「別の部屋に引っ越したのに、家賃を払い続けている」50代男性が“ゴミ屋敷”を手放さない理由 その“驚く部屋の中”を3時間で片付けた!

1/11 9:02 配信

東洋経済オンライン

大阪府内にあるゴミとモノであふれたマンションの一室には、かれこれ1年以上、人が住んでいない。契約者の男性は、とある理由で解約ができないまま、“空家賃”を払い続けていた。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)代表の二見文直氏に、部屋がゴミ屋敷化し、引っ越しができなくなってしまった住人の顛末を聞いた。

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■一見、憧れの「男の隠れ家」だが…

 その部屋は2DKで46平米と、1人で住むには少々広い間取りだった。ここに住んでいたのは50代の独身男性。それなりの稼ぎがあったため、趣味にお金を費やしていた。

 リビングの奥にある2つの部屋は両方とも趣味の部屋になっていた。電子ドラムなどの楽器類、フィギュア、プラモデル、ゲーム機、ゲームソフト、漫画、DVD、ビデオテープ……。壁一面には映画鑑賞用のプロジェクタースクリーンがかけられている。リビングの壁にはダーツの的もかけられていた。

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 字面だけ見れば、憧れの「男の隠れ家」だが、契約主である男性はこの部屋をうまく使いこなせていなかった。趣味のモノが置かれたスペース以外は、ゴミだらけだったからだ。足の踏み場もなく、電子ドラムも叩けなければ、ソファに座って映画を観ることもできない。

 「(この部屋に住み始めてから)15年経っていますね。社宅がワンルームですごく狭くて、広い部屋に住みたいなと思ったらここがあったんです。2DKで46平米もあるので人を呼んだりとかもしたかったんですが、モノを置きすぎてしまってこの有様に」(男性)。

 ゴミ屋敷の多くは住人のメンタルに起因している。よって、仕事やプライベートのストレスを発散する方法を持つことが大切になってくる。仮に職場で大きなストレスを抱えてセルフネグレクト状態に陥り、家がゴミ屋敷になってしまった場合、その職場と家を行き来していたのでは闇へ堕ちていく一方である。

 だからこそ趣味はあるに越したことはないが、とはいえ多ければいいというわけではない。趣味の数が増えれば、必然的にモノの量は増えてしまう。ましてや、買い物がストレス発散になっている場合、モノを捨てないことにはまずゴミ屋敷になってしまうだろう。

■1年以上も“空家賃”を払い続けていたワケ

 部屋が散らかり始めたのは、コロナ禍が始まる少し前のことだった。近所の住人とトラブルになり、男性自身も精神的に病んでしまった時期があった。そんなときコロナ禍が始まり、勤めていた会社から在宅勤務を命じられた。

 「ちょうどそのときにクーラーが壊れ、業者にも“直せない”と言われてしまい、しばらくはホテル暮らしをしていたんですけど、その間にこの部屋の存在にはあまり意識が向かなくなったというか。この部屋に住みたくなくなって、近所に新しい部屋を借りて引っ越しました。必要なものだけ持っていこうとしたら、収拾がつかなくなって。コツコツ自分で片付けるつもりだったんですけど、そんな気力もなく今に至ります」(男性)。

 新しい部屋を借りたのが約1年前のこと。男性はそれからずっと空家賃を払い続けているが、それがずっと心のしこりになっていた。

 玄関とキッチンを中心に空き缶やカップ麺の空き容器など、細々としたゴミが散乱している。壁紙も大きく剥がれたままだ。これだけ集めた趣味のモノも新居に持っていくこともなく、ずっと放置されている。冷蔵庫や洗濯機もまだ使える状態のまま置かれていた。

 つまり、この部屋を維持したまま、新居でもほとんどの家具を買い直したことになる。誰の目から見ても「もったいない」の一言に尽きるが、どうしてこんなことになってしまうのか。男性から依頼を受け、この部屋の片付けを行った「イーブイ」代表の二見氏が話す。

 「この住人の方もおそらく1回は引っ越し業者を呼んでいると思うんです。でも、引っ越し業者もこの状態では引き受けられないので断るはずです。かといって、自分で新居に荷物を運ぶこともできなければ、片付けることもできない。そうして、家具や家電を買い直し、次第に生活の主軸が新居のほうへ移っていったのだと思います」

 お金に余裕があったり、ルーズな側面があったりすれば、さらにこのような状況に陥りやすい。経済的な余裕がなければ、当然、空家賃を払い続けることはできない。

 雨が降るたびにビニール傘を買ってしまう人、損しているとわかっているのにスマホの料金プランを変更しない人。そういった些細なことを後回しにしてしまいがちな人は、損をする額が大きくなったとしても、問題をズルズルと先延ばしにしてしまう。

■収納家具を買ってはいけない

 現場に入ったスタッフは全部で6名。新居に移す荷物だけを残し、不用品をすべて処分する。作業日までに男性が仕分けをしてくれていたこともあり、片付けの予定時間はおよそ3時間とあっという間だ。

 部屋を見回すと、もともと設置されている収納スペースが少ないことに気がつく。そのため、スチールラックや組み立て家具がいくつも置かれているが、この「収納家具」がゴミ屋敷を生み出す要因の1つだと二見氏は考えている。

 「収納家具を買うとそのスペースを埋めようとしてしまうので、かえってモノが増えてしまうんです。扉付きの収納家具はさらによくない。中がどれだけゴチャゴチャしていても、扉さえ閉めてしまえば片付いているように見えるからです。部屋を片付けるうえで、“整理収納”はもっと後の話なんです。まずは、モノを捨てることから始めないといけません。賢い収納の方法は、“収納家具を買わない”ことです」

 部屋にモノがあふれだしたら収納家具を買うのではなく、あふれたぶんのモノを捨てることだ。収納家具もまた、モノであることを忘れてはならない。

 収納の幅を簡単に変えられることで便利な「スチールラック」は、よりモノが増えやすくなる。そもそも、スチールラック自体が他の家具に比べて買いやすいモノなので、これを使い出すと収納スペースがどんどん増えていってしまう。さらに、スチールラックには「S字フック」を引っかけることができるので、そこに吊るす形でもモノが増えていく。

 時間が経つとスチール部分やネジが錆びてしまうことも懸念材料だ。そうなると解体ができなくなり、粗大ゴミにも出しにくくなってしまう。

■ずっとこの部屋が気がかりだった

 作業開始から3時間15分。ゴミも趣味のモノたちもすべて外に運び出され、部屋の中は15年前と同じまっさらな状態に戻った。仕事に出ていた住人の男性も部屋に帰ってきた。

 「やっぱりモノを置きすぎたな……と。なかなかモノを捨てられない人間なので、自分のいないところでやっていただいたことで、さっぱりと決別できたのかなと(※編集部注 捨てないでほしいものは事前に聞いている)。この部屋をどうにかしなきゃいけないというのがずっと頭の中にありました。いいゴールを迎えられた。気持ちも明るくなりました。これから新しい生活を始めていこうと思います」

 最後に男性は、「(この部屋を放置していたことで)いいことは1つもなかった」と語った。その言葉がもっとも印象的だった。

【写真】趣味のモノが詰まった「男の隠れ家」がゴミ屋敷に…3時間で綺麗になった! 【生まれ変わった部屋を見る】(48枚)

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最終更新:1/11(土) 10:44

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