英シュローダー系運用会社、日本で年金資金を獲得-低所得者向け金融

5/9 6:00 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 英シュローダー傘下のブルーオーチャードが、低所得者層向けの小口金融サービスを行う「マイクロファイナンス」のファンドで、日本の投資家から新たに約100億円を集めたことが分かった。

ブルーオーチャードは社会課題の解決と収益性の両立を図るインパクト投資に特化した運用会社。フィリップ・ミュラー最高経営責任者(CEO)がブルームバーグの取材で明らかにした。

マイクロファイナンスは、主に新興国で返済能力があるのに公的な身分証明書がないなどの理由から融資を受けられない人を対象とする。世界銀行の統計によると、金融サービスにアクセスできない人は2021年時点で約14億人に上り、ミュラー氏は「その橋渡しをするのがマイクロファイナンスだ」と話す。

この手法は、金融庁が普及に向けた取り組みに力を入れるインパクト投資の一種。14日には官民の関係者が集まるフォーラムが開かれる予定だ。現状、マイクロファイナンスの認知度は高いとは言えないが、今後インパクト投資が浸透すれば投資手法の一つとして注目を集める可能性がある。

同社のファンドは1998年に設定され、2024年3月時点の純資産価値は約25億7600万ドル(約4000億円)。マイクロファイナンスを扱う新興国の金融機関にデットとして資金を入れ、そこから現地の中小零細事業者に資金が行き渡るようにする。

これまでインドの農業従事者や、ジョージアで菓子製造の起業をした人などが融資を受けてきた。日本の投資家は企業年金基金が中心で、今年に入り約100億円を集めている。

ミュラー氏は日本の投資家について「通常のESG(環境・社会・企業統治)投資から、よりターゲットを絞ったインパクト投資に軸足を移し始めている」と分析する。インパクト投資は、社会的な改善効果の実現を意図するほか効果の定量的な測定が求められる点などが、一般的なESG投資とは異なる。

多様化ツール

直近のリポートによれば、23年までの10年間、1%台後半から5%台後半の間で毎年プラスのリターンを確保しており、平均では3.3%程度のリターンを上げている。

ミュラー氏は「マイクロファイナンス戦略は2桁台のリターンを狙うものではなく、安定的なパフォーマンスとボラティリティーの低さが特徴だ」と話す。融資対象に農業などの第一次産業の従事者が多く景気やマクロ経済環境に影響されにくいことなどが、安定性につながっているという。

また、株式や債券などの他の資産との相関が低いため「投資家にとってはポートフォリオ全体を多様化させるツールになる」とも指摘した。

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最終更新:5/9(木) 6:00

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