男性の3人に1人が経験「ちょいもれ」を防ぐ方法、「尿トラブル」はその場しのぎの対策も有効
「尿トラブルの一番の解決策は、それを治すことです。でも、治療にはならなくても、とりあえずその場で対処できることもあります」。そう語る日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野主任教授の髙橋悟氏は、同時に「根本的な解決にはならなくても、“今日のトラブル”が回避できることを知っているだけでも、気持ちが軽くなる」と指摘します。
本稿では、髙橋氏の著書『頻尿・尿もれ自力でできるリセット法』から、一部を抜粋・編集して、尿トラブルを「とりあえずやり過ごす」方法をご紹介します。
■「夜間頻尿」を引き起こす3つの原因
寝ている最中に、何回もトイレに行きたくなる人は「夜間頻尿」です。夜間頻尿の3つの大きな原因は、夜の尿量が増える「夜間多尿」と、「加齢や過活動膀胱、前立腺肥大の影響」、そして「睡眠障害で眠りが浅くなること」です。
そのなかで最も多いのが夜間多尿で、原因として挙げられるのは、尿として排出されるべき水分が下半身にたまってしまうことです。「足がむくむ」という状態です。そんな場合は、以下の対策が役に立ちます。
①寝る前3時間は、水分を控える
水分はとってから3時間で尿になります。逆算すると、就寝3時間前までに飲食をやめ、寝る直前にトイレに行けば、睡眠中のトイレを減らすことができます。喉が渇くようであれば就寝前でも水を飲んでかまいませんが、そうでなければ就寝前3時間の水分は控えましょう。お酒は早めに切り上げて、量はほどほどに。寝る3時間前にはストップするといいでしょう。
②寝る直前は「とる」ではなく「出す」
寝る直前は、水分をとるのではなく、出すことを心がけてください。つまり、尿をしっかり出してから寝る、ということです。「夜、トイレに行ったら、出た分だけ水を飲みなさい」と言われたことがあるかもしれませんが、そんな必要はまったくありません。
■寝る前に出したい「下半身にたまった水分」
夜中に何度もトイレに行く夜間頻尿の人は、ふくらはぎの筋肉が弱っているのかもしれません。加齢、運動不足、立ちっぱなし、座りっぱなしなどで「ふくらはぎのポンプ作用」が弱ると、重力で下半身に水分がたまってしまいます。そうなると、横になっている睡眠中に、下半身にたまった水分が上がってきて尿になるのです。
そういう人は、「足のむくみ」を取る、次の方法をお試しください。寝る3時間前までに行うのが効果的です。
①足を上げてあお向けに寝ころぶ
座布団などを使い、足を10cm以上高くして、あお向けになります。15分間その姿勢を続けましょう。それだけで下半身にたまった血液やリンパ液が心臓へ戻り、寝る前に余分な水分を排出できます。床につく3時間前までに行います。簡単な方法ですが、効果的です。
毎晩3~4回トイレで目を覚ましていたのに、この方法をお伝えして、実際にやってもらった次の夜から、ピタリとトイレ通いがなくなったという女性もいます。熟睡できずに昼間眠くてしかたなかったそうなので、とても感謝されました。
②ふくらはぎのマッサージをする
手を使って、ふくらはぎのポンプ作用を手助けするのが、マッサージです。両手で輪をつくるようにしてふくらはぎを包み込み、下から上へ、少し圧をかけるようにもみ上げます。これも就寝の3時間ぐらい前に、左右それぞれ10分程度行うといいでしょう。
かかとを上げ下げするだけでも同じ効果があるので、立ち仕事の人は、仕事中にも手軽に行えますね。
③「弾性ストッキング」を履く
ふくらはぎのむくみを防ぐストッキングがあります。「弾性ストッキング」と呼ばれるもので、医師もその効果を保証しています。弾性ストッキングは、足首付近の圧迫力が最も強く、上に向かうほど圧迫力が弱くなっています。重力で水分が下に移動するのを防ぎ、足元から血液が上に戻るのを促すのです。
弾性ストッキングは、薬局などで購入できます。いろいろなタイプがありますが、ハイソックスタイプがいいでしょう。起きてから夕方まで履いていていいのですが、圧迫感が強すぎると感じたら時間を短くしてかまいません。ただし、心臓病や糖尿病のある人は、医師に相談してください。
④ゆっくり湯船に浸かる
湯船に張った温かいお湯に浸かれば、全身の血液が循環しやすく、むくみが取れやすくなります。また、体に水圧がかかるので、足のむくみが和らぎます。ゆっくり浸かれば、余分にたまった水分も汗として出ていきます。体が温まれば、冷えが原因の頻尿や尿もれも改善します。
寝る直前ではなく、2時間前までに入浴しましょう。寝る直前に入浴すると、かえって寝ている間に尿が排出されやすい状態になり、トイレに行きたくなってしまいます。
また、体が少し冷えたほうが、寝つきがよくなります。入浴は少なくとも寝る2時間前までに済ませ、寝る前にトイレで水分を排出する。そうすれば、夜間頻尿を防げます。
■肥満と尿トラブルとの切っても切れない関係
頻尿の原因は、水分のとりすぎだけではありません。高血圧や糖尿病なども、頻尿の原因になります。そして、「肥満」は、頻尿にも、尿もれにも直結します。
肥満の人はお腹の脂肪が厚く、それが膀胱を圧迫するのです。下腹を押されると尿意をもよおしますよね。その状態がずっと続いているようなものなのです。また、お腹の脂肪はそれなりに重いので、それが骨盤底筋にも負担をかけ、骨盤底筋が緩む原因になります。
笑ったり、咳をしたりすることで起こる尿もれや、トイレが近くて困っているなら、肥満気味の人は体重を減らしましょう。
体重の5%、たとえば60kgの人なら3kgの減量で効果が出ます。ですから、BMI(※)が25以上の人は、ぜひ体重の4~5%を落とすことを目指してください。
※BMI…体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算
さらに、太っていて、夜中にトイレで何度も起きる。こんな人は、もしかしたら「睡眠時無呼吸症候群」によって目が覚めて、目が覚めるからトイレに行きたくなるのかもしれません。
睡眠時無呼吸は、肥満の人ほど起こりやすい症状です。ですから、体重を減らして睡眠時無呼吸がなくなれば、夜中に目覚めなくなり、トイレに行くこともなくなるでしょう。
尿トラブルの一番の解決策は、それを治すことです。でも、治療にはならなくても、とりあえずその場で対処できることもあります。根本的な解決にはならなくても、“今日のトラブル”が回避できることを知っているだけでも、気持ちが軽くなりませんか?
