(ブルームバーグ): 岸田文雄元首相は、円安を阻止するために日米の通貨当局が実施した為替介入は一時しのぎに過ぎないとの認識を示した。その上で、基調転換には財政・金融政策の対応強化を通じた経済環境の変化が不可欠だと語った。
岸田氏は5日、ブルームバーグとのインタビューで、経済状況やその環境が変わらなければ、7月末の介入も「単なる時間稼ぎに終わってしまいかねない」と指摘。「財政政策、金融政策でやるべきことをしっかりやっておくことが大事」だと述べた。
特に、政府と日銀の連携について、数少ない高市早苗首相と植田和男総裁の面会以外に「意思疎通が十分図られていない」との見方があるとし、政府と日銀が各レベルで関係を強化する必要があるのではないかと語った。
政府・日銀は岸田政権下の2022年9月に24年ぶりの円買い介入を実施。24年3月には、政権が起用した植田総裁がマイナス金利解除に踏み切った。当時は日銀の副総裁レベルも政府関係者と緊密に連携していたと振り返る岸田氏は、円安対応や金融政策正常化を進めている局面で、政府と日銀に一層緊密な意思疎通を促した形だ。
市場では高市政権が利上げの慎重という見方が根強い。これに対し、岸田氏は、そう受け止められているとすれば、「改めて日銀法3条に基づいて、金融政策は日銀が独自で判断するものだということ。政府の介入はないんだということ。当たり前のことをもう一度しっかり確認し発信していくことが大事だ」と述べた。
政府が5日閣議決定した飲食料品消費税の2年間の引き下げについては、財源を具体的に示すことの重要性を強調。政府に対してを財源を示す努力をするよう求めた。
成長戦略
岸田氏は自民党の日本成長戦略本部本部長として、40年度までの官民投資370兆円を軸とする17分野の成長戦略の党内議論をまとめた。政府は触媒の役割を果たすべきだとし、約2300兆円の個人金融資産をはじめ、海外の投資家や金融機関など国内外からの投資を引き寄せる重要性も指摘した。
成長戦略を実現するには、官民で毎年26兆円以上が必要となるが、高市政権は一部を将来の償還財源を決めた上で先行して資金調達を行う「つなぎ国債」で賄う方針だ。一方、償還財源には不透明感があり、市場の財政懸念は高まっている。
岸田氏は数字だけ掲げれば官民投資が増えるという「甘いものではない」とも発言。予見可能性を高めることで民間が投資しやすい環境を作ることだ重要だとした。
岸田政権は、30年度までの7年間で半導体・人工知能(AI)分野に10兆円以上の公的支援を行う「AI・半導体産業基盤強化フレーム」の策定を主導。財源にはつなぎ国債を活用し、台湾積体電路製造(TSMC)やマイクロンに支援を行ってきた。
岸田氏は、こうした取り組みに理解が得られており「大きな成果が上がっている」とし、成長戦略で指定した戦略17分野に同様の仕組みを広げることは「決して夢物語ではない」と述べた。国際社会の評価を見極めながらプロジェクトを動かすことが重要との考えを示した。
NISA
岸田政権は「資産所得倍増プラン」を掲げ、24年1月に少額投資非課税制度(NISA)の拡充と恒久化を実現した。足元では国債を対象に加える案が急浮上しているが、岸田氏は「丁寧に議論しなければいけない」と述べ、慎重な姿勢を示した。
同政権は個人保有の金融資産の貯蓄から投資への流れを促し、経済成長につなげる資産運用立国を政権の柱の一つに位置付けていた。岸田氏は、NISAは家計の金融資産をリスク性投資へ振り向けることを目指しており、安全資産とされる国債を対象に加えることは本来の政策目的と整合性がとれないとみる。
相続税の対象外とする案についても、高所得者優遇になる懸念があるとした。一方で、国債保有者の多様化に向けて、商品としての魅力を高める取り組みは重要だと述べた。
片山さつき財務相は7月14日の会見で日本国債をNISAの対象とすることについて「やっていく時ではないか」と発言するなど、前向きな姿勢を示していた。同日、資産運用立国議員連盟の会長を務める岸田氏と同案について会談したと報じられている。
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Akemi Terukina, Sakura Murakami
最終更新:8/6(木) 11:00