東大教授が教える「独学で学び直し」ポイント3つ 「知識吸収型の勉強」だけでは役に立たない

3/20 8:02 配信

東洋経済オンライン

日々のニュースで「リスキリング」が注目されるなか、学校に通うのではなく、独学で学び直しをしたいというニーズもあるでしょう。大検→慶應通信部→東大院と異色の経歴を歩む、東京大学経済学部教授の柳川範之氏が上梓した『東大教授がゆるっと教える 独学リスキリング入門』を一部抜粋・再構成し、年齢、世代を問わない独学での学び直しを紹介します。

■日本の学校教育は手取り足取り

 今回の記事では、日本の学校教育の特徴を整理して、「大人の勉強」におけるポイントを考えることにしましょう。

 日本の学校教育は、かなり手取り足取りです。よくできた教科書と問題集が用意されていて、「要点は以下のとおり」とか「この問題に答えられますか」と、とても親切です。

 その反面、「受け身の勉強」になりがちです。「考えるべき部分はここで、覚えるべき部分はここです。他は必要ありません」となれば、効率的なように見えて、本当の意味での学びにはなかなかならない。こうした勉強のやり方では、大きな思考の発展や新しいアイデアが生まれにくくなるのです。

 そこに日本の学校教育の課題があると思います。海外の小中学校では、自分で考えさせたり意見を言わせたりするトレーニングに重点を置く国も少なくありません。

 日本でもだいぶ変わってきたとは言われますが、小中学校のどこかの段階で、もっと自分で考える勉強をしっかり身につける、その必要性を感じています。教科書を読むときも、その中から自ら問いを見つけ出すような、教科書と「ケンカ」をするくらいの読み方をしていかないと、一生モノの深い勉強にはならないのです。

 多くの方々が、そうした環境で学んできたので、大人になった今でも「勉強とは、何かを教わって知識を吸収すること」だと思っている人が少なくありません。

 しかし現代では、知識というものはインターネットさえ使えば小学生でも手に入れられます。仕事もしかりで、知識さえあればできる仕事では、簡単にコンピュータに負けていきます。知識吸収型の勉強だけでは、役に立たないのです。

■大人の勉強3つのポイント

 「大人の勉強」は、このような「子どもの勉強」から脱皮しなければいけません。知識プラスアルファの何かを生み出せるか、が仕事では問われるものだし、仕事だけではなく広い意味での社会生活や、人生をより良く生きていくためにも大切なことだと思います。

 この点も踏まえると、「大人の勉強」のポイントは、知識を単に覚えることに終始するのではなく、以下の点に注意して、自分の頭で考える工夫をすることでしょう。

①自分の経験や知見を整理すること
②好奇心や目的意識を呼び起こすこと
③時間がないことを前提にすること
 大人と子どもの大きな違いは、社会経験の長さです。ですから①に挙げられているように、そこで得られた経験や知見をしっかり整理して一般化させることが、リスキリングや大人の勉強の大きなポイントです。

 ②は、子どものときのように、明確なゴールがないことから生じているポイントです。大人でも資格試験勉強のように、明確な勉強の目標が存在する場合もあるでしょう。

 しかし、多くのリスキリングがそうであるように、はっきりとした目標はないものの、漠然と勉強したい、スキルアップをしたいと思っているケースも少なくありません。その場合には、勉強したいモチベーションを高めるための工夫、とくに好奇心を呼び起こす工夫が必要になります。

 とはいっても、ほとんどの社会人にとって、しっかりとした勉強を続けることは、時間的に難しい場合が多いのが現実です。ですから、そもそも時間がないことを前提にした③のポイントが重要になります。

 以下では、これらのポイントをもう少し深掘りしていきましょう。①で挙げた、自分の経験や知見をふり返って整理することの重要性は、本書の他の箇所でも述べてきたとおりです。

 若いときの勉強は、新しい知識をどんどん取り入れる作業が主体で、経験を基にして体系づけることがそもそも難しいです。それに対して、ある程度の時間を社会で過ごしてきた40代や50代、60代の人にとっては、自分の持っている経験や情報をいかに整理するかということが、勉強のひとつのポイントになります。

■自分の経験を一般化・抽象化してみる

 けれども、多くの人がそういう作業をあまり勉強だと思っていないようです。これは、たとえて言うと、せっかく武器を持っていても、倉庫の中にぐちゃぐちゃに入っているようなものです。これでは、戦おうと思っても適当な武器がすぐに出てきません。けれども、きちんと棚に整理しておくと、それらは使える武器になります。

 今までの経験もそれと同じです。これを少し整理しておくと、新しい仕事に直面したり転職に踏み切ったりするとき、今までの経験を活かすことができるようになります。

 整理する方法としては、できるだけ自分の経験を「一般化・抽象化」してふり返ってみることによって、経験が頭の中に整理されて、立派な使える武器になります。

 その際に、役立つのは、何かの学問と自分の経験とを関連づけることです。でも、今まで専門的な仕事をしてきた人を除けば、自分のやってきたことが、どんな学問と関連づけられるのかが、よくわからないかもしれません。 

 そもそも何かの学術書を読むというのは、とてもハードルが高そうで、なかなか手が出せないという人も多いことでしょう。そこで、ポイント②の好奇心や目的意識を呼び起こすことが重要になってきます。

 どれだけ立派な本を読もうと計画を立てても、それを実行するモチベーションがあがらなければ、忙しい中ではなかなか学びは進みません。このあたりが、受験勉強を前提とした子どもあるいは学生の勉強との大きな違いです。

 ですから、できるだけ好奇心が持てるもの、自分の問題意識と合致していそうなテキストを探すことが重要になってきます。

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最終更新:3/20(水) 8:02

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