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平気で「減塩味噌」を使う人が知らない超残念な真実 「本当に減塩になっている?」「“裏側”にある“ヤバすぎる落とし穴”は?」それでも買いますか?

3/29 6:02 配信

東洋経済オンライン

70万部の大ベストセラー『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発した8万部突破のレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』に続き、『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん2 ベスト107レシピ』が発売され、発売7日で増刷するなど反響を呼んでいる。

『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選したレシピ集だ。

いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が「減塩味噌」の問題点について語る。
*味噌シリーズの1回目:味噌の「米・豆・赤・白」の違い、正確に言えますか? 

*味噌シリーズの2回目:平気で「安い味噌」買う人が知らない超残念な真実

*味噌シリーズの3回目:平気で「だし入り味噌」使う人の超深刻すぎる盲点

■「減塩味噌」は本当に健康にいいのか

 「うちは女房が高血圧が心配だからといって減塩味噌を使うのだけど、正直、おいしくなくて味噌汁を飲んだ気がしない」

 「子どもの頃に飲んだ味噌汁がなつかしい。でも、そんなことを言うと、怒られるし……」

 73歳のAさんは、げんなり顔です。

 減塩ブームに乗って人気商品となっている「減塩味噌」ですが、「本当に健康にいい」のでしょうか? 

 今回は味噌シリーズの4回目として、「減塩味噌」について考えてみたいと思います。

 まず「味噌になぜ塩が必要なのか」ということから考えてみましょう。

 塩は、味噌を長期熟成して発酵させる際に、雑菌を抑え、「発酵」に必要な微生物を増やしてくれる存在です。

 「発酵」とは、食品が微生物(乳酸菌、麹菌、酵母)の働きによって、人間にとって有用な形に変化することを言います。

 同じように微生物の働きで人間にとって悪影響を及ぼす状態に変わることが「腐敗」です。

 長期熟成の場合、塩を減らしてしまうと、「発酵のバランス」が崩れ、「腐敗」が起こりやすくなってしまうのです。

■味噌の塩分濃度は10~12%と言われるが…

 一般的に、味噌の塩分濃度は10~12%と言われます。

 減塩味噌は6~10%だそうですが、なかには「塩分2~3%」というものもあって驚きます。

なぜこのようなことが可能なのかというと、これこそが前々回記事「平気で『安い味噌』使う人のあまりに深刻な盲点」​で説明した「速醸」のなせるワザです。

 長期熟成なら1年以上かかるところを、1~2カ月でできてしまうから、塩を減らして作っても、熟成中の腐敗の心配がないのです。

 味噌から塩を抜けば、たしかに減塩味噌ができます。

 しかし、その引き換えに「見えない“裏側”で“失われているもの”がある」ことを忘れてはいけません。

■減塩と引き換えに「裏側」で失っているものは…? 

 本来、味噌は煮たり蒸したりした大豆をつぶして、麹と塩を加え、長期熟成させて作るものです。

 この熟成期間に麹が生み出す酵母によって大豆を分解し、アミノ酸に変わることで、味噌独特の風味やうま味が醸し出されるのです。

 冒頭のAさんが「減塩味噌がおいしくない」「子どもの頃の味噌汁はおいしかった」というのも当然のこと。

 70代のAさんが子どもの頃に飲んでいた味噌汁の味噌は、「昔ながらの長期熟成の味噌」だったのでしょう。

 長期熟成には別の利点もあります。

 大豆にはたんぱく質だけでなく、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などなどの栄養素が豊富に含まれます。発酵することによって、これらの物質の吸収率がよりよくなるのです。

 減塩味噌と長期熟成の味噌の違いは「テイスティング」をすれば一発で見抜くことができます。

「平気で『安い醤油』買う人の超残念な盲点【後編】」で醤油のテイスティングを紹介していますが、その味噌バージョンです。

 方法は簡単で、減塩味噌と昔ながらの長期熟成味噌を用意して、大さじ1杯(およそ15~18g)の味噌を200ミリリットルのお湯で溶いて飲み比べるだけです。ゆっくり舌で転がしながら風味や後味を味わってみてください。

