使えると便利!東大生が教える「片手で31まで数える」方法 知ると視野が広がる「n進法」の興味深い世界

3/28 9:32 配信

東洋経済オンライン

数学を使った世の中の仕組みを知ることで、物事を見る視野が広がります。現役東大生の永田耕作さんが数学の魅力について解説する連載『東大式「新・教養としての数学」』。今回は「n進法」について解説します。

■思い出してほしい「2進法」のロジック

 今回は、まずこちらのクイズから考えてみましょう。

問題:片手を使って数えられる数はいくつまでですか? 
 いかがでしょうか。おそらく多くの方は「5」だと考えるでしょう。実際にこの数え方を使ってものを数えたり、何かを表現したりすることもあると思います。

 しかしこの問いを僕の周りの東大生に投げかけると、「31」や「32」と答える人が現れるのです。これは驚きですよね。

 この「31」や「32」はどのようなロジックで導き出されているのか。ここに中学校や高校の数学で習う「2進法」という数字の考え方が隠されているのです。

 2進法とは0と1だけで数を表す記法のことで、それによって表された数を2進数と呼びます。コンピューターの電子回路などで使われているため、その名前を聞いたことがあるという人も多いでしょう。

 2進法で表された数は「101」、「1001110」などのように、0または1の数が各位で連続することになります。2進数での数の数え方を小さいものから順に考えると、次のようになります。

■10進法 → 2進法
0 → 0
1 → 1
2 → 10
3 → 11
4 → 100
5 → 101
6 → 110
7 → 111
8 → 1000
9 → 1001
10 → 1010
 0と1しか使えないため、1の次に大きい数は「2」にはならず、位がひとつ増えて「10」になります。

 同じ要領で進めていくと、1を1番目とした際の10番目の数は「1010」の4桁で表されることがわかります。

 ちなみに、われわれが普段当たり前に使っている数の数え方は「10進法」と言います。これもいくつかの数の記法のうちの1つでしかないのです。0から9までの10種類の数を使ってものの大小を表しているので、10進数となります。

 話を戻しましょう。ここまで説明した2進法の考え方を応用すると、片手でより多くの数を表すことができるのです。

 親指から小指までの5本の指において、それぞれ指を「開いている」状態と、「折っている」状態の2種類が存在します。

 この2種類にそれぞれ「開いている」場合は「0」、「折っている」場合は「1」というふうに2進法の数を対応させます。そして「親指だけを折っている状態」を「1」、「人差し指だけを折っている状態」を「10」というふうに2進数で表してみましょう。

 すると、それぞれの指に対して2種類の状態があるため、片手の5本の指の状態は2の「5乗」で32通り存在することがわかります。よって、「1から32まで」、あるいは「0」を含めて「0から31まで」の数字を数えることが可能になるのです。

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 いかがでしょうか。5本しかない指を用いても、指の状態を2進法に生かすことによってより多くの数を数えられるようになります。数学の数の考え方は、このような意外な場面で生かされているのです。

■普段使っている「10進法」の弱点

 さて、この「2進法」や「10進法」という数の記法はまとめて「n進法」と呼ばれています。このn進法に関しては数学用語だと思っている人も多いと思いますが、実は日常のあらゆる場所で用いられているのです。

 まず、われわれが一番自然に使っている数の表し方が、先ほども説明した通り「10進法」になります。10をひとまとまりとする考え方で、一説によるとこれが一番強く根付いたのは両手の指の数が合わせて10本であるから、ともいわれています。

 しかしこの「10進法」には弱点があります。それは、「分割しにくい」ということです。

 10個のお菓子をグループのメンバーで分けるシチュエーションを考えてみてください。人数が3人でも、4人でも割り切ることができません。10という数字は1とその数字以外の約数が2と5しかないため、分割にあまり適していないのです。

