「数字に弱く、論理的に考えられない」
「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」
「魅力的なプレゼンができない」
これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。
今回は「資料」について取り上げ、商談やミーティングでダメ出しされない資料のつくり方のコツを紹介する。
■ダメ出しされる資料は「種類」を間違えている
時間をかけて資料をつくり、商談やミーティングに臨んだところ、「ちょっと見づらいですね」「要するに何が言いたい資料なのでしょうか」「情報が足りないよ」などとダメ出しをされてしまった。
なかなかにダメージの大きい出来事ですが、誰しも経験のあることでしょう。できることならば、二度と経験したくない失敗体験です。
私は仕事柄、頻繁に資料作成についての相談を受けます。質問に来る方の多くは、グラフや数字などを美しく整え、整然とした資料を作成する能力がある方たちです。しかし、それでも上記のような失敗経験をたくさんしているようです。
ダメ出しされてしまう資料の、いったい何が「ダメ」なのでしょうか。
ズバリ、資料の「種類」を間違えているから指摘を受けてしまうのです。
詳しくご説明しましょう。あなたはビジネスで使われる資料にはどんな種類があるかを考えたことがあるでしょうか。あくまで私の整理ですが、実はたった2種類しかありません。
①じっくり、ちゃんと、読む資料
②パッと、サクッと、見る資料
念のため説明しますが、「じっくり」や「ちゃんと」とは、落ち着いて丁寧に、といった解釈をします。一方で「パッと」や「サクッと」は素早く大雑把に、といった解釈をします。
そして、シチュエーションに合った正しい種類の資料を活用することで、先ほどご紹介したような失敗体験は激減します。
■「見る資料」には美しくする工夫が必要
①の「じっくり、ちゃんと、読む資料」は細かい情報まで正確かつ丁寧に記載する必要があります。
作成にあたり留意することはまさに、「細かい情報まで正確かつ丁寧に記載する」以外にありません。ある意味では、工夫の要らない資料ということになります。例としては次のようなものがあります。
・企業が決算発表などで公表する正式な資料(主に配布する資料)
・企業間で契約をする際に交わす契約書や覚書
・報告書や始末書など、細部まで正確に情報を伝達するための書類
一方で、②の「パッと、サクッと、見る資料」はそうはいきません。
ある情報を削ぎ落としたり、あるいは強調したり、色やグラフなどを活用し、見やすく、美しい資料にする必要が出てきます。つまり工夫が必要な資料なのです。例としては次のようなものがあります。
・採用活動で企業が使う概要説明資料
・経営層に向けて行うプレゼンテーション資料
・自社サービスの魅力を訴えるPR映像
ここで重要なのはこの2つをどう使い分けるかということです。その答えは、「読む」と「見る」という表現にあります。
読む資料とは、相手に読ませるためのものです。見る資料とは、相手に見せるために必要なものです。当たり前のことを述べているように感じるかもしれませんが、これがとても重要です。
ビジネス書を例にとってみましょう。たいていの書籍には目次があります。では、この目次は読ませるもの、あるいは見せるもの、どちらでしょうか。さらにその本の表紙(カバー)はいかがでしょうか。
「目次を読んで、買ってみようと思いました」「表紙を見て、買ってみようと思いました」といった表現が一般的であり、逆はあまり考えられません。
目次は読むもの。表紙は見るもの。書籍の製作者は、まさにこの2つの使い分けによって読者になるかもしれない誰かとコミュニケーションをし、興味を持っていただこうとしているのです。書籍を買うか買わないかはビジネスの成否そのものです。
このように、ビジネスコミュニケーションとは、「読む」ものと「見る」ものの2つを組み合わせて行う営みなのです。
■状況に応じた資料の「使い分け方」
具体的なケースをいくつか挙げてみましょう。
ケース1:決算発表に向けて、上司と一緒に経営数字をチェックする
→「読む」ための資料が必要(①が必要)
ケース2:忙しそうにしている上司に1分程度で簡潔に説明する
→「見る」ための資料が必要(②が必要)
ケース3:取引先との重要な商談
→両方とも必要(①と②が必要)
決算発表に関係する内容の確認をサクッと見て終わるわけにはいきません。ちゃんと読み込むための資料が必要でしょう。
1分しか時間がない上司がじっくり資料を読めるはずがありません。要点が一瞬でわかるような「見る」ための資料が妥当です。
重要な商談なら、パッと見てメッセージが伝わる魅力的な資料を投影してプレゼンテーションするでしょう。しかし重要な商談になればなるほど、相手は細かい情報も確認する慎重さを持つものです。手元にはそのような情報がちゃんと正確に記された資料を配布しておくことが望ましいでしょう。
このように、「じっくり」「ちゃんと」「パッと」「サクッと」といった誰でも使うカジュアルなフレーズが、実はビジネスの資料作成における重要な視点を教えてくれるのです。
もしよろしければこれからは資料を作成する際、その資料を見せる相手に次のような確認をしてみてください。
「明日のお打ち合わせに資料を持参いたします。じっくり読み込んでいただく資料は後日メールにてお送りしますので、明日はパッと見ていただく程度の資料でもよろしいでしょうか?」
相手の返答によって、どの種類の資料を用意するか決めましょう。事前に質問をするだけですから、実際の資料作成という仕事よりはるかに簡単なことです。
資料作成は上手なのに使い分けが上手でない残念なビジネスパーソンにならないように。ぜひ仕事術のひとつに取り入れてみてください。
東洋経済オンライン
最終更新:3/27(水) 7:02
Copyright © 2024 Toyo Keizai, Inc., 記事の無断転用を禁じます。
© LY Corporation