「他にやることないから…」淀川河川敷で20年続く「ヤミ畑」を直撃《楽待新聞》

11/15 19:00 配信

不動産投資の楽待

全国各地の河川敷で、正式な許可を得ずに畑が作られているケースが見られる。

いわゆる「ヤミ畑」と呼ばれるもので、河川法上は無断占用にあたり、法律的には違法とされている。都市部でも例外ではなく、地域によっては長年にわたり黙認されてきた。

今回筆者が訪れたのは、大阪市内を流れる淀川の河川敷。Googleマップの衛星画像を確認すると、堤防の内側に複数の畑のような区画が点在しているのがわかる。場所の目星をつけて現地に向かった。

■河川敷の裏で続く「無許可耕作」の現場

平日の午後、テニスを楽しむ人やランニングをする人を横目に、川と堤防のあいだに延びる舗装路を歩く。

整備された河川敷の風景が続く中、突然、草に覆われた細い砂利道が現れた。

何気なく足を踏み入れるとすぐに、「ここは河川区域(国有地)です。工作物を設置すること、耕作を行うことは河川法違反となります。速やかに撤去してください」と書かれた看板が立っていた。どうやらこの先に、目的の「ヤミ畑」が広がっているようだ。

さらに奥へ進むと、いくつものヤミ畑が姿を現した。

どの畑も、そこらで拾い集めてきたであろう木の板や鉄パイプでぐるりと囲いが作られ、入口には穴網などで仕立てた扉が取り付けられ、チェーンで施錠されている。区画の中には、ビニールシートや木材を組み合わせた自作の小屋のような構造物も見られた。

想像していたよりもずっと作り込まれており、正直、驚かされた。誰が、どんな思いでこの畑を作っているのか。興味が湧き、ほかの区画を見て回った。

なかには、「こんな道の先に本当に畑があるのか」と疑いたくなるほど奥まった区画もある。道らしい道もなく、雑草をかき分けて進むと、確かにそこにもヤミ畑が広がっていた。

そしてどの区画にも、国土交通省による複数の看板が掲げられていた。内容はいずれも「速やかに撤去してください」といった警告文だ。

英語や中国語で書かれたものもあり、外国籍の人が耕作しているとみられる区画もある。

看板に記された最新の日付は2025年6月。行政が定期的に現地を見回っていることがうかがえた。

整備された河川敷のすぐ裏に、こうした畑が点在しているとは思わなかった。表の舗装路から眺めるだけでは、実態をうかがい知ることはできない。

点在するヤミ畑のひとつでは、広い敷地でひとり作業をする男性の姿があった。声をかけて話を聞いてみると、この場所で20年以上畑を続けているという。

■注意されても「畑を続ける理由」

男性は75歳。近くに住み、畑までは自転車で通っている。

時折、国交省の職員が注意に来ることがあるといい、「ここが国の土地なのは分かってるよ」と話す。

「注意をされて辞めるつもりは?」と尋ねると、「他にやることないから」「趣味だから」と笑い、体力が続く限りあと5~6年は続けたいと話した。

この場所で畑を始めておよそ20年。それ以前からも淀川沿いを転々としながら、半世紀近く畑作業を続けてきたと振り返る。

案内してもらい畑の中に入ると、想像以上の広さに驚かされた。大きな区画のまわりに、小さな区画がいくつも並ぶ。支柱やネットは整然と立ち、管理はすべてひとりでこなしているという。囲いや簡易小屋も手作りで、手をかけてきた年月が伝わってきた。

「昔はもっと畑をやる人が多かったけど、最近はだいぶ減ったね」と男性。タバコの煙をふかしながら、これからサヤエンドウやトマトを植える予定だと語る。

帰り際、「まあ、またゆっくり来てくださいな。またお話しましょう」と声をかけられた。

■行政も「違法と認識」、しかし強制撤去には慎重な姿勢

河川敷での耕作行為について、国土交通省・淀川河川事務所の担当者に話を聞いた。

担当者によれば、河川敷での耕作は明確に「違法行為」にあたる。現地ではおよそ3カ月に一度の頻度で巡回を行い、違法な耕作を確認した場合はその都度、注意をしているという。

