「イオン鹿児島鴨池店」建物老朽化で閉店、ダウングレードして再開発か?《楽待新聞》

4/3 19:00 配信

不動産投資の楽待

鹿児島市の中央部、鴨池地区にある「イオン鹿児島鴨池店」が2024年8月末をもって閉店する。

1975年にダイエー鹿児島店としてオープンして以来、49年もの歴史があり、建物の老朽化が閉店理由のようだ。

同店舗は住宅街に囲まれており、鹿児島市の住民にとって重要なショッピングセンターとして機能してきた。建替えで新たな店舗を作るとしているが、人口減少傾向にある市内で現状と同規模の利益を出せるかは不透明な部分もある。

今回は、現在におけるイオン鹿児島鴨池店の機能と、考えられる建替えシナリオついてまとめ、地域と商業施設の結びつきを考えてみる。

■鹿児島市の地理関係

鹿児島市は南北に50キロメートル、東西に最長15キロメートルと縦に細長い構造となっている。

主として栄えている場所は、九州新幹線の終着駅である「鹿児島中央駅」の東側、桜島を臨む鹿児島湾沿いだ。

九州新幹線が部分開業する2004年以前、鹿児島中央駅は「西鹿児島駅」という名称だったが、特急の終着駅であるため同駅周辺は当時から繁華街として栄えてきた。

駅ビルの「アミュプラザ鹿児島」は市有数のショッピング施設である。

一方、同駅から鹿児島本線で1駅進むと「鹿児島駅」に着くが、鹿児島駅周辺は栄えているとは言い難い状況だ。

市内で一番活気があるのは「天文館」と呼ばれる一帯。鹿児島中央駅から北東へ1.5キロメートルの場所に位置する。アーケードの商店街のほか、歓楽街もあり、大通りの県道21号沿いには地場の百貨店「山形屋」も店舗を構える。

テレビで鹿児島市が紹介される際によく映されるのも、この天文館だ。

路面電車の鹿児島市電は、市の中心部を走り、市民の足として重要な役割を担っている。7分間隔で走るなど本数も多く、2022年度の年間乗降客数は1000万人近くを誇る。

同市電は市の中心部を南北に通っており、鹿児島中央駅を通る「2系統」と東側を走る「1系統」の2路線がある。両路線とも鹿児島駅を起点に先の天文館を通り、「高見馬場」で分岐して「郡元」で合流する構図だ。

1系統はさらに南下し、「谷山」へと至る。今回閉店を発表した「イオン鹿児島鴨池店」は1系統の停車駅「鴨池」の目の前に位置する。

2系統と1系統を乗り継ぎ、鹿児島中央~高見馬場~鴨池というルートに沿った場合の所要時間は23分だ。

■市内の2つのイオン

イオン鹿児島鴨池店は1975年、動物園の跡地を利用する形で「鹿児島ショッパーズプラザ(ダイエー鹿児島店)」として開業した。

2015年からはイオン鹿児島鴨池店として運営されている。店舗は2階建てで、面積は約2万1000平米の規模である。市の中心部に近いが、市を代表するイオンとは言えない。

鹿児島市内のイオンと言えば、鹿児島中央駅から南へ直線距離で6キロメートル、車で20~30分の場所に位置する「イオンモール鹿児島」が代表的だ。

こちらの商業施設面積は約7万8000平米で店舗部分は3階まであり、店舗数は200を数える。アパレル系で言えばユニクロやH&M、niko and...などがあり、全国チェーンのブランドが集まる店舗として、市民にとって欠かせない場所となっている。

一方のイオン鹿児島鴨池店の店舗数は70店舗程度であり、ユニクロなどのアパレル店もない。だが周辺は住宅街が広がり、食品スーパーを筆頭に住民にとって機能的なショッピングセンターとして存在してきた。

店内には書店や美容院、百円ショップなど実用性の高い店舗が並ぶ。レジャー要素はないが、地元住民が日常的に買い物をする場所として機能していることがわかる。

■ダウングレードして建替えか?

そんなイオン鹿児島鴨池店が2024年8月末に閉店することを発表した。ダイエー鹿児島店として開業して以来約50年ということもあり、建物の経年劣化による老朽化が原因のようだ。

エスカレーターや空調設備も古くなっており、建物に加え隣接する立体駐車場も解体し、施設を建替えるという。

現時点で具体的な建替えプランは公開されていないが、地方におけるイオンの現状を見れば可能性が見えてくるだろう。

例えば、1979年にニチイとしてオープンした埼玉県の「イオン新座店」は、老朽化で今年2月に閉店した。同様にジャスコ西大津店として1996年にオープンした「イオンスタイル大津京」(滋賀県)も今年1月、老朽化を理由に閉店。

少し前のことになるが、1978年にグリーンシティとして開業した「イオンモール寝屋川」(大阪府)も2016年に閉店している。

イオンの建替えでは規模を小さくする「ダウングレード」が目立つ。報道によると、先述の大津京店はマンションとして建替えられ、一部にイオンが出店するようだ。

イオンモール寝屋川も規模を縮小した「イオンタウン」になるという情報も出ている。

1981年にニチイとして開業した「イオン旭川春光店」(北海道)も2022年に閉店した後、今年8月の開店に向けて工事が進められている。2階建てだった店舗を平屋に建替え、店舗面積も半分に縮小するようだ。

こうした例を見る限り、イオン鹿児島鴨池店も規模を縮小するのではないかと考えられる。

県内の旗艦店ともいえる「イオンモール鹿児島」が既に存在しているほか、ピーク時に60万人を超えていた鹿児島市の人口も既に減少トレンドに入り、新たな需要創出もなかなか期待できない。

大津京店のようにマンションとの複合型になるのか、階数・面積を抑えての建替えになるのか、その詳細は不明だ。しかしいずれにせよ、規模をダウングレードした店舗ができる可能性が高いと言える。

一方で、地元住民の生活を日々支えていた店舗であることも確かだろう。建替え後の施設が、地域経済にとってどれほど影響を及ぼすものとなるのか、今後のイオン鹿児島鴨池店の行方について、続報が待たれるところだ。

山口伸/楽待新聞編集部

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最終更新:4/3(水) 19:00

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