【ミドル&シニアのための“超王道”投資術】第2回 横山先生、知識ゼロですが新NISAのこと詳しく教えてください

4/20 10:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 2024年1月からスタートした新NISA。制度が恒久化され、非課税保有期間が無期限になるなど、これまで以上に使い勝手の良い制度へと進化した。“超王道”投資術の連載第2回となる今回は、新NISAの基本的な仕組みと活用方法について、これまで2万6000件以上の家計相談を受けてきた実績を持つ家計再生コンサルタントの横山光昭氏に、悩める50代のビジネスパーソンが質問した。

● 先生、新NISAを使うとどんなメリットがあるんですか?

 ――2024年1月からスタートした新NISAが話題となっています。私はこれまでNISAを活用していなかったのですが、そもそもNISAはどんな制度ですか?

 NISAは「少額投資非課税制度」ともいい、株式や投資信託への投資で得られた利益(運用益)について非課税とする制度のことです。「NISA口座」を利用して一定の金額内で投資すれば、その利益には税金がかからなくなります。

  NISAを利用するには口座の開設が必要です。初心者であれば取扱銘柄の多い、大手ネット証券会社がお薦めです。口座開設は各社のホームページを参照してみてください。

 ――新NISAにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 新NISAの最大のメリットは、何といっても投資で得た利益が非課税になる点です。通常の投資では運用益の約20%が税金として引かれてしまいますが、新NISAなら、投資で得た利益を丸ごと手に入れることができるわけです。

 さらに、以前のNISAでは、非課税保有期間が最大5年や20年間でしたが、新NISAでは非課税保有期間が一生涯(無期限)となったため、ますます有益になります。

 ――なるほど。NISAは、より使いやすい制度に進化したわけですね。他にも、特徴的な仕組みなどはありますか?

 新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という二つの枠が設けられており、一つの口座で併用することが可能で、つみたて投資枠では年間120万円まで、成長投資枠では年間240万円まで非課税で投資することが可能です(図1参照)。

 また、一生涯では、二つの枠を合計して最大1800万円(うち成長投資枠は1200万円)まで非課税で投資することができます。二つの枠では投資できる商品に違いがあり、つみたて投資枠で購入できる商品は一定の要件を満たした投資信託とETF(上場投資信託)に限られているのに対して、成長投資枠では投資信託やETFの他にも、上場株式やREIT(不動産投資信託)など幅広い商品を購入することができます。

 非課税枠の再利用ができる点もポイントです。例えば投資枠が1800万円埋まり、一部を売却すると、翌年にはその分が非課税枠として復活するようになりました。これによって、取り崩しをしながら投資をすることが可能となるため、税制のメリットをさらに活かすことができます。

 次ページからは、つみたて投資枠と成長投資枠のどちらを優先して使えばいいのか、さらには投資初心者にお薦めの「王道」投資先を紹介していく。

● つみたて投資枠と成長投資枠はどちらを優先して使うべき?

 ――つみたて投資枠と成長投資枠の二つの枠があるとのことですが、優先して使うべきなのはどちらの枠ですか?

 投資初心者の場合は、まずはつみたて投資枠からスタートすることをお勧めします。なぜなら、つみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁の課す厳しい要件をクリアした長期の積み立て投資に適した投資信託とETFに限定されているため、投資に関する知識の少ない人でも安心して活用することができるからです(図2参照)。

 また、つみたて投資枠の対象商品は、保有中に発生する手数料(信託報酬)にも上限が設けられているため、低コストでの投資が保証されています。その点も投資初心者には魅力といえるでしょう。

● 新NISAでは、どのような商品に投資するとよいのでしょうか?

 ――50代や60代から新NISAを始める場合に、お薦め商品などはありますか?

 基本的に、つみたて投資枠対象の商品であれば、長期投資に適したローコストの商品ばかりなので、どの商品を選んでも安心です。その中でも定番といえるのが「全世界株式型投資信託」(以下、全世界型)です。全世界型は、1本で全世界の株式に幅広く分散投資する投資信託で、その分散性の高さから非常に人気があります。

 全世界型にもさまざまな商品がありますが、代表的なものとしては「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)​」が挙げられます。「オルカン」の愛称で人気の商品で、直近期間5年の利回りは年率17.40%と運用実績も非常に優秀。また、eMAXIS Slimシリーズは「業界最低コストを目指し続ける」という方針を掲げ、超低水準の信託報酬を実現しており、ローコストでの運用が可能です。

 一方、もう少しリスクを取っても、リターンを狙いたいという人にお薦めなのが、米国株の代表的な指数であるS&P 500に連動している「米国株式型投資信託」です。世界経済の中心である米国の株式市場は長期にわたって右肩上がりで成長を続けており、今後もさらに拡大していくことが予想されています。

