バイデン米政権、広範囲の中国製品の関税引き上げ-EVや半導体など

5/14 18:00 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): バイデン米大統領は半導体チップやバッテリー、太陽電池、重要鉱物を含む広範囲にわたる中国製品について、輸入関税率を引き上げる。11月の米大統領選での再選を目指し、重要産業で国内製造業の強化を図る。

米国は先に引き上げの方針が伝えられた一部の鉄鋼やアルミニウム、電気自動車(EV)に加え、港湾クレーンや医療用品の関税率も引き上げる。ホワイトハウスは、現時点で年間180億ドル(約2兆8200億円)相当の輸入品に影響が見込まれるとしている。

今回の動きは、最初にトランプ前大統領が課した対中関税の最も包括的なアップデートであり、対中貿易へのタカ派的アプローチが引き続き米有権者の間で人気があることを認めるものだ。トランプ前政権が課した対中関税の引き下げはない。

バイデン大統領は、米国として新型コロナウイルス禍で輸入に困難を抱え、政権が発足してからは増強を図ってきた半導体チップや環境に優しいエネルギーなど主要産業に絡んだ製品の関税率を引き上げる方針だ。

ただ、バイデン政権は注意深くバランスを取る必要がある。関税引き上げは既に高インフレの打撃を受けた米消費者にさらなる物価上昇をもたらすリスクがあるほか、中国側が反発して報復措置を講じる恐れもある。

新たな関税措置は2024年から26年にかけて時期をずらして発効が予定され、トランプ氏がホワイトハウス返り咲きの場合に打ち出すとしている一律60%の対中関税に比べて的を絞ったものとなる。EVの輸入関税率が4倍と最も大幅な引き上げとなり、この他の輸入品は2倍となったり、初めて賦課の対象となったりする。

バイデン大統領は14日、ホワイトハウスのローズガーデンで行われるイベントで対中関税措置を正式に発表し、詳細は声明で示される。

複数の政権当局者は正式発表を前に匿名を条件に計画について説明。超党派の支持で成立したインフラ投資法や国内半導体業界支援法(CHIPS法)を受けた国内投資と、新たな関税措置とを組み合わせることで、中国との間で公平な競争条件を整備するとしている。

幾つかのケースでは、米国市場での中国製品のシェアがわずかな分野にも関税措置が適用されるが、その場合、将来的な輸入急増の可能性を予防するのが狙いとなる。

ホワイトハウスのブレイナード国家経済会議(NEC)委員長は記者団に対し、「中国は同国独自のルールで行動するには単に大き過ぎる」と指摘。「中国の過剰生産能力にもかかわらず、同国は投資を続けることで他国を犠牲にして自国の成長を推進するという、以前と同じ手法を用いている」とし、「不公正な経済慣行によって低く価格設定された輸出品で世界の市場をあふれさせている」と語った。

ターゲット

中国製半導体の輸入関税率は現行の25%から、25年までに50%に倍増される。米国での生産増強に向けた多額の補助金を通じ、バイデン大統領が製造業強化策の中核としてきた半導体産業をターゲットとするものだ。

賦課の目的は、比較的古い世代の部品でありながら、世界経済にとって引き続き重要ないわゆる「レガシー半導体」の生産を中国が加速させるのに対抗することだ。バイデン政権は最近、自動車や航空宇宙、国防などの100社余りを対象として、こうした旧世代半導体のサプライチェーンの調査を終えたところで、欧州連合(EU)も同様の独自調査の開始を検討している。

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一部の重要鉱物と港湾クレーンは今年、25%の関税を新たに課され、天然黒鉛と永久磁石は26年に同率の関税賦課の対象となる。

EVの輸入関税率の引き上げは今年発効の予定で、現行の27.5%が最終的に102.5%となる。中国からの鉄鋼・アルミ輸入のうち、現在の関税率が0%ないし7.5%の製品については今年25%に税率を引き上げる。

EV向けリチウムイオン電池とバッテリー部品の関税率は今年、7.5%から25%に引き上げられ、EV向け以外のリチウムイオン電池の関税率も26年に同様の引き上げとなる。太陽電池の関税率は今年、25%から50%と2倍になる。

米国は今年このほか、中国製注射器・注射針に50%の関税を新たに課す。人工呼吸器やマスクなどの個人用防護具の関税率は現行の0%ないし7.5%から25%に引き上げられ、ゴム製医療用・手術用手袋の関税率は7.5%から26年には25%となる。

こうした措置が中国による報復関税の賦課を招くかどうかは不明だ。しかし、23年のデータに基づいて米政権が提供した推計によれば、トランプ政権下で提案された関税制度は既に2260億ドル相当の物品に適用されている。

イエレン米財務長官は13日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、中国が大規模な報復に出ないことを望むとしつつも、その可能性は常にあると述べた。

イエレン長官は声明で、「バイデン大統領と私はこれまでに、人為的に低く価格設定された中国からの特定の輸入品急増が米国のコミュニティーに影響を及ぼすのを直接、目にしており、その再発は容認しない」とした上で、「問題は時間をかけて増大してきたもので、1日にして解決されることはない」と表明した。

14日の発表はトランプ前政権下で発動された通商法301条に基づく関税の見直しの集大成となる。また、大統領選で再度の対決となるバイデン、トランプ両氏はいずれも、中国に対する自身のタフな姿勢を訴えようとしている。

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原題:Biden Imposes Sweeping Tariffs on Chinese Chips, Minerals, EVs(抜粋)

--取材協力:Annmarie Hordern、Gregory Korte.

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最終更新:5/14(火) 18:00

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