「自営業の夫がもしもの場合」暮らしを支える「寡婦年金」と「死亡一時金」3つの違いと損をしない選び方をFPが解説
自営業だった夫を亡くしたとき、遺族基礎年金の対象にならないことがあります。子がいなければ支給されないためです。
そうした場合に備えて、国民年金の第1号被保険者だけに用意された給付があります。寡婦年金と死亡一時金です。日本年金機構によると、両方の要件を満たすときは、どちらか一方を選ぶことになります。
筆者はファイナンシャルプランナーとして、家計相談やライフプラン設計に携わってきました。この記事では、2つの給付の違いを見ていきましょう。
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【寡婦年金】60歳から65歳までの5年間で受け取れる条件と給付額
まず、寡婦年金から確認します。
●60歳から65歳になるまで
日本年金機構によると、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間および保険料免除期間が10年以上ある夫が亡くなったとき、その夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して支給されます。事実上の婚姻関係も含まれます。
受け取れるのは、妻が60歳から65歳になるまでの間です。65歳からは自分の老齢基礎年金に切り替わるため、その手前を埋める性格の給付になります。
●年金額は老齢基礎年金の4分の3
年金額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3の額です。夫が会社員だった期間があっても、その部分は計算に入りません。
なお10年以上という判定には学生納付特例期間と納付猶予期間も含まれます。ただしこれらの期間は年金額には反映されません。判定に使う期間と、金額に反映される期間は別だということです。
【死亡一時金】12万円から32万円が一括支給される条件と優先順位
次に、死亡一時金を見ていきます。
●12万円から32万円
死亡一時金は、死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなったときに支給されます。額は保険料を納めた月数に応じて12万円から32万円です。
付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8500円が加算されます。月数の数え方には決まりがあり、4分の3納付月数は4分の3月、半額納付月数は2分の1月、4分の1納付月数は4分の1月として計算されます。
●受け取れる遺族に優先順位がある
受け取れるのは、亡くなった方によって生計を同じくしていた遺族です。配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、優先順位の高い方が受け取ります。
寡婦年金が妻に限られるのに対し、死亡一時金は範囲が広くなっています。子がいない場合や、妻が要件を満たさない場合でも、誰かが受け取れる可能性があります。
受け取れない場合がある
どちらにも支給されない条件が置かれています。
●寡婦年金が支給されない場合
亡くなった夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがあるときは支給されません。また妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けているときも支給されません。
繰上げを選ぶかどうかは、寡婦年金を受けられるかどうかにも関わってきます。夫が第1号被保険者だった場合は、この点を確かめてから決めたいところです。
●死亡一時金が支給されない場合
遺族が遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません。また死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。
2年という期限は短いほうです。手続きが重なる時期ですが、後回しにしにくい給付になります。
令和7年の法律改正による留意事項
死亡一時金には、いま特に注意すべき点があります。
●令和10年4月1日から子の扱いが変わる
日本年金機構によると、令和10年4月1日以後は、生計を同じくする父または母がいる場合であっても、子は遺族基礎年金の支給を受けることができるようになります。
現在は、子に遺族基礎年金が発生する場合でも、その子と生計を同じくする遺族基礎年金の受給権を有しない父または母がいると、子の遺族基礎年金は支給停止されます。その場合、その父または母は死亡一時金を受け取ることができるという扱いです。
●いま受け取ると停止が続く
ただし機構は、令和8年4月1日から令和10年3月31日までに権利が発生した死亡一時金を父または母が受け取った場合、生計を同じくする子の遺族基礎年金は引き続き支給停止されると注意を促しています。
つまり、いまこの期間に死亡一時金を受け取ると、令和10年4月以降も子の遺族基礎年金が止まったままになります。12万円から32万円の一時金と、子が受け取れるはずの遺族基礎年金を比べて判断する場面が出てきます。該当しそうな場合は、必ず年金事務所に確認してください。
第1号被保険者だけの給付
この2つの位置づけです。
●独自給付と呼ばれる
寡婦年金と死亡一時金は、付加年金とあわせて第1号被保険者の独自給付と呼ばれます。会社員や公務員が加入する第2号被保険者には用意されていない仕組みです。
会社員の家庭であれば遺族厚生年金があります。自営業やフリーランスの家庭では、遺族基礎年金の対象にならなければ何も受け取れないという事態が起こりうるため、その隙間を埋めるために置かれています。
村岸 理美
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