中国「広汽集団」、三菱自の撤退で約600億円減損 独自ブランドの好調と合弁会社の苦戦に落差

4/17 15:02 配信

東洋経済オンライン

 中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は3月28日、2023年の通期決算を発表した。同年の売上高は1297億600万元(約2兆7150億円)と前年比17.62%の増収を達成。一方、純利益は44億3000万元(約927億円)と前年比45.08%の大幅減益となった。

 「2023年の純利益が落ち込んだ主因は、価格競争の激化と広汽三菱の事業再編の影響だ。広汽三菱関連の一時損失の28億6000万元(約599億円)を除外すれば、わが社の業績は自動車業界の平均水準にある」

 広汽集団の董事長(会長に相当)を務める曽慶洪氏は、決算説明会でそう述べた。

(訳注:広汽三菱は日本の三菱自動車工業、三菱商事と広汽集団の合弁会社だったが、2023年10月に日本側が撤退を決めた。詳しくは『「中国撤退の三菱自」合弁操業停止後の処理策』を参照)

■広汽アイオンの販売77%増

 クルマの販売実績に目を移すと、広汽集団の2023年の(合弁ブランド車と独自ブランド車を合計した)総販売台数は約250万5000台と、前年比2.92%の小幅な伸びにとどまった。

 だがEV(電気自動車)とPHV(プラグインハイブリッド車)に代表される「新エネルギー車」のカテゴリーでは、広汽集団は2023年に54万9600台を販売し、前年比77.55%の大幅な成長を達成した。

 新エネルギー車の販売を牽引したのは、「広汽埃安(広汽アイオン)」を中心とする独自ブランドだ。広汽アイオンの2023年の販売台数は前年比77.02%増の48万台に上り、中国市場の新エネルギー車のブランド別ランキングで第3位に浮上した。

 独自ブランドの躍進とは対照的に、合弁ブランドは苦戦を強いられた。日本のトヨタ自動車との合弁会社「広汽トヨタ」は、2023年の販売台数が約90万1000台と前年比10.7%減少。ホンダとの合弁会社「広汽ホンダ」の状況はさらに厳しく、販売台数は約64万台と前年比13.7%減少した。

 外資系の合弁会社は中国市場の急速なEVシフトへの対応が遅れ、おしなべて販売を落としている。そんななか、広汽集団の総経理(社長に相当)を務める馮興亜氏が、決算説明会で次のように述べたのは注目に値する。

 「エンジン車の市場は全体的に縮小しているが、その過程で人気ブランドへの集中が進んでいる。広汽トヨタは(エンジン車における)市場シェアを2020年の3.5%から2023年は6.5%に高め、強い競争力を示した」

 中国では新エネルギー車の販売が急速に伸びているものの、エンジン車は2023年の市場全体の依然7割近くを占めている。馮氏は、エンジン車のブランドは先進性を維持することで「まだ成長の余地がある」と指摘し、とりわけ日系メーカーが得意とするハイブリッド技術が、広汽トヨタと広汽ホンダに「必ずやチャンスをもたらす」と強調した。

■海外事業の強化が課題

 今後の新たな成長分野として、広汽集団が力を注ぐのが海外市場の開拓だ。同社の2023年の輸出台数は約7万5800台と、前年の2.3倍近くに増加した。

 とはいえ、海外事業で先行する上海汽車集団や奇瑞汽車の輸出台数に比べれば、まだまだ見劣りする。「これはわが社の弱点だ」。董事長の曽氏はそう率直に認め、全力でキャッチアップを目指す。

 広汽集団はサウジアラビア、ロシア、メキシコなどを2024年の海外事業の重点市場に位置づけるとともに、バングラデシュやニュージーランドなど10カ国への新規進出を計画している。

 中国からの輸出拡大に加えて、タイ、ミャンマー、マレーシアなどに工場を建設し、現地生産も本格化させる計画だ。

 (財新記者:余聡)
※原文の配信は3月29日

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最終更新:4/17(水) 15:02

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