BMW、ハーレーダビッドソン、トライアンフに試乗、成熟度が増した輸入バイクの現在地

5/16 10:02 配信

東洋経済オンライン

■熟成の車両が勢揃い

 日本自動車輸入組合(JAIA)では、1982年より輸入四輪車試乗会を行ってきた。2024年1月末から2月頭には、その43回目の試乗イベントが開催された。そして2015年からは輸入二輪車試乗会が開催されている。それぞれ四輪JAIA試乗会、二輪JAIA試乗会と呼ばれている。

 筆者は1993年から四輪、2016年から二輪のそれぞれのJAIA試乗会に参加しているが、今年の二輪JAIAは熟成の車両が勢揃いした感がある。2024年の今回は、JAIA二輪会員全12社から、過去最高となる105台の最新の試乗車・展示車が提供され、4月10~11日の開催2日間で延べ47媒体、153名のメディア関係者が取材に訪れた。

 今回、筆者は3ブランド5モデルに試乗した。BMWからは看板モデルである「R1300GS」と電動バイク「CE04」。ハーレーダビッドソンからはコンパクトながらしっかりハーレーの独自色がある「X350」と「X500」。そしてトライアンフからは直列3気筒2500ccエンジンを搭載する「Rocket 3 Storm R」だ。

【写真】BMW「R1300GS」「CE04」、ハーレーダビッドソン「X350」「X500」、トライアンフ「Rocket 3 Storm R」などの最新輸入バイク(40枚以上)

■BMWのアドベンチャーモデル「R1300GS」

 まずはBMWのR1300GSから紹介する。いわゆるアドベンチャースポーツモデルで、「R80G/S」(1980年)にルーツを持つ。最新世代のGSはオン/オフ問わない高い走破性能に加えて、各所に電子制御技術を用いて滑らかに走る。歴代のGSシリーズに乗ってきたが、R1300GSでは洗練度が格段に上がった。

 一見すると大柄なボディに大径タイヤでシートも高い位置にあるから乗り手を選びそうだ。しかし、試乗した「R 1300 GS Option 719 Tramuntana」は、速度に応じて前後サスペンションの長さを変える「アダプティブ・ビークル・ハイト・コントロール」を装備するため抜群の足つき性能が得られた(ライダーである筆者は170cm/67kg)。

 シート高は820~850mmの間でアクチュエーターにより制御される。停止時は最短位置でスタンバイして乗り降りするライダーをサポートする。そして速度を50km/h以上に上げると、今度は850mmへと車高を上げてたっぷりとしたホイールストロークで大らかな乗り味を提供してくれる。

 このアダプティブ・ビークル・ハイト・コントロールは、従来型から踏襲する電子制御ダンピング機構とも統合制御される。荒れた路面ではしなやかに凹凸を受け止めつつ、車体を大きくリーンさせたダイナミックな走りでは減衰特性を高めて対応する。この二面性は、大陸でのロングツーリングを想定したアドベンチャースポーツモデルならではの特性だが、じつは日本での日常使いにもメリットがある。

 試乗車の車両重量は258kgと見た目より軽量ながら、ここに車両後方左右のパニアケースと、試乗車には装着がないが車体後方のトップケースに荷物を満載し、さらにタンデムシートにライダーを乗せた2人乗りでは350kgに迫る重量級に。ひとたび停車時にグラッときたら立ちゴケしてしまいそうだが、アダプティブ・ビークル・ハイト・コントロールによって、身長170cmの筆者であっても片足なら地面にべったり、両足でも踏ん張りがきく位置まで接地するので安心感がグンと高まる。

■1300cc水平対向エンジンの実力

 搭載する1300cc空冷/水冷併用水平対向2気筒は、145PS/149N・mを発揮する。トランスミッションは6速で、クラッチ操作なしにシフトアップ/ダウンが行える「ギアシフト アシスタント プロ」を装備する。肝心の乗り味はいい意味で低回転域での荒々しさがなくなった。3000回転付近からは4気筒エンジンに近い滑らかさが全面に出る一方で、ボクサーならではの鼓動もゆっくり流しているときには感じられた。価格は345万9000円。

 CE04は2022年4月から日本でも販売を行っている電動バイクだ。道路交通法上は普通二輪に属するため、普通二輪免許/AT限定普通二輪免許で乗れる。定格出力は法規のクラス上限である20PSだが最高出力は42PS、最大トルクは62N・mと400~600ccクラス並みなので、ともかく頼もしい加速力が得られる。一方、道路運送車両法では軽二輪に属するため車検は必要ない。

 CE04のようなシティコミューター的なBEVでは二輪/四輪車を問わず電費が注目される。1kWhでどれだけ走行できるのかという値だがCE04はカタログ値で12.98km/kWh(WMTC値)。一方、日産(三菱)の軽BEV(四輪車)である「サクラ」(ekクロスEV)は8.06km/kWh(WLTC値)。計測モードに違いがあるにせよ、CE04、サクラ & ekクロスEVともに、筆者による公道での試乗ではほぼカタログ値を示しながら走行できたので、効率のうえでは小さく軽い電動バイクが有利だ。

 CE04は2次バッテリー容量8.9kWhのリチウム方式で、AC6.4kW充電に対応する。一充電あたりの走行可能距離であるAERは130km、最高速度は120km/hで価格は209万3000円。なお、弟分として2次バッテリー容量を抑えたコンパクト電動バイク「CE02」(3.92kWhでAER96km)が2024年4月26日から125万円で発売された。

