「セットはおひとり1649円から」「ドリバーは全長12メートル!」 すかいらーくが始動「体験型イタリアン」の実力とは?

10:02 配信

東洋経済オンライン

 「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」など、ファミレスでおなじみのすかいらーくグループ。そのすかいらーく子会社であるニラックスが新業態の「イタリアン リゾート ペルティカ」を8月26日、東京・小平にオープンした。

 ホームページを見るとファミレスらしからぬ高級感ある店内に豪華なドリンクバーなど、そそられる写真が並んでいる。早速行ってみた。

■青梅街道駅から徒歩圏内に1号店がオープン

 「ペルティカ」の最寄り駅は西武鉄道多摩湖線の青梅街道駅。駅からはすぐだが、広々とした駐車場も併設されており、筆者のように電車で訪れる人よりも車で来店する人のほうがメインなのかもしれない。

 建物は明らかに郊外型のファミレスの造りをしており、調べてみるとやはり以前は「ジョナサン 小平店」を営業していた場所だった。

【画像13枚】すかいらーくが「ジョナサン」跡地につくった新業態、内装やメニューはこんな感じ

 「高原リゾート」をイメージしたという店内は、確かに従来のファミレスとは一線を画す雰囲気。高級感があり落ち着いた空間だ。

 ちなみに同グループが展開するカフェ業態「むさしの森珈琲」の内装も、「高原リゾート」をイメージして内装をデザインしているそう。「高原リゾート風」はすかいらーくの十八番なのかもしれない。

■全長12メートルの「インペリアルドリンクバー」

 ファミレスの醍醐味と言えばドリンクバーだが、この店の目玉は「インペリアルドリンクバー」。“インペリアル=最上級の”と謳うだけあり、全長約12メートルにわたって豪華ドリンクがずらりと並ぶ。

 ボタンを押すと濃縮液と水がジャーっと流れてくる味気ないディスペンサーはここにはない。ジュースやフルーツティーのポットが並び、紅茶も様々なフレーバーの茶葉が置かれ目移りしてしまう。炭酸サーバーもあり、シロップを割って好みの炭酸ドリンクも楽しめた。

 何より感動したのは、コーヒーの「ブリューイングマシン」。ハンドドリップする際に使うものと同じような三角ドリッパーにペーパーフィルターとコーヒー豆をセットし、スイッチを押すと自動でいい感じに湯が抽出される。人の手で淹れる時と同じような動作で抽出されるので特別感があった。

■「体験型」のメニューが新しい

 ドリンクだけでなく料理も従来のファミレスにはない工夫が見られた。「ペルティカ」では「体験型」のメニューが売りで、その1つが「擦りたてフレッシュバジルのジェノベーゼ」だ。

 こちらを注文すると、まずバジルや松の実、オリーブオイルが入ったすり鉢が運ばれてくる。客が自らこのバジルを混ぜ合わせることで香りを楽しむという趣向だ。混ぜ終わったバジルは回収され、それがパスタになって戻ってくる。

 女1人で訪れた筆者が黙々とバジルを混ぜる姿はシュールだったが、例えば子連れ客ならば「自分の混ぜたバジルがパスタになった!」と喜んでもらえそうだ。

 このジェノベーゼを見て筆者が思い出したのは、明大前の人気イタリアン「スポルカチョーネ」。こちらもすりたてバジルのジェノベーゼが名物で、同様に客前でバジルを混ぜ合わせるパフォーマンスを行っており、希望すれば客が混ぜることもできる。おそらくこれをヒントにしたのではないだろうか。

 また居酒屋チェーンの「串カツ田中」や「新時代」のポテトサラダも、ジャガイモやマヨネーズが入ったすり鉢が提供され、客自身が混ぜ合わせて楽しむ仕様になっている。

 こうした人気店や居酒屋で行われる「体験型」のトレンドをリサーチし、ファミレスに落とし込んでいこうという開発担当者の意気込みを勝手ながら感じた。

■「時間」を提供するサービスが競合? 

