【無料】ChatGPTもClaudeもStableDiffusionも…生成AIをタダで使える「リートン」が太っ腹すぎる

5/11 7:32 配信

ダイヤモンド・オンライン

 ChatGPT、Stable Diffusion、Claude、Google PaLMなど、複数のテキスト&画像生成AIサービスを一つのUIから使える「リートン」というサービスをご存知だろうか。GPT-4 TurboやSXDL(Stable Diffusionの一部)など、有料の生成AIエンジンも無料で利用できる。本来は有料プランでしか使えないものもある生成AIサービスを、なぜ無償で提供できるのだろうか。(テクノロジーライター 大谷和利)

● ChatGPTなど、複数の生成AIを利用できるサービス

 日頃さまざまな生成AIを利用し、その進化や社会への普及に興味を持つ筆者は、以前から「リートン」という名前の企業とサービス(https://wrtn.jp/)が気になっていた。2021年4月に韓国・ソウルで創業したリートンは、正式名称をリートンテクノロジーズといい、2023年11月にリートンテクノロジーズジャパンという日本法人を設立。個人の登録ユーザーであれば、複数のメジャーな生成AIを無料で利用できるという大胆なサービスで、日本市場でも着実に足場を築きつつある。

 他に類を見ないサービスだが、プライバシーやセキュリティの点は大丈夫なのか? 韓国でも日本でも同じように使われているのか?など、いろいろな疑問が湧いてくる。このたび機会を得て、日本法人の製品開発責任者の役職にある金 起漢(キム・キハン)さんと、同日本ビジネスマーケティング責任者の増田良平さんにお話を伺った。以下、記事内では、お二人の言葉をまとめてリートンの発言として扱っている。

● ChatGPTの一般公開前から文章生成AIサービスを提供

 日本でのサービス開始が2023年5月だったことから、リートンテクノロジーズ(以下、リートン)は、ChatGPTの普及などがきっかけとなって設立されたと思われることが多いようだ。かくいう筆者もその一人だったが、実際にはChatGPTが話題となる2年前から、社内で研究開発を行っていたという。そして、2022年10月に、ユーザーのニーズに合わせて文章執筆アシスタントを作成できる生成AIサービス「リートントレーニング」をローンチ。CES 2023で、生成AIサービスとしては初めて、イノベーション賞を受賞した。

 リートントレーニングがサービスを開始した後、ChatGPTが人気を集めたときには、「世の中の生成AIに対する興味の大きさを知ることができ、また、実際にリートンのユーザーの増加にもつながって、良い相乗効果が生まれる結果となった」と話す。

● 現在、リートンのユーザー数は日韓合わせて300万人

 リートン(wrtn.)という社名とサービス名は、書く(write)の過去分詞形(written=「書かれた・筆記の・書面の」の意)に由来している。創業者の李世榮(イ・セヨン)氏は、延世大学校で文献情報学を専攻し、子どもたちの作文能力を高めるための韓国青少年学術大会を設立して組織委員長を務めるなど、教育に深い関心を持つ人物だ。リートンのサービスはこうしたルーツから生まれ、誰もが自然にAIと対話して問題解決を図ることのできる世界を目指している。

 現在のリートン(サービス)は、独自のAI検索、ChatGPT-3.5、ChatGPT-4 Turbo、Claude Instant、Claude 2.1、PaLM2、画像生成AIのJapanese SDXLとSDXLを選択的に利用できるようになっている。さらに、5月21日までの期間限定だが、公式サイトから近日中にリリース予定のモバイルアプリの事前登録を行うと、Claudeシリーズの最上位モデルであるClaude 3も無料で利用できるキャンペーンを実施中だ。

 「現時点でのユーザー数は、日韓合わせて300万人です。一昨年の時点では100万人でしたが、昨年1年間だけで200万人も増え、今に至っています」(リートン)

 この数字は、生成AIとリートンのサービスに対する人々の関心の高まりを示すものだが、当然ながら会社としてはアクティブなユーザー数をもっと伸ばしていきたいと考えている。サービス開発の一環として、OpenAIが有償プランで提供するGPT-4 Turboを無料で使えるようにし、同じく本来は有償プランでの利用となるClaude 3も無料で提供しようとしているのだ。また、自分だけのAIキャラクターを生成して会話ができるという、遊び心のあるサービスも提供されている。

● 個人向けサービスを無料で提供する理由

 「私たちが個人向けのサービスを完全無料で提供しているのは、可能な限り多くのユーザーに生成AIを体験してもらうためです。無料であることによって、より多くの人々が気軽にこの技術を試すことができ、その結果として新たな価値やアイデアが生まれることに期待しています。こうした個人向けの無料サービスは、これからも変わりません」(リートン)

 最終的な利益は、自社のサービスやアプリから、パートナー企業の各種サービスへと送客することによって確保する予定で、今年はその動きを本格化していく予定となっている。

● 日本と韓国で、生成AIの使い方にどんな違いがある?

