まるで「小さな北千住」?東武伊勢崎線の「久喜と鷲宮」に何があるのか 久喜はJR宇都宮線との乗換駅、鷲宮は?

3/13 4:32 配信

東洋経済オンライン

 東武スカイツリーラインに直通する地下鉄半蔵門線から電車に乗ると、その終着駅はだいたいが南栗橋駅か久喜駅だ。伊勢崎線・日光線が分岐する東武動物公園駅を越えて、日光線に入ると南栗橋駅、伊勢崎線は久喜駅へ。つまり、スカイツリーラインに乗って眠りこけてしまったら、南栗橋駅か久喜駅か、そのどちらかまで連れてゆかれてしまうというわけだ。

■JR宇都宮線との乗り換え拠点

 どちらも東京都心からおよそ50km。どうせ乗り過ごすなら、どっちがマシなんでしょう……。

 「それはまあ、久喜駅だと思いますよ(笑)」

 笑いながら答えてくれたのは、東武鉄道東武動物公園駅管区副管区長で久喜駅長を務める色川浩貴さん。寝過ごして南栗橋だったらどういう始末になるのかは別の機会に探るとして、やっぱりJR宇都宮線との乗り換え拠点でもある久喜駅のほうが、寝過ごしたとしても巻き返しのチャンスには恵まれているようだ。

 「タクシーもありますし、何より久喜市の中心ですからね。お客さまもなかなか多い駅で、東武動物公園以北の駅ではいちばん乗降人員が多いんです。改札の中にもスターバックスなどの店舗もありますし、改札外の通路にもいくつもお店が並んでいます。一日を通して、たくさんの人が行き来している駅だなあという印象ですね」(色川駅長)

 実際に久喜駅構内は色川駅長の言うとおりのにぎやかさ。いや、色川駅長の言葉から想像する以上に、それが立派な駅であることに驚かされる。

 東武の線路とJRの線路が並んでいるその上を橋上の駅舎が跨ぎ、傍らには新幹線の高架も貫く。橋上駅の自由通路はそれほど広くはないのに飲食店がひしめき、どの店をのぞいても結構な数のお客がくつろいでいる。

 平日の昼間でも人通りが絶えることはないし、どちらかのホームに列車が着けば、連絡改札を抜ける人も少なくない。ホームに降りても、たくさんの人が列車を待つ。もちろん、さすがに東京都心の山手線や地下鉄のように混み合っているなどということはないけれど、想像を遥かに上回る活気に満ちた久喜駅であった。

■通学で下り列車も混む

 「久喜はベッドタウンですからね。駅から離れたところには工業団地もあって、朝には送迎のバスも出ています。あとは……やっぱり学生さん。久喜駅をはじめ、このあたりの駅は朝の下り列車が学生さんですごく混むんです。とくに久喜駅では、JRと東武の乗り換えも多いですから、朝のラッシュ時は列車が着くたびにたくさんの人が行ったり来たりで、これはもうなかなかですよ」(色川駅長)

 東武動物公園駅を訪れたときも同じような話を聞いたが、久喜駅周辺にも複数の高校がある。それらに通う人、また東武伊勢崎線やJR宇都宮線の下り方面の沿線にも高校があるからそこに通う人もいる。朝の通学時間帯には沿線から学生たちが殺到する。久喜駅はまさにそうした通学路線の中枢というわけだ。

 久喜駅では日中、都心方面からやってきた急行はここで終着となって、向いのホームの館林方面への列車に乗り継ぐことになる。久喜駅の構内は、こうした乗り継ぎの役割も充分に果たしている。

 「昔は貨物を扱っていたので、構内が広いんです。いまは下りホームになっていますが、ちょうどそのあたりに貨物のホームがありました。貨物列車はここで東武からJRの線路に移っていたので、渡り線も設けられていたんですよ」(色川駅長)

■広い構内を活用した列車運用

 そう教えてもらったので、下りホームの端っこからJRの線路との間を眺めてみたが、もちろんもう痕跡は消えている。

 貨物列車が廃止されたのは2003年。下りホームは不要になった貨物エリアに新たに増設されたもので、それ以前はいまの上りホーム1面しかなかった。貨物の廃止とホームの増設が、いまの運転系統を実現し、久喜駅を都心からの列車の終着駅にしたのである。

 そんなにぎやかな久喜駅をあとにして、お隣の鷲宮駅に向かう。色川久喜駅長が管理しているのは、久喜駅のほかにこの鷲宮駅がある。2010年に久喜市と合併した旧鷲宮町の代表駅だ。

 「鷲宮駅はアニメ『らき☆すた』の舞台になったということで、一時期はずいぶんとたくさんのファンの方が来られました。聖地巡礼の先駆けですね。いまでもカメラを持ってこられる方はいます。また、駅の西側にはわし宮団地という昔ながらの大きな団地もあります」(色川駅長)

 鷲宮駅のホームは2面3線。ただし、中央の1線は線路が途中で途切れて車止めが設けられており、事実上2面2線。橋上駅舎から改札を抜けて西口に出ると……ちょっと変わった風景が広がっていた。駅の出口のすぐ先で、小さな川を渡る。駅前のロータリーは、橋の向こうにあるのだ。

■鷲宮駅周辺はお花見の名所

 駅の下り方(北側)で二手に分かれる青毛堀川の川沿いには桜の木が植えてある。

 駅西口のまだ桜の咲いていない川沿い(つまりそれは線路沿いでもあるのだが)を歩いて行くと、ほどなく踏切へ。踏切を渡った先には、鷲宮の町のシンボル・鷲宮神社が鎮座する。

 真っ赤な鳥居が印象的な立派なお社。鳥居の前には門前町が形成されていて、こちら側を流れる川沿いには見事な桜が咲き乱れていた。2月から3月上旬にかけて見頃を迎える河津桜だ。

 河津桜に見とれながら鷲宮神社の門前町を歩き、鷲宮駅の東口に向かう。西口を出てからほんの15分ばかりの小散歩。カメラを片手に散策している人の姿も見かけたが、「らき☆すた」ファンか、それとも鷲宮神社の参詣客か。

 いずれにしても、昔ながらの小さくも味わいのある町並みが、駅の周りに広がっていた。鷲宮駅東口には、そんな町の誇りのシンボルのように大きく構えた立派な駅舎が建っている。

■都心と北関東の分かれ目

 そして、再び久喜駅へ。のどかで、ちょっと昭和を感じさせてくれる鷲宮駅とはうってかわってターミナル。久喜駅は、運転系統もそうだし、実態としても“都心”と“北関東”の分かれ目という要衝の駅なのかもしれない。1899年に東武鉄道が最初に営業運転を開始した区間(北千住―久喜間)の終着駅でもある。

 色川駅長に、改めて久喜ってどんな駅ですか? と尋ねてみた。

 「北千住をぐっと小さくしたイメージです。乗り換えのターミナルでお客さまも多くて、構内にもお店がある。規模はまったく違うんですけど、なんとなく似ているなと思います」(色川駅長)

 小さな北千住と、懐かしさのある小駅。この組み合わせの久喜・鷲宮コンビ。都心からおよそ1時間。わざわざ足を運ぶ価値は、ありそうだ。

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最終更新:3/13(水) 8:17

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