都心回帰が加速する私立大学、2025年に東京理科大薬学部が葛飾へ移転《楽待新聞》

4/9 11:00 配信

不動産投資の楽待

2025年4月、東京理科大学が薬学部のキャンパスを現在の千葉県野田市から都内にある葛飾キャンパスへと移転する。

葛飾キャンパスは2013年4月に開設した比較的新しい施設であり、そこへ新たに約1700人の学生が加わることになる。

広い敷地を有する野田キャンパスから都心への移転にはどういう意図があるのだろうか。移転の理由と内容、そして影響についてまとめた。

■野田キャンパスと葛飾キャンパス

千葉県野田市にある野田キャンパスは、東京ドーム10個分の広い敷地を有する。敷地内に各棟が建てられ、典型的な「大学のキャンパス」といった様相だ。

東武アーバンパークライン(野田線)の「運河駅」を最寄駅とし、駅からキャンパスの入口まで徒歩5分で着く。

運河駅は東武線の春日部~柏駅間に位置し、柏駅までの所要時間は10~15分である。運河から柏で乗り換えるルートを使えば、上野まで40~50分でアクセスできる。

約60年の歴史を持つ野田キャンパスには、現在、薬学部と創域理工学部および大学院の研究科(薬学・創域理工学・生命科学)が所属する。

これら学部・研究科の人数を合わせると約7500人になり、同等数の学生が野田キャンパスに通っていると推察できる。

一方で、薬学部の移転先となる葛飾キャンパスは、東京都葛飾区に2013年に開設された比較的新しいキャンパスだ。

最寄り駅はJR常磐線(各停)の「金町駅」および京成線の「京成金町駅」であり、両駅から徒歩10分弱の場所に位置する。金町駅は常磐線(各停)の北千住~取手間に位置し、北千住からは3駅・10分弱だ。

葛飾キャンパスには現在、工学部と先進工学部、そして大学院の工学研究科と先進工学研究科が配置されている。在籍学生数は合計約5000人。

■実習生のため、都心アクセス向上を図る

2025年の4月より、薬学部と薬学研究科が野田キャンパスから葛飾キャンパスに移転することが発表されている。葛飾キャンパスの中に新校舎を設立し、約1年後からはその校舎で稼働するようだ。

葛飾キャンパスが開設されたのは2013年のこと。葛飾キャンパスにおける学部学科の再編が決定したのは、それから5年後の2018年だった。

再編の理由には、薬学部における学外期間との連携強化、より高度な教育と先進的な研究の実施などが挙げられている。

2009年に葛飾区と同大学の間で、葛飾キャンパスの開設と新校舎が建設される「第二期用地」の購入に関する基本協定が結ばれており、2017年には予算措置が決定されている。

新校舎は、既存の建築デザインを踏襲し、一体感のあるキャンパス景観を創出するという。建築面積3500平米、延べ面積3万8000平米の地上11階・地下2階の建物となる予定だ。

低層階には公園に面したラウンジを設置、学生たちが好みや目的に応じて居場所を選べる多彩な場を特徴としている。建設工事は2021年6月に着手しており、2024年4月の竣工を予定している。

薬剤師免許の取得を目指す薬学部薬学科では、5年次に病院実習と薬局実習を受ける必要がある。今回のキャンパス移転には、都内の病院・薬局へのアクセスを向上させる目的があるという。

一方で、より多くの学生を誘致したい目的もあるのではないだろうか。野田キャンパスは、周辺に目ぼしい商業施設がないことから、学生の間で「陸の孤島」と冷やかされることもあった。

少子高齢化の中で、学生にとって魅力的に映る立地にキャンパスを置きたいと考えるのは自然なことだろう。

東京理科大学によれば、今回の学部学科の再編に伴い、野田キャンパスからは約1000人擁する薬学部・研究科のほか、理工学部(現:創域理工学部)の一部も新キャンパスに移転すると発表している。

さらに、北海道にある長万部キャンパスからも基礎工学部の1年生が葛飾キャンパスに移るという。葛飾キャンパスには新たに1700人ほどが通うことになるようだ。

■都心へのキャンパス集中が進む

2003年に閉鎖した旧三菱製紙中川工場の跡地を利用する形で、東京理科大学の葛飾キャンパスは誕生した。

そこへ約1700人が加わり、今回の薬学部移転によって葛飾キャンパスの規模は学生数で5000~6000人程度の規模になると見られる。

2000年以降、このように私立大学が郊外のキャンパスから都心へと移転する流れは顕著だ。過去の一例を紹介しよう。

--------------------------
・東洋大学(埼玉県朝霞市から東京都文京区へ)
・共立女子大学(八王子市から千代田区へ)
・東京電機大学(千葉県印西市から東京都足立区へ)
・青山学院大学(神奈川県相模原市から東京都渋谷区へ)
・中央大学(八王子市から文京区へ)
--------------------------

人口減少が続くと予想される日本において、この流れはさらに加速していくのかもしれない。

東京理科大学葛飾キャンパス周辺では、1年後の通学者増加を見越すと、学生を対象としたアパート・マンションの賃貸需要の高まりが予想される。

新校舎のオープンを、飲食店や小売店が商機と捉え、地域経済が盛り上がる可能性もあるかもしれない。

ちなみに、金町駅周辺まで視野を広げてみると、現在新たにタワーマンションや大型ショッピングモールの建設が進められていることがわかる。

東京理科大学のキャンパス増設や、金町駅周辺の再開発によって、人流や街の賑わいに変化が起きるかもしれない。今後の動向に注目だ。

山口伸/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待

関連ニュース

最終更新:4/9(火) 11:00

不動産投資の楽待

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング