どうなる「イカゲーム3」、Netflix史上3位の戦略 出演者3人が明かした「最終章に繋がるヒント」

2/7 12:02 配信

東洋経済オンライン

Netflix、Amazon プライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。

■正義感たっぷり、エンタメ度は薄め

 消化不良の結末だったNetflix 韓国発「イカゲーム」のシーズン2でしたが、続きとなるシーズン3の配信日が公式発表されました。今回は3年も待たせません。約半年後の2025年6月27日です。最終章として完結する物語を予定しています。気になる中身については、悪役を演じるイ・ビョンホンをはじめ役者たちが方向性をほのめかしています。

 2024年12月26日に世界配信が開始されたシーズン2は、そもそもシーズン1の世界的大ヒットがなければ作られることはなかった作品です。イ・ジョンジェ演じる“456番”ことギフンが再び生死をかけたサバイバルゲームに参加する話が展開されているわけですが、「だるまさんがころんだ」といったシーズン1の美味しい場面を繰り返すだけの安易な続編ではありませんでした。

 言うなれば、“イカゲーム”そのものをぶち壊すために闘う熱い話。ギフンは命懸けで手に入れた456億ウォンの賞金を他人の命を救うために使うのです。

 正義感が溢れ出ているせいか、重苦しさも生まれています。一発逆転ストーリーとしての爽快さがあるシーズン1と比べると、エンタメ度が薄まったと感じる人は多そうです。分断社会を風刺した描き方も目立つので、余計にそう思わせます。

 緊迫度が最高潮に達したところで唐突に幕を下ろすので、肩透かしも食らいます。続きを期待させるのは、シリーズ化が想定されて作られている場合の“あるある”とは言え、何一つ解決しないままシーズン3に橋渡しするのは、よほどの自信がないとできません。

 そんな自信を裏付けるように結果は上出来です。初週の視聴回数はNetflix史上最多を記録しています。約1カ月が経過した1月26日までの集計では、世界全体で1億7300万回以上視聴され、視聴時間は12億時間に達したことがわかっています。日本でも好成績です。

 公開初週から3週間連続で週間1位、5週連続で週間トップ10入りを果たしました。世界各国でも好調だったことからNetflix史上3番目に多く視聴された作品になり、「イカゲーム」の強さを改めて証明しています。

■イ・ビョンホンが語る悪役「フロントマン」

 シーズン3の配信を半年後に控え、大規模なプロモーション展開も続いていきます。シーズン2の配信から待たせすぎることなく6月27日に配信されるのは、撮影がそもそも2と3を同時期に行われたことが大きいですが、話題を継続させていくためのNetflixの経営上の戦略とも言えます。

 シリーズすべてがファン・ドンヒョク監督によるオリジナル脚本とあって、公開されるまでどんな展開になるのかわからない面白さがあるのも「イカゲーム」の強みです。いずれにしろ最終章ですから、これまで以上に緊張感を持たせて着地するはず。ギフンが絶体絶命のピンチの中で下す決断が見どころになりそうです。

 またシーズン1で正体を明かし、シーズン2では黒いマスクを外して最も魅力的な人物だったフロントマンは次の手を打っていくことが濃厚です。シーズン2の配信後、演じたイ・ビョンホンに直接話を聞いた際、シーズン3の方向性を予想できるようなコメントが実はありました。

 *この先、シーズン1、2のネタバレが含まれますのでご注意ください。

■残忍な決断を下す裏にある人間性

 フロントマンは死に追いやるゲームの進行を総指揮する悪役ですが、演じるイ・ビョンホン自身はフロントマンという人物像をどう捉えているのか、尋ねた時です。「物語の中にフロントマンの弟が登場することそのものが、フロントマンにおいても人間性を表現していこうとする表れだと思いました」と説明し始めてくれました。

 フロントマンの弟とは警察官のジュノ(ウィ・ハジュン)です。ピンクのジャンプスーツを着て、ゲームに潜入した人物です。シーズン2では兄弟の関係性が掘り下げられ、シーズン3では展開のカギを握っていきそうな存在です。

 そんな弟ジュノの存在があることで「どんなに残虐な決定をしても、恐ろしい行動や発言をしても、感情がまったくないようなフロントマンの人間性が見えたり、感じたりする仕掛けが作られている」というのです。

 演技するうえでも意識したと言います。「フロントマンはジュノの兄としての“ファン・イノ”が心の中に存在しているようにも思い、残忍な決断を下す裏できっとこの人もつらかっただろうなと、視聴者がそう感じ取ってくれるかもしれないと考えながら演技をしました」。

 シーズン3に限定した話を前提としていませんでしたが、イ・ビョンホンが語ったフロントマンのこの心情の揺れは残忍性が高まるゲームのなかで人間ドラマが見えてくることを暗示しているように思います。

■人気韓国アイドルが演じる悪人

 シーズン2から新たに起用された元IZ*ONEのチョ・ユリとZE:Aのボーカルで俳優のイム・シワンに聞いた話からもキャラクターの人間的な姿にこだわった作品であることがわかります。

 チョ・ユリ演じるジュニとイム・シワン演じるミョンギは、物語の中で恋人同士という設定で、共に緑のジャージ姿に身を包みゲームに参加しています。

 「ミョンギという役の第一印象は正直に言うと、良くなかったんです」とチョ・ユリが茶目っ気を交えて明かすと、イム・シワンもそれに同意し、ドンヒョク監督から説明を受けたキャラクター像についてさらに話してくれました。

 「ミョンギはストーリーの中で悪い人に見えますし、正しくない選択もします。でも、実は人間的な面があることを演技指導のなかで理解しました。同じゲーム参加者のサノス(元BIGBANGのT.O.P)を殺した直後、ジュニと話した時の表情はまさにミョンギの人間味を見せたシーンだったと思います」

 このイム・シワンのコメントからも残忍性と人間的情緒が交錯するドラマがシーズン3で加速していくように思うのです。ジャンルに限らず韓国作品全般が人間味を映し出す表現を大事にしていることからも予想できます。

 まだまだ「イカゲーム」の勢いは続いていきそうです。シーズン3配信日の解禁はロサンゼルスで現地時間1月29日に開催されたNetflixの2025年コンテンツ発表会で明かされ、「イカゲーム」のほかにも目玉作品の配信が年内に予定されていることがわかりました。

 そこには「イカゲーム」と並ぶ超人気作品の「ウェンズデー」と「ストレンジャー・シングス」の新作も含まれます。強力な布陣のなか、たとえ予想は裏切られても、期待は裏切らない最終章を望みます。

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最終更新:2/7(金) 12:02

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