 米国株式型の最大の魅力は、こうした米国の経済成長の恩恵を享受することができる点で、投資初心者から上級者まであらゆる投資家から人気を集めています。ただし、米国株式型は1国に集中して投資するため、全世界型と比べるとリスクは高くなる傾向にあります。

 代表的なものとしては、「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」が挙げられます。信託報酬が0.1%を切る低さで、まだ設定から5年もたっていませんが、直近期間3年の利回りが年率24.8%となっています(24年3月現在)。

 ――どちらの商品も魅力的なので迷いますね……。

 全世界型と米国株式型のどちらを選ぶかは、その人の投資スタイル次第ですが、50代や60代から新NISAを始める場合には、よりリスクの低い全世界型を選ぶ方が合理的な選択といえるでしょう。また、複数の金融商品に投資してオリジナルのポートフォリオを作るのも一つの手です。例えば、毎月の積立額が10万円の場合、5万円を全世界型に投資し、残りの5万円は好きな商品を好きな割合で買っていくのもよいでしょう。残りの5万円の一部を米国株式型に割り当てれば、どちらの商品にも投資することができますよ。

 ――逆にやってはいけないことはありますか?

 短期的な経済動向に動揺して売ってしまうことです。連載第1回でもお話しした通り、短期的な下落があっても経済はそれ以上に成長していく傾向があります。動揺せず、5年以上はしっかり運用したいところです。

 また複利効果の恩恵を受けるためにも、長期間積み立てを続けることが鉄則です。前回も説明しましたが複利効果とは、分配金を再投資することで得られる利息効果のことで、利益分を元本に組み込むことで資産を雪だるま式に大きくしていくことができます。

 例えば、毎月5万円を積み立て利回り5%で運用した場合、5年後には資産は約341万円(運用益は約41万円)、20年後には約2064万円(運用益は864万円)にまで膨れ上がります。運用次第では、50代から積み立てを始めても、70代で2000万円以上の資産を形成することができるわけですから、一時的に相場が下がったからといって売ってしまうのではなく、どっしり構えてできるだけ長く積み立てを続けていくようにしましょう。

● 投資に慣れてきたら、成長投資枠も活用してよいのでしょうか?

 ――将来的には、さまざまな商品に投資できる成長投資枠も活用したいと思うのですが、先生はどう思いますか?

 投資初心者の場合、まず優先すべきなのはつみたて投資枠ですが、それなりに投資の知識が付いてきたのであれば、成長投資枠の利用も始めることをお勧めします。

 新NISAでは、二つの枠が別勘定なので、つみたて投資枠を上限まで積み立てつつ、成長投資枠でも年間240万円まで投資することが可能です。そのため、つみたて投資枠の枠いっぱいまで積み立ててもなお余裕資金のある場合には、成長投資枠を活用すればよいわけです。

 成長投資枠は、つみたて投資枠と比べて広範囲の商品を購入することが可能で、つみたて投資枠では購入できない株式やREITなども購入できます。ただし、一般的に株式は投資信託と比べるとハイリスクな商品となるため、新NISAで堅実に王道の資産形成を目指す上では不適です。

 特に、50代や60代から積み立て投資をする場合は、数十年の投資期間を取ることは難しく、リスクを取ったチャレンジングな投資は避けた方が賢明です。そのため、成長投資枠でも、まずは安全性の高いつみたて投資枠の対象の商品を選ぶことをお勧めします。

 つみたて投資枠対象の投資信託やETFなら、長期投資に適したローコストな商品ばかりなので、投資初心者でも安心ですよね。二つの枠をフル活用すれば、最大年間360万円まで積み立てが可能となるため、わざわざ株式のようなハイリスクな商品に手を出さなくても、十分に老後資産を形成することは可能ですよ。

【NISAにおける王道投資術】
✔50代、60代といえども、一括投資はNG。つみたて投資枠を利用して、毎月、コツコツと積み立てを実践。10年以上などの投資期間を持って、複利の恩恵を受ける

✔NISAで利用する商品は「全世界株式型投資信託」か「米国株式型投資信託」の2択。50代、60代は基本「全世界型」1本でもOK

✔資金に余裕があれば、つみたて投資枠の上限を超えて月10万円以上の積み立てをするもよし。その場合、成長投資枠を利用することになるが、投資する商品は、つみたて投資枠の対象投資信託から選ぶとリスクが小さい
 今回は、50代、60代の投資初心者の方に向けて、新NISAの基本的な仕組みとその活用方法について解説しました。4月26日公開の​連載第3回では、もう一つのお得な投資非課税制度「 iDeCo(個人型確定拠出年金)」について深掘りしていきます。

  【監修者Profile】

 横山光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、マイエフピー代表
「消・浪・投®」の家計管理と投資を両輪に資産形成を目指す提案が好評。家族マネー会議も評判。現場にこだわるファイナンシャルプランナーで相談件数は2万6000件超。シリーズ累計95万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』など著作181冊、メディア出演多数。

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最終更新:4/30(火) 14:56

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