グーグル、インテルにユニコーンを売却!希代の起業家が教える「新規事業の成功を見極める」技 

4/5 15:02 配信

東洋経済オンライン

2つのユニコーン(創業10年未満、評価額10億ドル以上の未上場企業)を生み出し、グーグルに11.5億ドル、インテルに10億ドルでイグジットしたユリ・レヴィーン氏。希代の起業家が提唱するスタートアップの基本的な考え方は「問題に恋する」ことだと言います。そんなレヴィーン氏がこれまでの経験や思考の軌跡をもとに、新規事業を成功につなげる方法を解説します。

※本稿はレヴィーン氏の新著『Love the Problem 問題に恋をしよう ユニコーン起業家の思考法』から一部抜粋・再構成しています。

■解決に値する「大きな問題」を見つける

 まずは、問題を見つけることからはじめよう。解決に値するだけの問題、そして、解決できた場合には、よりよい世界になるような問題だ。

 それから、「その問題を抱えているのは誰か?」を考えてみよう。

 答えが「自分だけ」なら、その問題に取り組むのはやめておこう。解決に値しない問題だからだ。

 地球上であなた1人しかその問題を抱えていないなら、精神科医に相談するほうがいい。そのほうが、スタートアップを立ち上げるより、ずっと安くすむ(しかも、おそらく早く解決できる)。

 一方、その問題を抱えている人がたくさんいるなら、その人たちのところへ行って話を聞き、問題をどのように「認識」しているのかを理解しよう。解決策を作るのは、それからだ。

 この道筋に従ったうえで、解決策が最終的に機能するものとなったら、価値を生み出せる。その価値が旅の本質となる。

 しかし、解決策からはじめると、誰にも気にかけてもらえないものを作ってしまう危険がある。そこに労力や時間、お金を注ぎ込んでしまうと、がっかりするはめになるのは間違いない。

 実際のところ、多くのスタートアップが消える理由は、PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成できないからだ。PMFを達成できない理由は、問題ではなく解決策にばかり目を向けているからなのだ。

 問題からはじめる理由は、価値を生み出せる可能性が高くなる以外にもたくさんある。1つは、起業家が紡ぎ出すストーリーが、ずっとシンプルで人の心をつかむものになるからだ。

 ストーリーを聞いた人は、起業家が抱く不満を理解し、共感してくれるようになる。

■「問題に恋する」ことで生まれる魅力的なストーリー

 問題に恋をしている会社は、「この問題の解決に向けて、前進しているか?」と、日々自らに問いかける。「これが私たちの解決する問題です」とストーリーを語り、さらにすばらしい場合には、「私たちは、◯◯な人が、□□の問題を避ける手助けをします」と、ターゲットや問題をさらに絞り込んでいる。

 その一方で、解決策に集中している会社は、「私たちのシステムは……」、あるいは、「当社は……」からストーリーを語り出す。

 自社に焦点を当てると、ユーザーにつながりを感じてもらうのは非常に難しい。だが、ユーザーや問題に焦点を当てたストーリーを語ると、簡単につながりを感じてもらえる。

 人は変化を恐れる。自分が長いあいだ温めてきたアイデアなら、その構想についてよく考え、掘り下げていくだけの時間はあるが、ほかの人からすれば真新しいアイデアだ。

 とくに初めての起業で、まだ知名度がない場合、思いもよらない変化をもたらす提案が、否定的な反応を引き起こすことがある。人がアイデアを心地よく感じるまでには、時間がかかる。

 起業とは、がむしゃらに信じることだ。犠牲を払う覚悟がないなら、つまり、今の給料や境遇、役職が手放せないなら、あなたは十分恋に落ちていない。趣味やスポーツがやめられないなら、スタートアップの旅を続ける注意力は保てない。

 スタートアップを立ち上げる準備ができたとわかるタイミングはいつだろうか。それは、犠牲を払ってもかまわないと思えたときだ。それこそが最も重要な唯一の指標となる。

 「今の職場で働き続けるけれど、資金が調達できたら、すぐに退職して会社をはじめる」と言っていたら、いつまで経っても起業はできない。十分なコミットメントを示していないからだ。

 投資家にも、コミットしていないことは伝わる。起業家がコミットしていなくて、どうして投資家がコミットするだろうか。

■どれだけ多くの人にとっての「問題」なのか

 ここでの重要なテーマは、「解決策ではなく、問題に恋をしよう」である。

 問題は簡単に特定できる。誰かにその話をすると、「そうそう、私も同じ問題を抱えている!」と共感してもらえるからだ。

 たいてい、その人は問題についての意見を述べ、体験したときの不満を聞かせてくれる。たくさんの人から意見を聞けば聞くほど、その問題が現実のものとして認識されていることがわかる。