■ハーレーダビッドソンを身近な存在に「X350/X500」

 ハーレーダビッドソンは本国アメリカのみならず、オートバイのアイコン的な存在として世界で名高い。そのハーレーがミドルクラスの排気量(350ccと500cc)モデルを国内に導入した。X500には大型二輪免許が必要だが、X350は“普通二輪免許で乗れる初のハーレーダビッドソン”として話題となった。

 どの業界も老舗ブランドは新規ユーザー獲得のため新たな策を練っているが、ハーレーダビッドソンはこれまでの重厚なイメージとは異なるライト感覚で乗れる車両開発で勝負に出た。それが日本では免許保有者の多い普通二輪免許の保有層と重なったわけだ。とはいえ導入前は“ハーレーならではの醍醐味が感じられないのでは……”といった不安の声も聞かれたという。じつは筆者もその一人だった。

 ハーレーダビッドソンでは過去に車両価格97万5000円(当時)の「ストリート750」を国内導入した経緯がある。その名のとおり、排気量は750ccで大型二輪免許が必要ながら、一般的なハーレー各モデルと比較して半分の車両価格設定として新規ユーザーの獲得を狙った。しかし、肝心の動力性能に大きな特徴がなく残念ながらヒット作とはならなかった。

 そんなバックグラウンドを思い出しながらX350に跨がる。エンジン始動……。想像をはるかに超える元気なエンジンサウンドが耳に届く。走り出すと今度は乾いた排気音で高揚感がグッと高まった。もっともショートストローク型の並列2気筒で350ccだから、V型で大排気量の兄貴分が醸し出す力強さはないけれど、初めてハーレーに触れる若いライダーにはすんなり受け入れられるのでは、と感じられた。

 ライディングポジションはスポーツ色を濃くした方向でまとめられ、ハンドル位置こそ低くないが、ステップ位置はリーンイン走行を意識したバックステップ気味にとられた。フレーム上部はエンジンを抱え込むトラス構造として、タンクも薄型(13.5L)にすることで見た目の躍動感も高めた。

■500ccエンジン版になる「X500」

 続いてX500。単なる排気量違いかと思ったらライディングポジションがまったく異なる。ハンドルは若干高めで近く、ステップは前方低めに配置されているからゆったり乗れる。シートは厚めでシート高はX350の777mm→820mmへと高められ、タンク形状(13.1L)もX500専用に。大型二輪初心者にとって馴染みやすい車体構成だが、年齢を重ねたベテランライダーのダウンサイジングモデルとしてもピッタリに思えた。

 主要スペックはX350の約37PS/31N・m、車両重量195kgに対して、X500は約48PS/46N・mで208kgと、パワーとトルクは30~40%増しだが車両重量はわずか13kgの違いに過ぎない。ギア比は排気量なりにX500が小さいが、それでも各ギア段での加速力はX500が力強い。

 タイヤサイズは銘柄含めて2車共通。ただ、乾いた排気音はX350が数段上。しかも低いギア段で高回転域まで引っ張ったとしても法定速度だから安心感も高い。価格はX350が69万9800円、X500が83万9800円。

■トライアンフ「Rocket 3 Storm R」

 最後はトライアンフのRocket 3 Storm R。見た目から受けた第一印象は“ほぼエンジンのようなバイク”。直線での速さを競うドラッグレーサースタイルの過激な1台だ。搭載するのは直列3気筒2458ccエンジンで182PS/225N・m、車両重量は317kgを誇る。

 筆者は前身であるRocket Ⅲ(2004年)にも試乗していたが、こちらは同じ直列3気筒ながら排気量は若干小さく2294ccで142PS/200N・m。ただ、最新のRocket 3 Storm Rは過去のRocket Ⅲよりもあらゆるスペックが上まわっているのに、荒々しさはRocket Ⅲが際立っていた。スロットルを開ければドーンと加速、リーンさせるにもしっかりとしたニーグリップがないとフラついてしまう。

 その点、Rocket 3 Storm Rはクセが少ない。パワー&トルクともに力強いのに電子制御スロットルと、緻密なトラクションコントロール制御のおかげで極めてスムースだし、大容量の油圧クラッチもそれほど重くない。大型バイクに乗っているライダーならすんなり乗りこなせそうな印象だ。

 もっともこれは印象だけ。実際はものすごいマシンだった。スムースに加速しているなと感じたのは先の電子デバイスのおかげで、JAIA二輪試乗会のために持ち込まれた新車のRocket 3 Storm Rは、筆者が試乗した2日目最終枠の時点で、四輪のスポーツモデルが履くほど太い後輪タイヤ(240/50 R16 V)には早くも摩耗の兆候が見られた。もっとも4000回転で発する最大トルク225N・mを後一輪だけで受け止めるのだから無理もない。

 BMW、ハーレーダビッドソン、そしてトライアンフと多彩な輸入二輪車に乗り、四輪車以上にお国柄が表現され、ブランド哲学が貫かれているなと感じた。筆者は、16歳から二輪車に乗り続けているが、今回の試乗を通じ改めて安全に1日でもライダーを続けるためには体力維持が大切なのだと痛感。ヘルメットの顎紐をしっかり結んで、短距離であっても胸部プロテクターを装着し、これからもライディングを楽しんでいきたい。

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最終更新:5/16(木) 11:41

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