 この弱点を補うように、もう1つ使われている数の数え方が「12進法」です。理由はシンプルで、12は3でも4でも割り切ることができるからです。これはあまり聞きなじみがない人が多いと思われますが、これも世の中のさまざまな場面で使われています。

 まず代表的なものが、月日や時間の考え方です。午前午後はそれぞれ12時間のひとまとまりになっていますし、1年は12カ月とこれも「12」という数字が用いられています。それ以外にも、おひつじ座やおうし座などの12星座、子、丑、寅、卯…とみんなが唱える十二支など、「12」はあらゆる場面で登場する数字です。

 12は約数が「1、2、3、4、6、12」ととても多く数字を分割しやすいため、主に時を表す際に10進数よりも多く使われていることがわかります。

■英語が13から「~teen」とつく理由

 このように12進法を日常生活で用いているのは、もちろん日本だけではありません。海外でも、1ダースが12個、1グロスが12ダース、1フィートが12インチというように、数え方の単位に「12」がたびたび登場しているのです。

 「11」「12」は英語でそれぞれ「eleven」、「twelve」と言います。しかし、「13」は「thirteen」、「14」は「fourteen」です。これに違和感を抱いたことはありませんか?  基本的に10台を表す英語は「〇〇teen」であるのに、11、12だけは例外なのです。ここにも、12進法の考え方が反映されていると言われています。

 数を表す言葉が「one、two、three、four、five、six、seven、eight、nine、ten、eleven、twelve」の12種類で、13種類目はないため、「teen」という新しい末尾をつけて表現しているのです。このように考えると、むしろ世界のほうがより12進法の考え方を用いていると言ってもいいでしょう。

 ここまで「n進法」の考え方について、いくつかの具体例を挙げて紹介してきました。最後に、この「n進法」がビジネスやテクノロジーにはどのように役立っているのかを解説します。

 皆さんは「バイト」という単位を聞いたことはありますか?  おそらく、キロバイト(KB)、メガバイト(MB)、ギガバイト(GB)という言葉になじみがある人が多いでしょう。ここで登場する「キロ」や「メガ」といった言葉は数の大きさを表す接頭語です。

 この「バイト(Byte)」は、コンピューターなどにおいて扱うデータの量を表す単位です。今皆さんはパソコンやスマホ等の情報端末を用いてこの記事を読んでいると思いますが、この文字情報もデータの一種であり、文字1文字(正確に言えば半角英数文字1文字)のデータ量が1バイトと定義されています。

 ちなみに、1キロメートルは1000メートルですが、コンピューターの世界では2進法が使われているため、1キロバイトは1000バイトではなく2の10乗の1024バイトと換算されます。同様に、1024キロバイトで1メガバイト、1024メガバイトで1ギガバイトというふうに、2の10乗を一区切りとして単位が変わっていきます。

■最小の単位は「ビット」

 ちなみに、1バイトという単位も実は最小単位ではありません。

 1バイト(Byte) = 8ビット(bit)

 という式が成り立ち、コンピューター上のデータの最小単位はビット(bit)となります。これが、冒頭で説明した2進法の「0」または「1」のどちらかを表す1桁の数字になります。

 つまり1バイトは8桁の2進数となるため、「00000000」から「11111111」まで2の8乗、実に256種類の情報を表現できることになります。このそれぞれに「a」「b」や「1」「2」というような文字を対応させることで、1バイトの情報で1種類の文字を表すことができる仕組みを作ったのです。

 この数字を無限に連ねて、長い文章や画像、さらに言えば動画といった膨大な情報量を解析して表示しているのです。このように考えると、コンピューターには2進法の考え方が必要不可欠であることがわかりますね。

 もともと高校数学での履修範囲であった「n進法」は2022年度より、新課程の学習指導要領に新しく加わった「情報」という教科で学習することになりました。いずれにせよ今の世の中でより重要になっていく単元であるため、興味を持った方はいろいろと調べてみても面白いでしょう。

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最終更新:3/28(木) 9:32

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