一方で、強制的な撤去については慎重な立場を取っている。

「強制撤去を行うには、税金を使って他人の所有物を処分することになります。違法とはいえ、かなり強引な対応になります。あくまで自主的な撤去を促す方針です」と説明した。

違法耕作の件数について尋ねると、「昔に比べて耕作している人は確実に減っています。具体的なデータはありませんが、減少傾向にはあります」と話す。今後の対応については、「ご自身で撤去いただくよう引き続き促していく」と述べ、強制排除は現実的ではないとの見解を示した。

ただ、地域によっては、行政の粘り強い働きかけにより無許可耕作を解消できたケースもある。

和歌山・紀の川下流部では、長年続いた無許可耕作約40区画に対し、行政が1年余りで撤去を完了させた。現地では週1~2回の巡回を行い、曜日や時間をずらして耕作者と対話。堤防上からも見える大型看板を設置し、周辺住民の目にも訴えた。

作物の収穫を待つなど耕作者の事情にも配慮し、段階的な撤去を促したほか、「緊急用河川敷道路」の整備計画を示すことで理解を得た。

強制ではなく、対話と周知を組み合わせた対応が短期間での是正につながった事例だ。

■「ヤミ畑」が抱えるリスク

一見、市民には無関係の問題に思えるが、河川敷のヤミ畑には多くのリスクが潜んでいる。

河川敷は洪水時に水を逃がすための遊水空間であり、治水機能の確保が最優先だ。平常時は市民の散歩やランニングなどに利用される公共空間であり、個人が耕作目的で占有する行為は本来の用途から逸脱している。

安全面では、支柱、ネット、小屋などが流水の抵抗となり、水位を局所的に上昇させる恐れがある。冠水時には資材が流出し、橋脚や樋門に漂着して流れを阻害するなど、氾濫被害を拡大させる要因にもなりうる。

また、耕作者の高齢化などにより荒れた区画が放置されれば、生ごみなどがカラスやネズミを誘引し、公衆衛生上のリスクにもつながる。

さらに、今回取材で訪れたヤミ畑は外部から目立たない場所に位置していたが、全国に目を向ければ、支柱やビニール資材が散在し、景観を損ねている河川敷も多いとみられる。

加えて、公共空間としての公平性の問題もある。誰もが利用できるはずの河川敷が、一部の人に占有されることで、他の利用者が立ち入れなくなる。市民農園のように利用料を支払う人との不公平感や、近隣トラブルの火種にもなりかねない。

要するに、ヤミ畑は違法かどうかという一点にとどまらず、防災・環境・衛生・公平性といった多方面にわたるリスクを内包しているのだ。

■河川敷の畑、すべてが「違法」とは限らない

河川法が全面施行された昭和40年4月1日以降、河川区域内での土地占用や工作物の設置は厳格に「許可制」となった。

ただし、河川法の施行(昭和40年4月1日)以前から土地を所有していたり、耕作を続けていた場合は、法律上もその利用が認められるケースがある。

つまり、河川敷の畑=全て違法というわけではなく、「許可を得た耕作」も存在し、合法的に運用されている区画もある。

一方で、国が管理する一級河川の国有地において、無許可で畑を営む「ヤミ畑」は、最新の報道によると全国で約796件(2024年3月時点)にのぼるという。

国土交通省の調査では、2022年に885件、2023年に856件と、ここ数年は緩やかな減少傾向が見られるものの、依然として全国各地に存在している。

なお、今回取材した大阪・淀川河川敷の約10カ所では、すべての区画に「速やかに撤去してください」と明記された看板が掲げられており、無断占用であると見られた。



筆者が現地で感じたのは、「注意されたから」といって、すぐに畑を手放すような人たちではなさそうだ、ということだ。おそらく、体力が続くかぎりは畑を耕し続けるのだろう。

行政が掲げる「自主的な撤去」とは、高齢化などによる自然な終わりを待つことに近いのかもしれない。

とはいえ、紀の川下流部のように、根気強い対話や周辺住民・マスコミへの周知によって無許可耕作の解消に至ったケースもある。

それぞれの現場の事情を踏まえながらも、行政にはもう一歩踏み込んだ対応が求められている。

山之内渉/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待 編集部

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最終更新:11/15(土) 19:00

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