10年で240倍! 「Windows95」の発売当時とも重なって見える【ビットコイン】の本当の“価値”
さまざまな場面で話題に上がることの多くなったビットコインやイーサリアムといった「暗号資産」ですが、とはいえ周囲を見渡すと、実際に所有している人にはなかなかお目にかからないのが現状です。
とかく「怪しい」「危険なのでは」と思われがちな暗号資産の価値は、いったい何に裏打ちされているのでしょうか。SBIホールディングス常務執行役員、小田玄紀氏の著書『デジタル資産とWeb3』から一部を抜粋・編集する形で解説します。
■2008年、彗星のごとく現れた「ビットコイン」
最近、1ビットコイン(BTC)が10万ドルを超えたとか、7万ドルに下がったとか、大きな注目を集めています。
人類史上初の暗号資産(かつては仮想通貨とも呼ばれていました)として2008年、彗星のごとく現れた「ビットコイン」は、その実態があまり理解されていないだけでなく、ビットコインそのものの社会的な位置づけや性格も変化し続けています。
もちろん、「儲かりそうだから買う」「損しそうだから売る」という、投機的な売買の結果として暴騰したり暴落したりしている面は否めません。かつて日本で流行った「億り人」などは、まさにマネーゲームの典型です。
そもそも、ビットコインの正体は0と1が並んだデジタルデータの「やりとり」とその「記録」です。そんなものに数万ドルの値が付くなんて考えてみれば不思議です。
しかし一方で、ビットコインの市場における時価総額は2025年3月20日時点で約1.5兆ドル(約220兆円)になっています。あらゆる資産の時価総額ランキングでは、メタやテスラの株式と抜きつ抜かれつを繰り返しているほどです。
全く価値のないものであったなら、金融商品としてここまで評価されるとはとても思えません。ではその価値とは何なのか?
例えば、エヌビディアのような企業の株式であれば、価値が分かりやすいでしょう。私たちの生活にはパソコンやスマートフォンをはじめ、IT機器が不可欠なものになっているのは、誰の目にも明らかです。
それらの製品に使用されている半導体の巨大メーカーであるエヌビディアが、今後も成長を続けていくだろうことは容易に想像できます。
■ビットコインの価値を裏付ける「テクノロジー」
それに対し、ビットコインはどうでしょう。
皆さんのまわりにビットコインを所有している人はいますか? ビットコインを使っている人を見たことがありますか? ビットコインが何かの役に立ったという話を聞いたことがありますか?
おそらく、「ない」と答える人がほとんどのはずです。これほど実態が見えないにもかかわらず、それに価値があると言われれば「怪しい」と感じるのも不思議ではありません。
ビットコインの価値を裏付けているのは、端的に言えばテクノロジーです。改ざんされない堅牢な電子記録の技術に、本質的な価値があるのです。
経済学者・起業家でイェール大学助教授の成田悠輔氏は2024年12月、Xで次のようにポストし、360万回以上の表示を記録しました。
「誕生からたった15年のビットコインの時価総額が300兆円を超えてる。東京のタワマンも、純金も、アップル株でさえ足元にも及ばない成長率。人類の歴史上もっとも利益率の高い資産でありスタートアップである。という奇跡がそこらの人にも政治家にもあんまり理解されてないことに驚く」
この短いポストからは、ご本人の真意まで汲み取ることはできませんが、私なりに解釈すると、「資産でありスタートアップである」という指摘はとても重要だと思います。
ビットコインはマネーゲームに使うギャンブルのチケットではなく、れっきとした資産だと捉えられるのです。
実はこうした見方は、何年も前に海外では当然のようになっていました。私が2019年にニューヨークを訪問したときのことです。ゴールドマンサックスの投資責任者と面談する機会があり、次のような質問を受けました。
「日本ではビットコイン取引における個人投資家と機関投資家の割合はどれくらい? アメリカではちょうど半々くらいなんだけどね」
当時、日本では99%が個人投資家によるものであり、それが当たり前だと思っていた私は衝撃を受けました。
いまは少しずつ変わってきていますが、個人投資家の狙いは基本的に短期の値上がりです。それに対して機関投資家は、顧客から預かった巨額の資産を運用するのが目的であり、複数の金融資産に分散投資するポートフォリオの一部にビットコインなどの暗号資産を組み込み始めていたのです。
ビットコインが誕生した当初は、単なる「ちょっと便利な電子的小口決済の手段」でしかありませんでした。例えるなら、PayPayやLINE Payとそう変わらないような発想だったのです。それがいまや、世界の機関投資家が資産ポートフォリオに組み込むほどになりました。
これはつまり、電子的な記録に過ぎなかったビットコインが、現金や現物に劣らない信頼性を備えた極めて現実的な資産、「デジタル資産」になったということです。
■わずか10年で「240倍以上」の価値に
実際にアメリカ財務省は、ビットコインを金(ゴールド)に代わるもの、「デジタルゴールド」だという見解を示しています。
ビットコインをはじめとした暗号資産を「デジタル資産」たらしめているのは、ブロックチェーンを含む「Web3(ウェブスリー)」と総称されるテクノロジーです。
Web3は、情報の改ざんがされにくく、データの唯一性を担保し、しかも巨大なサーバやプラットフォーマーに依存しないサービスの実装を可能にするという「分散型」のネットワークとして社会を変え始めています。ビットコイン狂騒曲の根底には、こうしたテクノロジーへの信頼と期待があるのです。
ところが日本では、ビットコインや暗号資産と言うとほとんどの人が「何か怪しいもの」「手を出すのは危険」と遠巻きに眺めているだけです。
それではあまりにもったいない。
例えば2016年頃、ビットコインは5万円、同じく暗号資産のイーサリアムは500円程度でした。そのときほんの好奇心から少し買ってみていたら、いまどうなっているでしょう。
2025年3月中旬において、ビットコインは1200万円、イーサリアムは30万円ほどなので、ビットコインは240倍以上、イーサリアムは600倍になっています。10年くらいでこんなに値上がりする投資対象はめったにありません。
また、暗号資産を支えているテクノロジーは急速に進化しており、それらを応用した「Web3」関連の新しいサービスも続々と登場しています。これはかつて、インターネットが普及し始めた頃の状況に似ています。
■想起される「Windows95」の登場
もともと軍事用や学術研究用として開発されたインターネットが1990年代に入ると民生用として普及し始め、特に1995年に発売されたWindows95によってパソコンに詳しくない人でも簡単にインターネットに接続できるようになりました。
そこからEメール、ネット通販、オンライン掲示板など新しいサービスが登場。アメリカを中心にインターネット関連企業も次々に生まれ、株価が高騰しました。
多くは実態を伴わないバブルだったため崩壊したのですが、そこからグーグルやアップル、フェイスブック(現・メタ)、アマゾンが生まれ、あるいは成長していったのです。
日本においてもヤフージャパン、楽天、サイバーエージェントなどのインターネット大手企業の多くがこの時期に創業しています。
現在の暗号資産やWeb3の大きなトレンドが今後、どう展開していくのかはっきりとは分かりませんが、「怪しい」「危険」といって毛嫌いし、指をくわえて眺めているだけでいいのでしょうか。
暗号資産やWeb3には、新しい時代を拓き、社会の仕組みを変え、個人の資産形成や国としての産業振興に大きなチャンスをもたらす可能性が秘められています。そうであれば、まずは興味を持ってみるべきではないでしょうか。
東洋経済オンライン
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最終更新:4/25(金) 7:47