小田急下北沢駅、地下化後も実は変わらない?「サブカル感」 駅はきれいになったが主張の強い案内サインなどにシモキタの雑多な迷路感が残る

5/15 4:32 配信

東洋経済オンライン

 小田急電鉄小田原線の快速急行で新宿駅から2つ目、乗車約7分で着く下北沢駅の周辺にはかつて「開かずの踏切」があった。個性的なファッションや音楽など、サブカルチャーの発信地として知られてきた「シモキタ」の雑多な街を代表する駅前風景だった。

 2013年3月、東京都を事業主体とする連続立体交差事業で小田原線が地下化されると、電車が走ることはなくなり、地上ホームとともに踏切は姿を消した。が、10年以上が経過した今でも、駅東口に立てば、まだその風景を思い浮かべることができる人は多いのではないだろうか。

■京王井の頭線との乗換駅

 渋谷と吉祥寺を結ぶ京王電鉄井の頭線との乗換駅としての一面もある。地下化された小田急線に対し、京王井の頭線はもともと高架を走る。井の頭線では渋谷駅から急行で1つ目、乗車時間は約3分。下北沢は新宿と渋谷を起点とする2つの私鉄路線の文化が交差する地点といえる。

【写真】シモキタの待ち合わせの定番だった駅前の「TSUTAYA」が懐かしい、地上ホーム時代の下北沢駅。線路が地下化されて「開かずの踏切」が姿を消した現在の駅周辺の様子。改札口や通路、ホームにある大量の案内サインが迷路のような雑多なシモキタを象徴しているかのようだ

 下北沢駅の2023年度1日平均乗降人員は11万8852人。小田急全70駅のなかでは本厚木(12万3159人)に次いで8位に位置する。

 成城学園前管区の細川詩織下北沢駅長は「下北沢はとくに定期外が多い傾向があります。小田急全線でみても、このような駅は小田原駅や片瀬江ノ島駅くらいなので、やはり『観光地の駅』なのだと思います」と語る。

 同管区の幸内圭副駅長も「シモキタは古着屋が有名で、お笑いや音楽関係のイベントがあることから若い人の利用が圧倒的に多いのが特徴です」と説明する。

【写真の続き】ホームは地下1階が各駅停車などの緩行線、地下2階が急行線。だが急行でも千代田線直通は地下1階に発着するので要注意。ここでしか見られない、関係者だけが知っている駅のバックヤードには何がある? 

■駅長が語るシモキタの街

 「私もお笑いとか音楽が好きなので劇場やライブハウスにたまに来てました。残念ながら閉店してしまいましたが『リアル脱出ゲーム』のお店にも」と話す細川駅長は2012年4月入社。人事部や交通企画部、海老名駅長を経て、2025年4月に着任したばかりだ。

 「シモキタは商店街の方がつねに集客を考えてくださっているので、駅のほうではイベントのポスターを貼るといった連携をしています」(細川駅長)

 駅前から商店街を抜け、茶沢通りを南下すると東急電鉄田園都市線・世田谷線の三軒茶屋駅。2024年9月には同じ管内にある経堂の駅前商業施設で小田急、京王、東急の3社合同による鉄道イベント「世田谷 鉄道フェスタ」を開催した。

 3社は2025年1月にデジタルパス「下北・三茶・下高まちめぐりパス」を期間・枚数限定で販売するなど周遊性向上の実証実験でも協力している。

 小田急下北沢駅の開業は小田原急行鉄道(当時)による小田原線誕生と同時の1927年4月1日。一方、井の頭線の下北沢駅は1933年8月1日、当時の帝都電鉄によって開業した。1940年、合併によって小田原急行鉄道帝都線となった。

 小田原急行鉄道は1941年に親会社との合併で小田急電鉄となり、1942年には東京急行電鉄(大東急)に統合された。戦後の1948年、分離独立によって新生小田急電鉄が発足。井の頭線は京王帝都電鉄(1998年に京王電鉄に改称)が運営する路線になった。

