テスラ、運転支援システム「FSD」を中国市場に投入へ 中国政府のデータセキュリティ要件をクリア

5/23 16:32 配信

東洋経済オンライン

 アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラが、オプション機能として提供する高度な運転支援システム「FSD(フル・セルフ・ドライビング)」。その中国市場への投入が実現に近づいている。

 テスラ中国法人のウェブサイトでは、4月29日、FSDの購入申し込み画面の表示が「リリースまでお待ちください」から「まもなくリリース」に切り替わった。また、中国のネット上では、テスラが(同社製EVのオーナーに対して)FSDの先行試用の希望者を募集したという噂が流れた。

 FSDは、テスラ車が搭載する運転支援システム「オートパイロット」を大幅に進化させたものだ。2020年10月にアメリカの一部のオーナー向けにベータ版をリリースしてから、これまでに11回のメジャー・アップデートを重ねてきた。テスラはFSDのさらなる改良により、最終的には完全自動運転の実現を目指す。

■地図情報で「百度」と提携

 財新記者の取材に応じた関係者によれば、テスラは中国のネットサービス大手の百度(バイドゥ)と地図情報に関する提携に合意し、中国政府の所管部門の要件をクリアしたという。

 百度は4月22日、テスラが「百度地図」の最新バージョンを他社に先駆けて5月にも搭載すると明かした。ただし、テスラはこの情報に関するコメントを避けていた。

 翌4月23日、テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は2024年1~3月期の決算説明会で次のように発言した。

 「FSDはほぼすべての国(の路上)で正常に機能し、(国別の)手直しをする必要はない。どこの国であれ、現地政府の所管部門の認可が得られれば、テスラは所管部門の監督の下で(合法的に)FSDをリリースする。私の認識では、そのなかに中国も含まれている」

 中国でのFSDリリースの現実味を一気に高めたのが、4月28日にマスクCEOが中国を電撃訪問したことだ。

 マスクCEOは北京で中国の李強首相と会談。その同じ日に、中国汽車工業協会と国家コンピューターネットワーク応急技術処理協調センターが、テスラの上海工場で製造されたEVが中国政府のデータセキュリティ要件を満たしているというお墨付きを出した。

 (訳注:中国では安全保障上の懸念を理由に、政府関連施設などへのテスラ車の乗り入れが制限されていたが、上記のお墨付きにより解除された)

 FSDが実際にリリースされれば、中国の自動車市場では運転支援システムの開発競争がますます過熱するのが確実だ。

■競争を通じて進歩加速も

 「わが社はテスラのFSDを歓迎する。より多くの優れたプロダクトが中国に導入されることで、中国の消費者がよりよい体験を享受でき、それが市場の前向きな発展に繋がる」

 中国の新興EV(電気自動車)メーカー、小鵬汽車(シャオペン)の董事長(会長に相当)を務める何小鵬氏は、4月29日にSNS(社交サイト)上でそうコメントした。

 スイス金融大手UBSの自動車担当アナリストの巩旻(きょう・みん)氏は、EV市場におけるここ数年の中国メーカーの躍進を根拠に、(FSDに対する)勝機は十分あるとの見方を示し、次のように述べた。

 「中国の自動車メーカーは優秀なエンジニアを大量に擁している。(FSDの中国参入を認める)開かれた競争は、中国企業の進歩をさらに加速させるだろう」

 (財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月30日

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最終更新:5/23(木) 16:32

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