絶対にいきなりパワポを立ち上げてはいけない…プレゼン上手がやっているスライドづくりの鉄板ルール

4/19 6:17 配信

プレジデントオンライン

プレゼンが上手な人はどんな準備をしているのか。研修講師の深谷百合子さんは「資料をつくるとき、いきなりパソコンに向かうのはやめたほうがいい。まずは紙に手書きで要素を書き出していったほうが準備がスムーズになる」という――。

 ※本稿は、深谷百合子『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■プレゼン資料作りでいきなりパソコンに向かわない

 プレゼンの資料を作るときに多くの人がやりがちなのが、いきなりパワーポイントを立ち上げ、作り始めること。私もそうでした。「いいテンプレートはないかな」「どの色にしようか」といった、内容とは直接関係のないことに時間を使っていました。

 また、「このスライドでは何を書こうかな」と考えながら、その間に「この文字は色を変えたほうがいいかな」「ここでアニメーションを入れようか」と、いろんなことに思考が飛びます。時間ばかりかかる割には、一発OKとなる資料にはなりません。「これはやり方を変えないといけない」と思い、パワーポイントにさわるのを工程の最後にしてみました。

 代わりに取り出したのは紙です。まず、プレゼンで説明する内容の「素材」を紙に手書きします。「素材」とは、「プレゼンの目的」「聞き手は誰か」「一番伝えたいことは何か」「伝えたいメッセージの根拠となる事実と理由」です。

 手書きなら、文字だけでなく「なんとなく浮かんだぼんやりしたイメージ図」もすぐに書けます。これらをざっと書き出したうえで、全体の流れを書きます。本でいう「目次」を作るイメージです。

■書く言葉が出てこないならまず一人でしゃべってみる

 「そうは言っても、何を書いたらいいのか言葉が出てこない」という方もいるでしょう。そういうときには「話をする」といいです。名付けて「ひとりブツブツ会議」。まず頭の中にあったものを「話す」という行為で外に出し、次にそれが耳から入ってきてさらに考えが深まり、言葉が整理されます。ただし、話したことはシャボン玉のように時間が経つと消えてしまいますから、メモしておくか、録音して「形」として残しておきましょう。

 こうして、自分の考えを言葉にできたら、スライドの設計図を書きます。A3の紙を8等分になるように折って、折り目に線を引き、1マスを1スライドとします。そこに、スライドのタイトルとメッセージ、写真やグラフのレイアウトなど、イメージ図をざっくりと描いていきます。漫画やアニメでいう「絵コンテ」のようなものです。

 ここまでできると、あとはパワーポイントで「清書」するだけなので、あれこれ迷うことがありません。

■話す内容を弁当箱に置き換えて位置情報でインプットする

 パワーポイントも資料もなしで、自分のアイディアや企画をプレゼンすることになったらどうしますか。ガッツリ台本を作って、暗記するという方が多いかもしれません。でも、本番でセリフを思い出そうとすると、視線は上や横に動きます。すると聞き手に「今、言うことを思い出そうとしている」というのが伝わってしまいます。

 そうならないためには、台本を一言一句覚えようとしないことです。そのかわり、話す内容を「位置情報」として頭の中にインプットします。

 例えば、次のような弁当の説明をするとします。

 「弁当箱は4つに仕切られています。右側の大きな仕切りには海苔をのせたご飯が入っています。左側は3つに分かれていて、上には焼き魚、真ん中は野菜の煮物、下には漬物が入っています」

 このとき、頭の中にこの弁当箱の映像を思い浮かべると覚えやすくなります。「右」は海苔をのせたご飯、「左上」は焼き魚、「左の真ん中」は野菜の煮物、「左下」は漬物というように、中身を「位置情報」としてインプットするのです。すると、文字で覚えるよりも再現しやすくなります。

 プレゼンも同じです。大きな弁当箱の中に、「見出しをつけた箱」を頭の中で並べます。例えば、「左上」は「結論」の箱、「左下」は「理由」の箱、「右上」は「具体例1」の箱、「右下」は「具体例2」の箱というように。そして、詳しい内容を箇条書きの形で箱の中に入れます。

 プレゼン本番では、頭の中に置いた箱を再現します。

 「今から開けるのは、左下の理由の箱」というように、順序と位置を意識するだけ。あとはそのときの自分から出てきた言葉で説明します。思い出して出てきた言葉より、そのとき出てきた言葉のほうが力があるので、相手に伝わります。

■「感想をひと言お願いします」と言われて慌てないために

 プレゼンといっても、いつも目の前に原稿やスライドがあるとは限りません。例えば、セミナーや会議で、「おひとり30秒で自己紹介してください」とか、「感想をひと言お願いします」と言われたりすることがあります。このとき、準備をしていなくて慌てることもあるでしょう。

 そこで、用意しておくといいのが、時間別の「型」です。先ほど紹介した「脳内弁当箱」の中身を持ち時間別に変えるのです。持ち時間が10秒なら、説明するのはご飯だけ。持ち時間が90秒なら、ご飯と焼き魚と野菜を説明するというイメージです。

 何かを提案する場合は、「問題提起」「結論」「具体的な事実と理由」の順で説明しますが、持ち時間が10秒ならば、「問題提起」をして、「結論」をズバリひと言で説明します。90秒なら「問題提起」と「結論」に加えて、「具体例」を1つ挙げて説明すると、ちょうどいいでしょう。

■短い時間で全部の内容をわかってもらおうと考えない

 例えば、次のような特徴を持った調理器具を説明する場合で考えてみましょう。

 「スイッチがたった1つの、余計な機能がついていないシンプルな調理器具。内鍋に材料と調味料をセットしてスイッチを押すだけで調理できる。煮物は吹きこぼれる心配なし。鍋が調理している間、あなたは仕事や他の家事をすることができる」

