日本で最も空き家率が低いのは埼玉、5年で住宅数5%増加も需要底堅く《楽待新聞》
空き家の増加が続いている。全国各地で空き家の活用が行政上の課題とされている一方、空き家市場に外国人が参入するなど、空き家が投資物件として検討される機会も増えてきている。
今回は、2024年9月に確報集計結果が公表された、総務省の「住宅・土地統計調査」(2023年10月実施)をベースに現状を把握していく。
そもそも住宅数はどのように推移していて、その中で空き家となっているのは何割ほどなのか? 都道府県別の結果から、それぞれ上位・下位を出してみた。投資エリアを検討する一助になれば嬉しい。
■全国には900万戸の空き家が
「住宅・土地統計調査」は、1948年以来、5年ごとに行われており、住宅や世帯に係る基本的な項目を集計した結果がまとめられている。総住宅数や空き家数、住宅の構造・規模などが項目の一例だ。
調査結果によると、2023年10月1日現在、全国の総住宅数は6504万7000戸で過去最多となった。2018年と比べ、4.2%(263万9000戸)の増加だ。1973年からの50年間で総住宅数は約2倍となっている。
ただ、その増加率は徐々に小さくなっている傾向にある。1973年には20.4%と大幅な増加だったのに対し、2018年からは5%を割り込んでいる。
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こうした中で、空き家数も同様に右肩上がりに増加している。2023年の結果では900万2000戸と、過去最多となった。2018年(848万9000戸)に比べて51万3000戸増加している。
また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年から0.2ポイント上昇し、過去最高を記録した。
1978年時点の空き家数は267万9000戸で、45年間で3倍以上に増加している。空き家率も高まっており、1978年は7.6%だったところから、1998年に10%を超えて11.5%に、2023年には13.8%にまで上昇した。
現在は、住宅100戸のうち約14戸、10戸に1戸以上が空き家ということだ。そう考えると、空き家の多さが深刻な問題であることをより認識できるだろう。
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空き家については、その種類を(1)賃貸用の空き家、(2)売却用の空き家、(3)別荘などの二次的住宅、(4)それ以外の空き家(転勤・入院などで長期にわたって居住者不在の住宅、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅、など)に分類している。
空き家数のうち、賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた空き家は385万戸となっており、2018年の349万戸を上回って過去最多となった。持ち家でありながら、純粋に居住者がいない空き家が増加しているということだ。
また、建物種別を見ていくと、戸建てが352万3000戸(空き家総数に占める割合は39.1%)、共同住宅が502万9000戸(同55.9%)となっている。
これを空き家の種類別に見ると、戸建ては「賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた空き家」が最も多く、285万1000戸(80.9%)となっている。一方、共同住宅では「賃貸用の空き家」が最も多く、394万7000戸(78.5%)となった。
つまり、共同住宅の空き家は賃貸物件としての空室が大半だが、戸建ては居住する人がいなくなってしまった空き家が大多数を占めている。高齢化や人口減少などにより、所有者不明の空き家が増えているのは、主に戸建てで起きている問題なのだろう。
■空き家率が最も高いのは徳島県、では最も低いのは?
全体の傾向を掴めたところで、次は都道府県別の動きを見ていこう。
5年間の総住宅数の増加状況を見ると、増加率が最も高かったのは沖縄県だった。沖縄県は、昨年まで人口増加が続いていた数少ない自治体だ。
上位10自治体には東京都、神奈川県、大阪府などの大都市が多く入ったほか、滋賀県、福井県、栃木県などの地方都市もランクインしている。
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一方で、秋田県、高知県、長崎県、青森県はいずれも総住宅数が減少しており、岩手県は横ばいとなっている。
総務省の人口推計を見ると、これらの地域は人口減少率も高い。総住宅数の推移は、ある程度は人口推移と近しい動きをすると見て良いだろう。
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全国的には人口減少が進む中、都市部への人口集中は加速している。それに伴って住宅需要も堅調となり、大都市圏では総住宅数の増加が続いているのだろう。
しかし、空き家数の上位には、東京都の89万7000戸を筆頭に、首都圏や大都市圏の自治体が顔を揃えている。これらの地域はそもそも住宅数が多いため、必然的に空き家数も多くなるものと考えられる。
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では、空き家の総数ではなく「空き家率」ならどうか。
最も空き家率が高かったのは徳島県の21.3%だった。和歌山県、鹿児島県、山梨県、高知県と続き、いずれも20%を超える空き家率となった。徳島県、和歌山県、高知県は人口減少率も高い。
一方で、空き家率が最も低かったのは埼玉県で、9.3%だった。神奈川県、東京都、愛知県などの大都市圏が続いており、ここからも住宅需要の底堅さがうかがえる。
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最後に「賃貸・売却および二次的住宅を除く空き家率」を都道府県別に見ていこう。賃貸などの空室ではなく、単に住む人がいなくなってしまった空き家はどこに多いのか。
最も高い数値を記録したのは、鹿児島県の13.6%だ。以降は、12%台となった高知県、徳島県、愛媛県、和歌山県が続く。全体の空き家率が高かった自治体とおおむね同じだ。
最も低い数値を記録したのは東京都の2.6%で、鹿児島県とは11ポイントの差となった。そして神奈川県、埼玉県と続いており、人口や住宅数が多い地域は、持ち家の空き家化がそれほど大きくは進んでいないと見受けられる。
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首都圏や大都市圏では、新しい住宅ができたり、あるいは空き家が発生したりしても、強い住宅需要によって次の居住者が見つかるのだろう。郊外や地方圏からの人口流入も続き、さらに住宅が増えるという循環が働いているものと考察される。
特に近年では、日本家屋やその周辺環境に価値を見出し、外国人がマイホームやセカンドハウスとして空き家を購入する例も出てきた。
空き家の中には、投資物件として再活用できる優良なものもあるだろう。購入物件を探す際に、選択肢の1つとして空き家を検討してみてはいかがだろうか。
鷲尾香一/楽待新聞編集部
不動産投資の楽待
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最終更新:11/10(日) 19:00