 お湯を昆布やかつおだしに変えると、もっとわかりやすいと思います。

 醤油同様、普通に味噌をなめただけでは、「どれも同じようなもの」といっていた人も、ぬるま湯に溶かしてみると、「全然違う!」と驚きます。

 「昔ながらの長期熟成味噌」は薄めてもはっきりとうま味と風味が残っているのに対し、「減塩味噌」はうま味、風味が圧倒的に足りないのがおわかりいただけると思います。「速醸味噌」でもやってみてください。

■「減塩」をしたいなら…

 「減塩味噌がおいしくないのはわかったが、塩分を控えるためには仕方がない」という声もあると思います。

 私が講演や食育セミナーでいつも話すのは「舌感塩度で塩分量を判断してはいけない」という話です。

 塩分は「舌に乗せたときに感じる塩分(舌感塩度)」と「その食品に入っている(物理的な)塩分(絶対塩度)」があります。

 舌に当たる塩分(舌感塩度)ではなく、あくまでトータルの摂取量が重要です。

 これはカップ麺で考えるとわかりやすいと思います。

 カップ麺のスープを飲んで「しょっぱい」とは思いませんよね。舌が塩分を感じないから最後の1滴まで飲み干せてしまいます。

 ところが、カップ麺の塩分は5~9グラムもあるのです。

■「黄金トリオ」で舌が壊れると多量の塩分に気づかない

 ちなみに1日の食塩摂取量の目標は、男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満とされていますから、この1杯で1日の塩分量をとってしまうことになります。

詳しくは「日本人の舌を壊す『黄金トリオ』の超ヤバい正体」を読んでいただきたいのですが、

 「①食塩(精製塩)」

 「②うま味調味料(化学調味料)」

 「③たんぱく加水分解物」

 の「3点セット」は、うま味のベースとして、ほとんどの加工食品に使われているという現状があるのです。

 「黄金トリオ」によって舌が壊れ、多量の塩分・油分を摂取しても気がつかない状態になってしまっているのです。

 減塩味噌で作った味噌汁を飲むと、「これは塩が薄いな」と舌は感知します。

 しかし減塩味噌汁は、味噌に力がないから物足りません。

 Aさんのように「飲んだ気がしない」という感想が出るのも当然といえば当然です。その分、量を多く飲んでしまったり、他の塩分の濃いものをとってしまったら、意味がないわけです。

 大事なのは「絶対塩度」と私が口を酸っぱくして言うのがおわかりいただけたでしょうか。

 そうであれば、しっかり塩を打った「おいしい」味噌汁のほうが、味もしっかりして、結果的に少ない量で満足できることも多いのです。

■「本物の味噌」「一杯の味噌汁」のおいしさ

「減塩味噌」は確かに「減塩」という目的は果たすことができるでしょう。しかし「味噌汁本来のおいしさ」を失ったばかりか、結果的に全体の塩分量が増えたのでは「本末転倒」としかいいいようがありません。

朝、起きて台所に味噌汁の香りが満ちている幸福感、味噌汁を飲むときのおいしさは、日本人なら誰もが共感していただけるのではないでしょうか。温泉旅館で朝飲む一杯の味噌汁も、また格別なものです。

 私が15年かけて開発した『安部ごはん』でも、「『豚肉✕甘みそ』の黄金コンビ! うますぎるコク肉なす」など、味噌を使った料理をたくさん紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

 「長期熟成の味噌」はやや値段が張りますが、やはり格別のおいしさがあるものです。

減塩もいいけれど、「本物の味噌を使った料理のおいしさ」「一杯の味噌汁のおいしさ」をぜひ忘れないでいただきたい、それが私の思いです。

 次回、味噌シリーズの5回目、最終回では「『味噌汁が臭い!』といって飲めない子どもたち」について紹介します。

*味噌シリーズの1回目:味噌の「米・豆・赤・白」の違い、正確に言えますか? 

*味噌シリーズの2回目:平気で「安い味噌」買う人が知らない超残念な真実

*味噌シリーズの3回目:平気で「だし入り味噌」使う人の超深刻すぎる盲点

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最終更新:3/29(金) 6:02

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