 これを10秒で説明するなら「限られた時間を効率よく過ごしたい。そんなあなたを料理の時間から解放するワンタッチ万能調理器具です」というように、問題提起をして、結論をひと言でまとめます。

 90秒で説明するなら、「限られた時間を効率よく過ごしたいと思いませんか。これは、そんなあなたを料理の時間から解放するワンタッチ万能調理器具です。例えば、煮魚を作るなら、鍋に魚と調味料をセットしてスイッチを入れ、あとは出来上がりを待つだけです。吹きこぼれる心配も、焦げつく心配もありません。だから、あなたはずっと鍋のそばについている必要がありません」のように、具体例を1つ挙げて説明します。

 短い時間で説明する場合は、全部の内容を相手にわかってもらおうとしないことです。要点のみを伝え、相手から「続きを聞きたい」と思ってもらうことをゴールにしましょう。

■プレゼン開始時には聞き手に話しかけて一体感をつくる

 プレゼンは、発表者が一方的に話をする形になりがちです。でも、ちょっと想像してみてください。日常の会話で、相手が一方的に話すのをずっと聞いているのは、苦痛ではありませんか。プレゼンも聞き手と言葉をキャッチボールするつもりで進めましょう。

 そのためには、質問をすることが効果的です。特に、プレゼンが始まるときには、話し手と聞き手の間に「見えない壁」があります。質問を投げかけることによってその壁を崩し、「同じ場にいるあなたと私」という一体感を作ることができます。

 質問は相手の答えやすい簡単なものにします。ただし、限られた時間の中なので、「今日はどうやって来られましたか」といった世間話のような質問よりは、プレゼンの目的や内容に沿った質問がいいですね。

 例えば、「こんなことにお困りではありませんか」「こんなものがあったらいいなと思われている方はいらっしゃいますか」というような質問です。聞き手の関心事について質問すると、聞き手は頭の中で「そうそう」と頷いたり、実際に頷く動作をしてくれたりします。

■「手を挙げてください」は中盤まで取っておく

 「今日のプレゼンの目的は○○です」と言うと一方的な話になりますが、質問をすると実際声に出して会話をしなくても、聞き手は頭の中であなたと会話をしてくれます。

 「Aだと思われる方は手を挙げてください」というように、挙手をしてもらう問いかけもいいですが、それはプレゼンの冒頭でするよりも、話が少し進んでからのほうがおすすめです。話し手も聞き手もまだ緊張感のある冒頭では、「手を挙げてください」と言われても、聞き手の中には周りを気にして手を挙げにくい人もいるからです。

 「手を挙げて」と言ったのにリアクションがないと、話し手であるあなたも、自分だけが空回りしているように感じて、出鼻をくじかれた気分になってしまいます。

 聞き手の一人ひとりと「脳内会話」をするつもりで話しかけ、プレゼンの冒頭で聞き手の心をがっちりつかみましょう。

■手元ばかり見て話していては説明が届かない

  子どもの頃、「人の目を見て話しなさい」「話を聞くときは、相手の目を見て聞きなさい」と言われませんでしたか。お互いにアイコンタクトを取ることで、信頼感が生まれますし、お互いの表情を確認し合うことができます。

 プレゼンのとき、原稿やスライドばかりを見ていると、聞き手がどのような反応をしているかを見ることができません。ですから、自分の説明を相手にしっかり届けたいなら、アイコンタクトを取るべきです。目を見ると緊張してしまう人は、相手の眉間のあたりを見るといいでしょう。

 1対1でプレゼンをするなら、相手の目を見て話します。ただ、ずっと目を合わせていると、相手は緊張してしまいますので、問いかけをしたり、相手からの返答を聞いたりするときに、3秒くらい目を合わせるといいです。

■うなずきながら聞いてくれる人とアイコンタクトを取る

 相手が数人程度であれば、一人ひとり順番に目を合わせる形で、アイコンタクトを取ります。大きな会場の場合は、一番後ろの人にも届くように意識しつつ、ブロックごとに特定の人を決めて、視線を配ります。

 例えば、右の列、真ん中の列、左の列それぞれにいる特定の人とアイコンタクトを取るのです。あなたの話を聞いて、「うんうん」と頷いたりリアクションをしてくれたりする人が、会場には必ずいます。そういう人を見つけて、その人に向かって話すような感じでアイコンタクトを取ると、自分も話しやすくなります。

 1つだけ注意しておきたいのは、「アイコンタクトを取らなければいけない」と、相手の目を見ることが目的になってしまうことです。

 アイコンタクトの目的は、相手と心を通い合わせながら話をすることです。目を合わせることだけにとらわれず、その人と会話をするような意識でアイコンタクトを取ってください。1対1でも1対多数でも、キャッチボールの相手は常にひとりです。ひとりの目を見て、その人に話しかけるようにすると、相手にも「私に話をしてくれている」と思ってもらうことができます。



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深谷 百合子(ふかや・ゆりこ)
合同会社グーウェン代表
大阪大学卒業後、ソニーグループ、シャープで技術者・管理職として工場の環境保全業務を行う。専門用語を噛み砕いて説明できることが評価され、工場の見学者に環境対策の説明や、テレビや新聞からの取材に対応する業務を任されるようになる。その後、中国国有企業に転職。100名を超える中国人部下の育成を任される。2020年独立。コミュニケーションをテーマに、各種メディアで活動中。
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最終更新:4/23(火) 12:11

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