 これまでのコンピュータの歴史の中で、人々はマウスでGUIベースのアプリを操ったり、ブラウザの検索機能を多く使うようになったり、スマートフォンの画面をタッチしたりして利用してきた。しかし、生成AIが普及した時代では、AIと対話するための画面が主役になると、リートンでは考えている。

 この「メイン画面」のポジションを、自社で確保するにはどうするか? その答えが、主要な生成AIのサービスをワンストップで利用できる、生成AIのマルチプラットフォーマーとなることであり、いち早く日本にも進出して、リートンのユーザーベースを拡大することにあった。このため、同社のサービス内容は日韓で基本的には共通だが、日本市場の特性に合わせた機能も用意されている。

 たとえば、LINEは元々韓国発祥の技術であるものの、日本のユーザーが圧倒的に多い。そこで、LINE上でChatGPT-4を含むリートンサービスを利用できるチャットボット「リートンAIラボ」は日本でのみの提供となっている。また、先に触れたJapanese SDXLも、Stability AIとの協業で実現した日本独自の画像生成AIで、英語よりも日本語のプロンプトのほうが良好な結果が得られるという特徴がある。

 「実は私たちも驚いているのは、日韓のユーザーで、リートンのサービスを利用するデバイスが大きく異なっているという点でした。韓国のユーザーは、効率的に圧縮したプロンプトをコンピュータから入力して利用することを好むのに対して、日本では細かな指定をスマートフォンから入力して利用するユーザーが圧倒的に多いのです。こうした事情を考慮して、モバイルアプリの開発を進めています」(リートン)

 韓国はサムスンのお膝元でもあるだけに、逆にモバイルユーザーが多いものと思っていたため、筆者にとってもこれは意外だった。

 興味深いのは、リートンのサービス利用率が上がる時間帯や季節だ。午前10時や午後2~3時のピークは企業ユーザーの利用であると推測され、夏休みや新学期開始の直前などに高まるのは、学生たちの自由研究や宿題対応ではないかと推測しているとのことだ。

● プライバシーとセキュリティへの配慮

 無料サービスの場合、どうしてもプライバシーやセキュリティの点が気になるものだが、リートンではユーザーの個人情報や安全性を守ることを重要視しているという。

 たとえば、ChatGPTに関しても、OpenAIから直接供給を受けると入力したデータがAIの学習に使われる可能性があるため、マイクロソフトとの提携によって学習に利用されない仕組みで運用している。今後、提供予定のClaude 3もAWS経由で行い、同じくユーザーが入力したデータは学習に利用されないようになるとのことだった。

 また、データの安全を保ちながらサービスを提供するために、社内にもセキュリティの担当者を多く擁し、セキュリティ専門会社による定期的な検証を受けたり、将来的には、この領域でISOの認証を取ったりといったことも視野に入れているそうだ。

 一方で、チャット系の生成AIで、誤った情報をあたかも正しい情報のように回答したり、存在しない情報を作りだしてしまったりする「ハルシネーション」が起きた場合には、ハルシネーションの部分を認識し、生成した内容についてユーザーに事実確認を依頼するなどの取り組みを行っている。

 こうした取り組みを積極的に進めることで、リートンは無料であっても安心して利用できる生成AI環境を整えているといえるだろう。

● 企業ユーザーからの関心の高まり

 リートンのサービスは、無償提供している個人ユーザー向けサービスが注目されているが、実は企業からの問い合わせも多く、案件ベースでさまざまな提案を行なっているという。

 「企業でも基本的なサービスは無料で使っていただいて良いのですが、対価を払って利用したいという声も結構あります。それはやはり、無料だと何となく不安という気持ちもあるからかもしれません。いずれにしても、弊社はChatGPTのようなサービスを直接販売するビジネスではなく、他社さんの技術や検索システムとの組み合わせによってAIエージェント的なものを確立し、そこから利益を上げていくようなビジネスモデルを考えています。そのため、パートナーシップを重視しており、私たちのサービスとの親和性が高いパートナーとの話し合いを多く進めている状況です」(リートン)

 韓国ではすでにこのようなパートナーシップを行い、通販や旅行、美容などさまざまな分野の大手企業20社と連携している。日本の企業からも相談があり、これからのビジネス環境における生成AIの重要性を認識しており、非常に前向きに取り組もうとする姿勢が見て取れるという。現在提供しているサービスの中では、Webのリアルタイム情報と生成AIの回答を融合したAI検索が好評なため、その延長としてユーザーに魅力的な価値を提供できるようなサービスをパートナー企業とともに作っていくことも目標としている。

 今年後半には、複数の生成AIモデルを適切に組み合わせて最適な回答が得られるようにする技術や、画像生成や楽曲生成のために社内で開発中の新たなモデルを実装する計画で、マルチプラットフォーマーとして利便性をさらに高めていく予定だ。

● プロンプトソンと教育分野への応用

 リートンでは、ローコードまたはノーコードでAIアプリケーションを作成できる「リートンスタジオ」というサービスも提供している。ここで作成されたAIアプリケーションはオンラインで利用できるようになり、API経由で企業のシステムなどに組み込むことも可能だ。

 日韓の教育機関との連携も積極的に進めており、この「リートンスタジオ」を使った「プロンプトソン」と呼ばれる4時間のワークショップも開催している。日本では、日本大学芸術学部、および、千葉工大の学生を対象にしたものが今年1月に行われ、教員を含めて合計55名が「ボイスドラマ台本作成ツール」や「スキマ読み小説生成AI」などのカスタムAIツールの作成に取り組んだ。このような活動や、希望する学生にインターンとして働いてもらうことを通じて、リートンでは教育現場でも生成AIを広めるための方法を考えている。

 「韓国ではすでに多くの大学と提携して、延世大学(注:ソウルにある有名私立大学)では学生全員にアカウントを提供したりしています。今後、弊社の認知度がさらに上がっていけば、生成AIに関する学校認定制度のようなものも考えられるかもしれません。本社は韓国ですが日本にも拠点があるわけですから、これからも日本のお客様に合わせて改良することも含めて、より多くの方々に使っていただけるようなサービスに成長させていきたいと思っています」(リートン)

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最終更新:5/11(土) 7:32

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