「8日以降」「18歳以上」「これ以上やったら」を正しく使えるか…実は深い「以」の正しい使い方

5/11 9:17 配信

プレジデントオンライン

「週末」「○日以降」「おはようございます」など日時に関する言葉の意味を正しく把握しているか。NHK放送文化研究所主任研究員の塩田雄大さんは「年代や性別によって解釈が変わる言葉もあるため、誤解が生じないように注意が必要だ」という――。

 ※本稿は、塩田雄大『基礎から身につく「大人の教養」NHK調査でわかった日本語のいま 変わる日本語、それでも変わらない日本語』(世界文化社)の一部を再編集したものです。

■「週末」っていつのこと?

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Q:金曜日は、「週末」に含まれるのでしょうか。また、日曜日はどうでしょうか。A:「週末」が具体的に何曜日のことを指すと考えるのかは、人によってかなり異なります。そのため、厳密さ・正確さが求められるような場合には、「週末」ではなく別の言い方をすることも考えてみたほうがよいでしょう。
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 まず、『NHKことばのハンドブック(第2版)』(2005年)の「週末」の項(p100)では、このように示しています。

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「週末」は、指す範囲があいまいなので、注意する。
①土曜日
②土曜日と日曜日
③金曜日の夜から月曜日の朝まで
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 「週末」が実際にはどのように解釈されているかについては、1999年に全国調査をおこなったことがあるのですが、2018年にあらためて調査してみました。

 まず全体の結果を見てみると、「週末」は「土曜日と日曜日」を指すという回答が半数近くを占めて主流派になってはいますが、ほかの回答も決して少なくありません。「週末」の解釈は一様ではないことがわかります。

■性別や年代によって解釈は異なる

 またこれらの回答を整理して、「金曜日は『週末』に含まれる〔=金曜日のみ+金曜日と土曜日+金曜日の夜から日曜日の夜まで〕」「日曜日は『週末』に含まれる〔=土曜日と日曜日+日曜日のみ+金曜日の夜から日曜日の夜まで〕」という形にまとめ、それを年代別・男女別に見てみると、こんな違いが表れてきます。

 ▼ 全体として高齢層では、金曜日および日曜日が「週末」に含まれるという人が、それぞれ必ずしも多くない(「含まれる」の線が、いずれもゆるやかな右肩下がりになっている)

 ▼ 男性は金曜日を「週末」に含める傾向が強く、女性は日曜日を「週末」に含める傾向が強い

 日曜日を「週末」に含めないという考え方もあるのは、特に若い人たちにとっては意外に感じられるかもしれません。しかし、たとえば1週間の始まりを日曜日だととらえた場合には、日曜日は「週末」ではないことになるのです。

 最後にとっておきのアドバイスを一つ、スーパーの「週末セール」は、金曜や日曜でも安いのかを、必ず確認してから行くようにしましょう。

■「8日以降に手続き」は、8日を含む? 含まない?

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Q:「『8日以降に』手続きをしてください」と言った場合、手続きをしてよいのは、「8日から」でしょうか、「9日から」でしょうか。A:厳密に言う場合には「8日から」が正しい解釈なのですが、日常のことばとしては「9日から」だと受け止める人もいるので、「以降」を使う場合には誤解が生じないように注意が必要です。
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 ▽「以下」と「未満」の違い

 まず、「以降」に似たことばで「以上」、そして「以下」がありますが、これについて考えてみます。

 算数や数学では、「以上」や「以下」は「その数字も含む」ということで定義されているのはよくご存じのことと思います。「5以上の数」「5以下の数」と言ったら、それぞれ、「5」を含みますよね。

 一方、「含まない」ことを表すことばとしては、「未満」があります。「5以下の数」と言うと「5」も含みますが、「5未満の数」だと「5」は含みません。このように、「以下」と「未満」は、「その数を含むか含まないか」ということで、対応しています。たとえば、「18歳以下は無料です」と書いてあったとしたら、「18歳」の人は無料です。ですが「18歳未満は無料です」だと、すでに18歳になっている人、つまり満18歳の人は無料ではありません。

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「18歳以下」:「18歳」を含む
「18歳未満」:「18歳」を含まない
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 では、「以上」に対応することばについてはどうでしょうか。「以上」は「その数を含む」ですが、これに対して「含まない」ことを表すことばは、「二字漢語(漢字2字からなることば)」では存在しません。あえて正確に言おうとすると、「18歳を超えた」「18歳よりも上」とか、「18歳超(ちょう)」などといった言い方をしないとなりません。

