した。日銀は今月、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りし、市場は利上げ期待をさらに後退させた。
一方、4月以降、円の名目実効為替レートは0.8%上昇。トランプ政権の関税政策が世界経済に打撃を与え、安全資産への需要を刺激するとの見方から、アセットマネジャーとレバレッジファンドは今月初めにかけて先物とオプション取引での円の買い越しを過去最高水準まで積み上げた。
為替ヘッジをかけない運用では、外貨が下落した場合に海外資産から得られるキャピタルゲインやインカムゲインが相殺され、損失が生じるリスクがある。このため、生保が為替ヘッジを急ぎ、結果的に外貨安・円高を加速させる可能性がある。
オーバーナイト・インデックス・スワップ動向によると、日銀が年末までに政策金利を25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げる可能性は約70%。1月末時点では計50bpの利上げを27%の確率で織り込んでいた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ9月にも利下げを再開する確率は70%を超えている。
米国の金利低下は通常、日本の投資家にとってドルのヘッジコスト削減につながる。ヘッジコストは基本的に日米の金利差によって決まるためで、ニッセイ基礎研究所の上野剛志主席エコノミストは、米国の利下げ再開により「今後はある程度ヘッジ需要が高まってくるのではないか」と予想する。
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最終更新:5/30(金) 15:24