1月になり、確定申告の準備が本格化する時期が近づいてきました。
年金を受け取る方にとっては、手元に届く「源泉徴収票」を確認しながら、今年は申告が必要なのかどうかを判断する大切なタイミングでもあります。
一方で、年金は満額がそのまま振り込まれるわけではなく、税金や社会保険料が差し引かれた金額が受け取れる仕組みになっています。
天引きされる費用にはさまざまな項目があり、家計管理の面でも仕組みを理解しておくことが重要です。
この記事では、年金から税金や保険料が差し引かれる理由、確定申告が必要かどうかを判断する基準、注意すべきケースについてわかりやすく解説します。
年金生活の安心につながる基礎知識として、ぜひ確認しておきましょう。
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年金から税金や保険料が差し引かれるのはなぜ?
老後に受け取る公的年金は、生活を支える大切な収入です。ただし、実際に振り込まれる金額は「満額」ではなく、税金や社会保険料が差し引かれた後の金額となります。
住民税は、地域の行政サービスやインフラ整備を支えるための財源であり、現役世代だけでなく年金受給者も負担の対象です。
そのため、一定の条件を満たす場合、住民税は年金から直接差し引く「特別徴収」という方法で納める仕組みが採られています。
●なぜ住民税は「年金から天引き」されるのか
年金から住民税を差し引く仕組みは、受給者と自治体の双方にとって負担を軽減する目的で設けられています。
年金支給のタイミングにあわせて自動的に納付されるため、金融機関や役所へ出向く必要がなく、支払い忘れも防げます。
自治体側にとっても、徴収漏れを防ぎやすく、事務手続きの効率化につながる点がメリットです。
こうした理由から、一定年齢以上の年金受給者については、住民税を年金から直接徴収する方法が一般的となっています。
●年金から差し引かれる主な項目
年金から天引きされるのは住民税だけではありません。受給者の状況に応じて、次のような費用が差し引かれます。
・介護保険料
・国民健康保険料(税)
・後期高齢者医療保険料
・住民税
・森林環境税
老後の家計を考える際は、「年金額=手取り額」ではない点を理解しておくことが重要です。どの費用が差し引かれているのかを把握しておくことで、資金計画も立てやすくなるでしょう。
次は、年金受給者と関わりの深い「確定申告」について見ていきます。
【2026年2月16日からスタート】年金受給者は確定申告が必要?
通常、公的年金等は「雑所得」として課税対象となっており、一定金額以上の所得を得ている場合は確定申告を行って税金の過不足を精算する必要があります。
しかし、年金受給者の確定申告手続きに伴う負担を減らすため、公的年金等に係る「確定申告不要制度」が設けられています。
確定申告不要制度の対象になるのは、以下の2つの条件を満たす場合です。
・公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下かつその公的年金等の全部が源泉徴収の対象
・公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
なお「公的年金等」には、国民年金や厚生年金に加え、共済組合から支給を受ける老齢年金や恩給(普通恩給)などが含まれます。
公的年金等に係る雑所得以外の所得
出所:国税庁「公的年金等を受給されている方へ」
「公的年金等に係る雑所得以外の所得」は、生命保険や共済などの契約に基づいて支給される個人年金、給与所得、生命保険の満期返戻金などが該当します。
確定申告の要否は「公的年金等の源泉徴収票」で確認しよう
2025年分に支払われた年金額や源泉徴収された所得税額等は、例年1月中旬頃から順次発送される「令和7年分 公的年金等の源泉徴収票」にて確認できます。
国民年金と厚生年金の合計額が400万円以内であれば、確定申告不要制度の対象となります。
公的年金だけで400万円以上を受け取る方はごく少数なので、他に収入がなければ確定申告不要制度の対象となるケースが大半でしょう。
では、実際に年金を受け取っている現代シニアは、どのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。
次項にて、公的年金の平均月額と受給額ごとの受給権者数を見ていきます。
【厚生年金・国民年金】平均月額と受給額ごとの受給権者数
下表にて、厚生年金と国民年金の平均月額と、受給額ごとの受給権者数を見てみましょう。
※厚生年金の金額は、基礎年金部分を含む
●国民年金の平均月額と受給額ごとの受給権者数
・全体 5万9310円
・男性 6万1595円
・女性 5万7582円
●厚生年金の平均月額と受給額ごとの受給権者数
・全体 15万289円
・男性 16万9967円
・女性 11万1413円
※国民年金部分を含む
厚生年金と国民年金の平均月額は、それぞれ15万円台、5万円台となっています。
また、厚生年金の実際の受給額は「1万円未満から30万円以上」まで幅広く分布しており、個人差が大きいのが特徴です。
「月額30万円以上」の年金を受け取っている人はごくわずかであり、他に収入がなければ多くの方が確定申告不要制度の対象となります。
【注意】確定申告不要制度の対象者でも申告が必要になるケースも
確定申告不要制度の対象者であっても、状況によっては申告が必要になる場合があります。
例えば、住宅ローン控除や医療費控除、雑損控除などを受けて所得税の還付を受けたいときは、確定申告が必要です。
また、所得税の申告が不要でも、控除を適用したい場合や年金以外の所得がある場合には、住民税の申告が必要になることがあります。
このほか、年の途中で退職して年末調整を受けていない人や、ふるさと納税でワンストップ特例を利用していない人も、確定申告が必要です。
確定申告不要制度に該当していても、「申告しなくてよい」とは限らない点に注意しましょう。
まとめ
年金から税金や社会保険料が差し引かれる仕組みは、支払いの負担を軽減し、自治体の事務処理を効率化するために設けられています。
差し引かれる項目を理解しておくことで、実際の「手取り年金額」が把握しやすくなり、老後の家計管理にも役立ちます。
また、確定申告不要制度の対象であっても、医療費控除や住宅ローン控除などを受ける場合には申告が必要になることがあります。
収入状況や控除の有無によって必要な手続きが変わるため、毎年送付される源泉徴収票を確認しながら、自分に必要な申告を判断していきましょう。
参考資料
・国税庁「年金受給者の皆様へ」
・日本年金機構「令和6年分 公的年金等の源泉徴収票」
・政府広報オンライン「ご存じですか? 年金受給者の確定申告不要制度」
・厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・国税庁「公的年金等を受給されている方へ」
加藤 聖人
最終更新:1/15(木) 20:25