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「18歳以上」:「18歳」を含む
「18歳を超えた」など:「18歳」を含まない
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 「18歳以上は有料です」だと、「18歳」の人はお金を支払わなければなりません。一方、「18歳よりも上の学生は、有料です」となっていたとしたら、「18歳」の人は支払う必要はありませんね。

■「以上」は「(それを)含む」ということだが…

 では次に、日常のことばとして、「これ以上やったら、許さないぞ」という言い方について考えてみましょう。

 算数や数学では、「以上」というのは「(それを)含む」ということになっていましたよね。

 この言い方では「これ」が「含まれる」わけですから、現時点〔=「これ」〕で、すでに「許さないぞ」の領域に入ってしまっていることになりはしないでしょうか。くどい言い方をすると、正式には、「これを超える行為をやったら、許さないぞ」と言わなければならない、ということになってしまいそうです。しかし、そんなことはありませんよね。

 実は、算数や数学では「『以上』や『以下』は、その数字・そのものを、『含む』」と定義していますが、日常のことばでは、そのような厳密な定義にしばられない使い方が多いのです。日常のことばでは、「以上」を、「(を)超える」の意味で(も)使うことがきわめて普通です。

 「これ以上やったら」(日常のことば):「これ」を含まない

 「8日以降」も、この「以上」と通じるところがあります。厳密な言い方の場合には「8日」を「含む」のですが、日常のことばとしては「含まない」と考える人も決して少なくはないのです。

■約7割は「含む」と解釈しているが…

 「『8日以降に』手続きをしてください」という例文で調査をおこなったところ、「手続きをしてよいのは『8日から』だ」〔=8日を「含む」〕という人が7割程度であったのに対して、「手続きをしてよいのは『9日から』だ」〔=8日を「含まない」〕という回答も2割程度ありました。また年代差があり、「含む」という回答は30代がもっとも多く、そして20代と70歳以上では少なくなっています。

 場合によっては、「7日までは手続きができないので、8日以降に手続きをしてください」のように丁寧に言うようにすると、誤解を避けることができます。以上です。

■「一両日中に返事する」とは?

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Q:「一両日中にご返事ください」というのは、いつまでに返事をすればよいものなのでしょうか。A:「あしたまで」と「あさってまで」の両方に受け取られる言い方ですが、最近では「あさってまで」だと考える人が少なくなってきています。人によって受け止め方が異なることばなので、状況によっては別の言い方をしたほうがよい場合もあるでしょう。
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 「一両日(いちりょうじつ)」というのは、もともと「一日または二日」という意味です。「一両日中に」と言った場合、きょうを一日目・あしたを二日目と考えるか、きょうを含めずにあしたを一日目・あさってを二日目と考えるかによって、解釈が分かれてくるのです。

 「一両日中にご返事いたします」という文の解釈について、ウェブ上でアンケートをおこないました。この言い方に対して、きょうが月曜日だとした場合に、返事はあした(火曜日)までにはもらえるのか、あるいはあさって(水曜日)までにはもらえるのか、といったことを尋ねたものです。

■「あしたまで」という答えが61%に

 まず全体として一番多かったのが「あしたまで」という答え(61%)でしたが、女性(65%)では男性(56%)よりも特に多くなっています。

 また、「あしたまで」は、60歳以上ではそれほど多くないのですが、30代では7割に達しています。若くなるに従って「あさってまで」が少なくなっているのは、社会全体がせっかちな方向に変化していることの反映なのでしょうか。

■「おはようございます」は何時まで?

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Q:「おはようございます」というあいさつは、放送では、何時ごろまで使ってもかまわないものなのでしょうか。A:午前9時までであれば抵抗を感じる人はそれほど多くないようです。それ以降は、場合・状況によって注意が必要になってくるでしょう。
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 テレビで出演者があいさつする場合に「おはようございます」は何時まで言ってもかまわないか、ということについて、世論調査形式で尋ねてみました。

 まず、午前9時に「おはようございます」とあいさつをしてもよいと考える人は全体の9割程度です。ほとんどの人が問題ないと考えている、と言えるでしょう。

 ところが午前10時では、「よい」と考える人は3分の2程度にすぎないという結果が表れています。

 また、この「午前10時の『おはようございます』」は、比較的若い年代では「よい」と考える人が多いのですが、この割合は年齢が高くなっていくほど小さくなっていきます。そして、都市部に住んでいる人は比較的遅い時刻まで「おはようございます」を使えると考える傾向が強いことがわかっています。生活リズムの違いによるものでしょう。

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最終更新:5/11(土) 9:17

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