 現在の小田急下北沢駅は地上に改札口、地下1階と地下2階にそれぞれホームがある。2013年3月13日、連続立体交差事業によって地上から現在の地下2階へ線路が移され、下北沢を含む東北沢―世田谷代田間の踏切9カ所が廃止された。

 その後、2018年3月3日の複々線運転開始に伴い、緩行線用として地下1階ホームの使用が始まった。

【写真】線路が地下化され「開かずの踏切」が消えたが、まだまだ複々線化の工事が続いていた2016年当時の下北沢駅。地下1階緩行線の工事中の様子を見る

■2層になったホーム

 地下2階が急行線で1番ホームに小田原・片瀬江ノ島方面、2番ホームに新宿方面の急行・快速急行が停車する。地下1階は3番線に小田原・片瀬江ノ島方面、4番線に新宿方面の各停と代々木上原から東京メトロ千代田線に直通するすべての種別が発着する。

 千代田線は綾瀬から先でJR常磐線(各駅停車)と相互直通運転をしており、柏や我孫子、取手といった千葉県や茨城県内の駅を行き先とする電車をみることができる。早朝と深夜はすべての列車が地下1階ホームに発着する。

 地下2階の線路部分はシールド工法による円形トンネル、地下1階は開削工法による箱型トンネルで形状が違うほか、完成時期にも差があるため、同じ駅ながらホームの趣が異なる。小田急は地下2階をオレンジ、地下1階を青に色分けしたサインで案内をしている。

 地上1階には南西口と東口の改札をまっすぐ結ぶコンコース。2019年3月に小田急と京王それぞれに「中央口」が設けられるまでは改札内で乗り換えができた。

 コンコースは天井から太陽光を採り入れる構造で明るい印象。小田急に関わりが深かった故・宮永岳彦氏の原画をもとにした壁面の陶板レリーフが出迎える。「箱根そば」の店舗は、入り口は目立たないが改札の中と外のどちらからも利用できる。

 小田急が地上を走っていた東北沢―世田谷代田間の線路跡地には「下北線路街」が誕生。カフェや飲食店だけでなく、保育園から温泉旅館まで多種多様な施設が連なる。下北沢駅の2階部分には商業施設「シモキタエキウエ」がオープンした。

 2022年3月には京王井の頭線の高架橋下に商業施設「ミカン下北」が開業した。京王電鉄は発表資料で「多様な文化が交差し、絶えず自由に編集され、変わり続ける、つまり“常に未完である”ことに下北沢の普遍的な魅力を見出し、未完ゆえに生まれる新たな実験や挑戦を促す想いから、『ミカン下北』としました」と名称の由来を説明している。

 一方、2025年1月31日には三省堂書店も入っていた「ピーコックストア下北澤店」が建物の建て替えに伴い閉店。駅周辺の変化は続く。

■サブカル聖地の玄関口らしい? 

 小田急の下北沢駅の改札口では京王井の頭線との誤乗を防ぐため、「小田急線専用改札口」「Odakyu Line ONLY」「ここは小田急線の改札口です」といった駅名看板よりも大きなフォントで注意を呼びかけるサインが目立つ。

【写真をすべて見る】地上ホーム時代の下北沢駅。線路が地下化された後も複々線化の工事は続いた。そして生まれ変わった現在の駅。サブカルの聖地として人を引き付けるシモキタの玄関口の役割は変わらない

 小田急へは水色、京王へはピンク色の大きな矢印で誘導する。小田急の改札を入っても地下1階の目印は青色、地下2階はオレンジ色とカラフルだ。ホームでは電車通過時の強風への注意喚起が随所に。駅舎がきれいでオシャレになっても、こうした雑然さがどうしても残ってしまうところがサブカルの聖地シモキタの玄関口らしいと言えるのかもしれない。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:5/15(木) 4:32

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

日本株ランキング