中国の「株価下支えオペ」、2015年のチャイナショック以来の規模か 2月の金融統計に「国家隊」の市場介入の痕跡

4/4 16:02 配信

東洋経済オンライン

 中国人民銀行(中央銀行)が発表した2024年2月の金融統計から、同月のノンバンク向け融資が前月比4045億元(約8兆3796億円)増加し、単月の増加額としては過去2番目の大きさを記録したことがわかった。市場関係者の多くは、この動きを(中国政府による)株価下支えオペレーションに関連したものと推察している。

 上述の統計数字に含まれるノンバンクは、一般的な投資ファンドや資産管理会社、消費者金融会社、(企業グループの資金管理を専門に行う)ファイナンスカンパニーなどだけではない。市場関係者の間で「国家隊(ナショナルチーム)」と呼ばれる、中国証券金融や中央匯金投資などの中央政府の直属機関も入っている。

 (訳注:中国証券金融は、証券会社の信用取引向け融資を手がける国有金融サービス会社。中央匯金投資は、政府系ファンドの中国投資[CIC]の傘下にある投資会社)

■2015年7月の市場介入に類似

 ノンバンク向け融資の単月の増加額は、統計データの公表開始以降では2015年7月に記録した8864億元(約18兆3627億円)が過去最大だ。

 「2015年7月の動きは、中国証券金融の株式市場介入に伴うものだった。2024年2月のノンバンク向け融資の増加も、同様の理由ではないかと考えている」。国泰君安証券の共同首席アナリストを務める汪浩氏は、財新記者の取材に対してそうコメントした。

 また、長城証券のアナリストの鄒恒超氏は、別の状況証拠をもとに次のように分析した。

 「中央匯金投資は2月6日付の声明で、『オープンエンド型の上場投資信託(ETF)への投資範囲を拡大し、資本市場の安定運営の維持に努めている』と発表した。そこから類推しても、ノンバンク向け融資の急増は(国家隊による)株価下支えに関連した動きだろう」

 国家隊が市場介入したとみられている2月6日、中国のA株(人民元建て株式)市場は急反発を演じた。

 代表的な株価指数である上海総合指数は前日比3.23%、深圳総合指数は同6.22%、新興企業が中心の創業板(チャイネクスト)総合指数は6.71%それぞれ上昇。同日の出来高は9000億元(約18兆6444億円)を超え、3824銘柄が値上りした。

 中国においては、金融システムの安定化基金は公式には存在しない。「国家隊」が事実上の安定化基金と見なされることも多いが、法的な根拠についても財源に関しても、位置付けは不明確だ。

■「安定化基金の原則に相反」

 過去に実施された(国家隊の)市場介入を振り返ると、介入資金の調達手段に明確なルールが設けられておらず、その時その時の判断で対応してきたことが見て取れる。国家隊の投資状況は(平素から)透明性が低く、第三者が検証可能なデータは公開されていない。

 「中国証券金融の財源のほとんどは商業ベースの借入金であり、資金調達コストが高い。そのため(市場介入に際しては)安値で買って高値で売るオペレーションにならざるを得ない。これは『国民と富を奪い合わない』という安定化基金の基本原則に反している」

 重慶市の元市長で金融・経済通として知られる黄奇帆氏は、かつて公の場でそう苦言を呈した。

 (財新記者:岳躍)
※原文の配信は3月19日

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最終更新:4/5(金) 10:44

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