 そうなれば、あなたのバリュープロポジション[提供する価値]は現実のものとして認識されることになる。

 たくさんの人がその問題について自分の認識を語り、その問題を排除することに価値があると言えば、大きな「ペイン(痛み)」をともなう問題だといえる。だが、あわてて解決策に着手する前に、まだ確認すべきことがある。

 それは、その問題にはどのくらいのペインがあるか(その問題を解決することに、どれだけの価値があるか)、その問題に遭遇する頻度はどのくらいか、だ。

 毎日直面する問題──できることなら、通勤の往復のような、1日に数回遭遇する問題──を解決するなら、重大な問題に目をつけたことになる。

 ウェイズの買収について、2013年にグーグルと話をしたとき、CEOのラリー・ペイジは、「グーグルは『歯ブラシモデル』──つまり、1日に2回使うもの──に興味がある」と言った。ウェイズはまさに、そのとおりのモデルだった。

 それでは、TAM(Total Addressable Market:獲得可能な最大の市場規模)とペイン(問題を解決する価値)の2つの軸からなるマトリクスを使って、問題について考えてみよう。

 ※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

 この2×2のマトリクスを確認しながら、取り組む問題について、次の2つの質問に答えてみよう。

 1.獲得可能な市場の規模はどのくらいか?  この問題を抱える人は何人いるか?  この問題に悩む企業は何社あるか? 

 2.もう1つは、さらに重要な質問だ。「どの程度のペインをともなう問題か(解決する価値はどのくらいあるか)?」。ペインは、頻度(どのくらい頻繁に悩まされるか:使用頻度)と強さ(どのくらい痛いか:価値の高低)のどちらか、あるいは両方によって測定できる。

 あなたが取り組む問題が明確になった時点で、もう一度このマトリクスに戻り、どの位置にあてはまるかを確認しよう。

■高い頻度で発生する問題ほど「成功」につながる

 それでは、マトリクスの4つのマスを1つずつ見ていこう。その問題を扱うと、あなたのスタートアップはどのカテゴリーに属することになるだろうか。

 ●「勝者」は、理解するのは簡単だが、見つけるのは難しい。たくさんのユーザーがいて、使用頻度・価値が高い、右上のマスに位置する。フェイスブックやグーグル、メッセージングアプリのワッツアップ、ウェイズを思い浮かべてほしい。

 ウェイズを知った方法をたずねてみると、最も多いのは友人からのクチコミだ。消費者市場で成功した会社はどれも、友人から友人へのクチコミによって成長を遂げている。

 プロダクトが高い頻度で利用される場合、クチコミが起こる可能性は飛躍的に高まる。プロダクトが使用される機会が多ければ、そのプロダクトについて誰かに話す人はより一層増えるからだ。

 ●「ニッチ」は、大成功を収めたり、ごく少数の人に大きなインパクトを与えたりする可能性がある(例えば、症例が少ない病気の治療)。あるいは、十分に活用されていないプライベートジェットのマーケットプレイスを立ち上げると考えてみよう。

 このモデルには、十分な需要があるが、獲得可能な市場はとても小さい(そして裕福だ)。市場は小さくても、使用頻度や価値は非常に高い。きわめて優秀な会社である。

■「問題」を見誤ったスタートアップの末路

 ●「敗者」は、ユーザーが少なく、使用頻度や価値が低い。

 ●「夢と悪夢」は、獲得可能な市場が「すべての人」であるカテゴリーだが、価値や使用頻度は低い。

 例えば、運転免許証の更新サービスだ。自動車管理局へ行くときは、いつも時間の無駄をペインとして感じるが、5年か10年に一度しか行く必要はない。

 人は自らの夢を信じたがるものだが、現実としては、このカテゴリーは悪夢となる。市場は大きくても利用してもらえるだけの価値が備わっていないからだ。

 遭遇する頻度や不満の大きさ、変化にともなうコスト、節約できる時間などによって、問題は評価できる。

 どんなモデルでも、PMFまでの道のり(簡単に言うと、ユーザーに向けて、どのように価値を生み出すかを見つけるまでの道のり)のあいだに、解決策は何度か変更されるはずだ。

 スタートアップ立ち上げの重要なモチベーションや理由となるのは、解決策ではなく、問題だ。

 もちろん、初期のSNSやオンラインゲームの会社のように、問題なしでスタートして成功する会社もあるが、私のアプローチは常に問題からであり、解決策からはスタートしない。

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:4/5(金) 15:02

東洋経済オンライン

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング