「サイゼが潰れたら喜ばしい」創業者が語る真意 「世の中が良くなることは、すべて最高だ」

5/12 10:21 配信

東洋経済オンライン

サイゼリヤが潰れる=サイゼリヤより、「安くておいしい」料理を提供する企業が出てきたということ。「競合他社に負けそう」という思いは、お客様のことを一切考えていない、自分中心な考え方である。世の中が良くなるのであれば、自分が選ばれなくてもいい。この「人のため」精神を持って突き進んでいくと、目標はおのずと達成する。なぜならば、見えない力があなたを守り、加勢してくれるからだと著者は語る――。
※本稿は、正垣泰彦『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?』の一部を再編集したものです。

■サイゼリヤがつぶれたら、それは喜ばしいこと

 私は「サイゼリヤなんてなくなってもいい」と思っています。倒産して、サイゼリヤという名前がこの世から消えても、私はかまいません。

 形あるものは必ずなくなる。歴史から見ても明らかです。

 もし将来サイゼリヤがなくなるとしたら、サイゼリヤよりも安くておいしい料理を出す企業が出てきたからでしょう。

 それは「この豊かな食事を、日本の多くの人たちに楽しんでもらいたい」という私たちが叶えられなかった夢を、ロマンを、別の企業が叶えてくれたということ。

 お客様の目線で考えてみてください。おいしく豊かな外食の体験を享受できるなら、どこの企業のおかげでもいいはずです。

 安くておいしい料理が食べられることは、このうえない幸せですから、世の中は確実に良くなっています。それは、この社会全体という視点で見れば、間違いなく「良いこと」です。

 もしあなたが「競合他社に負けそう」「後輩に抜かれそう」などと不安を感じているなら、それは自分中心になっている証拠です。

 「その思いは人のためになっているか?」と、自分に問いかけてみてください。

 競合他社のほうが顧客に価値を提供できているなら、それはいいことです。後輩のほうが、会社や仲間のために貢献してくれているなら、それは喜ばしいことではありませんか。

 「どうぞ、優れたほうを選んでください」

 人のためを願うなら、そんな謙虚な気持ちになれるはずです。

 すると、欲で曇っていたあなたの目は晴れていきます。お客様が何を望んでいるか、はっきり見えてくるでしょう。謙虚な気持ちになれたからといって、あなたが選ばれるとは限りません。それでも、不安でいっぱいだったあなたの心は調和へと向かい、少しは穏やかになっているはずです。

■失敗しても、反省して、またやり直せばいい

 あなたがこの世界と調和して、正しい方向にエネルギーが循環し始めると、不思議なことに、すべてが味方してくれるようになります。

 何かに導かれているかのように、新しい出会いがあったり、思いがけない出来事が起こったり、「最悪」が「最高」に転じたり……。予想外の方向に、状況が開けていくこともあるかもしれません。

 それでも、あきらめたくない。そんな気持ちがあふれてきたなら、まず真っ先にしてほしいことがあります。

 まずは、結果を謙虚に受け止めること。望ましくない結果が出ているとき、必ずあなた自身に原因があります。きっと努力が足りなかったのでしょう。

 「自分たちは、安くておいしい店をつくれなかったから、他社に追い抜かれてしまったのだ」と反省すればいいだけです。

 もし再挑戦したいのなら、より喜ばれる店を目指して反省し、もう一度頑張ればいいのです。やり直すチャンスは、いくらでもあるのですから。

 サイゼリヤでは、1年間に全店長の5%が店長の補佐に戻ります。店長としてのリーダーシップ能力が不十分で、評価基準に満たなかったのです。

 しかしその後、店長補佐から再び店長に復帰する人が多数存在します。そんな「3歩進んで2歩下がる」ようなプロセスを経た人には、共通して大きな特徴があります。

 それは、人として大きく成長しているということ。

 昔の仕事の進め方を反省しているため、前とは違って格段に仕事の質が上がっています。また、仕事ができない人たちの気持ちが手に取るようにわかるため、良い指導もできるのです。

 それは、自分を省みるかけがえのないチャンスです。挫折したことがない人にはないものを持つ希少な人材に、価値がないわけがありません。

 実際に、店長の補佐が集まるアシスタント会議では、元店長らに、こんな声がけをよくしています。

 「あなたたちは将来、社長や役員になれるから、頑張ってほしい。期待している」

 それは、うわべの優しさや温情などからくる叱咤激励ではけっしてありません。

 過去の経験則をもとに、事実を伝えているだけなのです。そのときの能力が同期に及ばないことで悩んでいる人は、少なくありません。でも、それは長い目で見ると「微差」です。気に病むことなどありません。

 人が成長するには、時間がかかります。すべての経験や「つながり」を生かしていけば、大丈夫。

■油断禁物、「努力」は続けることが大切

 どのような立場に置かれようと、「人のため」を第一にコツコツ頑張り続ければ、年齢を経てから能力が向上することは間違いありません。というのも、一度でも辛酸を舐めたり、不遇な時期を経験した人は、慢心とは無縁で、後から強くなれるからです。

 反対に、持ち前の要領の良さや時の運などで過大評価され、油断した人が、30代、40代を過ぎて伸び悩んだり、風向きが悪くなったり、何らかの理由で突然失脚する、というケースはよくあります。うまくいっている人ほど、ウサギとカメのたとえ話のように、油断せず努力することが大切です。

 私に言わせれば、順風満帆の人より、挫折の最中にある人のほうが、はるかに幸せで、恵まれています。

 なぜなら、反省という大きなチャンスを与えられているからです。

 私は、反省とは幸せに至る唯一の道だと考えています。

 自分が今、正しい方向に向かっていることを確認し、その喜びをかみしめる。そして、「自分中心」から「人のため」へと、考え方を軌道修正していく、ただ1つの方法だからです。

 反省のない人生に幸せも実りもありません。

 左遷されても、クビになっても、会社が倒産しても……どんな最悪に思えることも、すべては反省の材料にすることができます。最高のことが起こっているのです。

■与えられた課題はありがたく受け取る

 失敗して、「自分中心」になってしまっていたことを反省し、もう一度「人のため」と奮起したとき……、その純粋な気持ちに水を差すかのように、さまざまな問題が出てくるかもしれません。

 「お客様のために、一生懸命動いているのに、なぜこんなに問題が起こるんだ?」

 「失敗から学んだと思ったのに、一難去ってまた一難……」

 せっかくの思いが、削がれるような気持ちになるかもしれません。

 でも、問題が出てきたら、しめたもの。本当の幸せまで、あと少しです。そこでしっかりと踏みとどまってください。なぜなら、その課題は「過去のあなた」が蒔いた種だからです。

 過去のあなたの行動の結果、反省しなければいけないこと。

 過去のあなたの行動の結果、後始末しなければいけないこと。

 それらが、時を経て押し寄せてきているだけなのです。そんな時差(タイムラグ)が生じてしまうのは、仕方のないこと。

 なぜなら、それはあなたが最も進化できて、最もあなたのためになる最高のタイミングで、満を持して、起こっているからです。

 いつ、どんな形で目の前に現れたにせよ、それはあなたに与えられた課題です。どうせ逃れられないのですから、気持ちを切り替えて、ありがたく反省材料として受け取って、その課題をやり終えてしまいましょう。

 反省しながら逃げずに頑張っていけば、やがて困難も困難ではなくなり、「人の役に立てる」という喜びが心から湧き出てきます。楽しくて仕方がなくなってきます。

 そのまま「人のため」という動機に突き動かされて進んでいくと、目標がおのずと達成されていきます。

 不利な条件がいつのまにかクリアされていたり、頼れる仲間が増えたり、社会情勢が味方してくれたり……。「つながり」の中で調和していくことで、〝見えない力〟があなたを守り、加勢してくれるのです。

 さまざまな形で、現実が動き始めていくことでしょう。

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最終更新:5/12(日) 10:21

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