 「ペルティカ」の公式ホームページには「心も満たす2時間」という文言がある。これが示すように、同店が売っているのは料理や飲み物のような単なる「モノ」ではなく、ここで過ごす「時間」や「体験」のようだ。

 この業態は、他の競合飲食店や内食、中食と胃袋の奪い合いをしているというよりは、その他の時間に対価を払うようなサービスを競合と意識しているのかもしれない。

 実際に「ペルティカ」を訪れてみて、TSUTAYAの「SHARE LOUNGE(シェアラウンジ)」をベンチマークしているように感じた。「SHARE LOUNGE」はTSUTAYAがいま力を入れている事業で、時間制で利用できるカフェとコワーキングスペースの中間のような施設。急速に店舗数を拡大しており、現在は提携店を含め50店舗ほどを展開している。

 自由に飲み食べできるドリンクやフードにかなり力を入れていて、「ペルティカ」の「インペリアルドリンクバー」は「SHARE LOUNGE」のドリンクコーナーを思い出した。

 すかいらーくの店舗数の推移を見てみると、ファミレスの中で中価格帯の「ジョナサン」の店舗数が縮小傾向にある。

 リーズナブルな価格帯の「サイゼリヤ」や同社の「ガスト」、また高価格帯の「ロイヤルホスト」が好調でファミレス業界では二極化が進む中、その間の価格帯にいる業態は変革が必要なのかもしれない。

 冒頭で述べたとおり、この「ペルティカ」は「ジョナサン」からの業態転換でオープンしており、ここで「ペルティカ」がうまくいけば今後もこうした業態転換が進む可能性はありそうだ。

 実際に「ペルティカ」では、平日昼の料金体系でスープ(おかわり自由)、サラダ、フォカッチャ、パスタにドリンクバーの「Aセット」1649円(税込)にジェノベーゼのプラス料金が550円、さらにデザート1種329円を付けてお会計は2528円だった。ファミレスだと思うとまあまあ高価格帯の部類になると思う。

 単に料理の質を上げたから価格を上げているのではなく、そこで過ごす「時間」や「体験」という付加価値を付けることで価格を上げているのがすかいらーくの新しい挑戦なのだろう。

■ネットカフェも「トキ消費」を意識

 周知のとおり、現代の情報化社会では可処分時間をどう使うかが重要視されている。様々な業種で消費者の可処分時間の奪い合いが行われ、企業はいかに「いい時間」を過ごしてもらうか知恵を絞っている。

 ネットカフェ大手の「快活CLUB」も、トキ消費を意識した新コンセプト店「KEY PLACE」の展開を開始した。「スキマ時間の充実」を謳い、スキマ時間によく利用されるカフェをベンチマーク。カフェが補えないニーズを捕捉した店づくりが特徴となっている。

 休日ともなればどこのカフェも混み合う渋谷に7月、「KEY PLACE」店の「快活CLUB渋谷センター街店」をオープンした。このコンセプトの店舗を今後3年間で繁華街を中心に約60店舗出店する計画だそうだ。

 話をファミレスに戻すと、これまでもファミレスといえば「家族のだんらんの場がほしいから」「学校帰りに友だちとだべりたいから」といった何かしらの「そこで過ごす理由」があるシーンで多く利用されてきた。ファミレスが多くの人に愛されるのは「幼い頃に家族と一緒に食べたハンバーグ」「部活帰りにドリンクバーで友達とだべった青春の日々」のような思い出とともにあるからではないだろうか。

【画像をもう一度見る】すかいらーくが「ジョナサン」跡地につくった新業態、内装やメニューはこんな感じ
 これこそまさに「トキ消費」や、最近では「イミ消費」「エモ消費」と言われるものだ。そうしたファミレスが持つ強みを生かし、「ファミレスで過ごす時間、体験」をより強力な売り物にしていくことが今後の活路なのかもしれない。

東洋経済オンライン

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最終更新:10/3(木) 10:47

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