■とりあえずその場の「尿トラブル」をやり過ごす
体を締めつける服は着ない
「尿をもらしやすい服」というものがあります。腹部をキュッと締めつけるようなスカートやズボン、ガードルや補整下着などは、常に腹圧をかけて膀胱を圧迫しているようなもの。避けるほうがいいでしょう。
男性がぴっちりしたズボンを履いていると、尿道の曲がったところに尿がたまって、後でチョロッともれてくることがあります。トイレの後に、下着やズボンにシミをつけてしまうのは、これが原因です。医学的には「排尿後尿滴下」と呼びます。
そういう人は、ファスナーを十分に下ろせる、ゆったりしたズボンを履くほうがいいでしょう。きついベルトを締めるのもすすめません。あるいは、ぴっちりしたズボンを履いているときは、個室に入って排尿するのも効果的です。
体を冷やすことも、トイレに行きたくなる原因の1つです。女性のショーツはおへそまで隠れるタイプがいいでしょう。男女とも冬場は特に、服も暖かいものにして、冷えを避けてください。
お腹に力が入る要注意行動
お腹に力が入るともれてしまう人は、腹圧のかかる動作を知って、それを避けることで生活の不便や不快を減らすことができます。動作自体を避けることができなくても、この動作をする瞬間に下半身に注意を向けるだけで、ずいぶん、もれのリスクを回避できます。腹圧がかかるのは、次のような動作です。
・くしゃみ、咳をする
・笑う
・「よっこらしょ」と立ち上がる
・走る
・重い荷物を持つ
・思いきりハッと息を吸い込む
・なにかを思いきり引っ張ったり押したりする
・歌う、管楽器を吹く
・腹筋運動をする
くしゃみや咳を我慢するのは、なかなか難しいかもしれませんが、「ハックショーン!!」とダイナミックにするのではなく「くしゅっ」と控えめにするだけでも違います。心がけてみてください。
■男性の3人に1人が経験する排尿後の「ちょいもれ」
排尿後のちょいもれ男性は「ミルキング」を
「尿をした後に“ちょいもれ”して、ズボンにシミをつけた」。男性の3人に1人が、こんな経験があるとされます。早い人は30~40代で、多くの人が50代前半で経験しています。1日に何度もやってしまう人もいれば、月に数回という人もいます。
排尿後のちょいもれは、尿道にまだ尿が残っているために起きます。男性は尿道が長いので、湾曲した部分に尿が残るのはしかたないこと、それが後から少しもれるのもしかたのないことです。
そんな男性には、「ミルキング」という対処法があります。排尿後、尿道に残っている尿を指でこそぐように絞り出して、ティッシュやトイレットペーパーで受け止めるのです。そうすれば、下着やズボンを汚しません。個室に入って行うとよいでしょう。
※外部配信先ではイラストを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
まずは、大きく深呼吸を
緊張したら、トイレに行きたくなった。あなたも、こんな経験があるでしょう。事実、泌尿器の問題ではなく、心理的な問題でトイレが近くなることもあります。
「人前で話す場面の前にトイレに行きたくなる」「交通渋滞に巻き込まれるとトイレに行きたくなる」などなど。精神的なストレスがあると、まだ膀胱に尿がたまっていなくても、脳の中にある“排尿中枢”が刺激されてしまうことがあります。脳はとてもデリケートなのです。仕事のプレッシャーや、「外出先でトイレがなかったらどうしよう」などという不安による“心因性の頻尿”もあるのです。
気持ちの持ち方を変えるのは難しいかもしれませんが、「心因性の頻尿かも」と思う事態に遭遇したら、まずは、大きく深呼吸を。テレビやスマホなどに集中するのも、心因性の尿意を防ぐ一助になります。
心因性の頻尿は体質でも病気でもありません。そもそも、本当に膀胱に尿がたまっているわけではないのです。どうか、安心してください。
東洋経済オンライン
関連ニュース
- 「夜、トイレのため目が覚める」が超キケンな実態
- 男性の7人に1人「尿路結石」一度かかると厄介な訳
- 部屋で死亡も「低体温症」からわが身を守る室温は
- 65歳以上の「食べられない」を軽視できない理由
- 【健診】"たかが尿検査、されど尿検査"驚きの実力
最終更新:11/2(土) 16:02