新年度に昇格・あるいは新たな配属でプロジェクトリーダーを任された人も多いのではないでしょうか。
自分に与えられたチャンスを生かし、メンバーとのコミュニケーションを良好にして、成果を出すためにはどうすれば良いのか、日々試行錯誤を繰り返している人もいると思います。
これまで述べ2万人超のリーダー育成を手掛けた人材コンサルタント、園部浩司さんの著書『変化をもたらすリーダーは何をしているのか?』(フォレスト出版)から一部抜粋・編集してお届けします。
■変化をもたらすリーダーのポイント
私自身が試行錯誤しながらたどり着いた、“変化をもたらすリーダー”に必須のキーポイントについて、詳しくお伝えします。
いくつかあるキーポイントのうち、本稿では、「話しかけやすい、相談しやすいリーダーを常に意識する」ということを解説します。
相談しやすいリーダーは、常に笑顔である
メンバーが相談しやすいリーダーとは、「この人と働くと楽しいな、安心して働くことができるな」とメンバーが感じる人です。どういう人と働くと楽しいのか、安心して働くことができるのかを考えたら、まずは笑顔ではありませんか。
笑顔が嫌いな人は、世の中にあまりいないと思います。少なくとも私自身は、今まで会ったことがありません。世の中の人は笑顔が好きなのだから、笑顔にならないでいる理由がありません。
■表情筋を軟らかくする
笑顔というのは、表情筋と深い関わりがあります。表情筋とは、顔、頭、顎の表面にある薄い筋肉のことです。笑顔は、目元がゆるんだり、口角が上がるなど、表情筋の動きによって作られます。
この表情筋は、始終動かしていないと硬くなる特性があります。赤ちゃんは1日約400回も笑うといわれていますが、それは表情筋が柔らかいからこそなせる技です。
大人になると、そうそう感情を豊かに表現しなくなっていきます。楽しいことばかりではなく、つらいことや悲しいこと、心地よくないこともたくさんあるという事情もあると思います。
しかし、つらいとか悲しい、心地よくないという感情を顔に出すわけにいかない場面もたくさんあるでしょう。
だから大人の表情筋は、放っておくとだんだん硬くなっていきます。自分で意識して目元をゆるめたり、口角を上げるなど、表情筋を動かさないと、笑顔が顔に表れにくくなるわけです。
そこで、「つねに笑顔でいよう」と思うなら、自分で意識して、1日に何度も笑顔を作るようにしなければなりません。そのようにしてはじめて、つねに笑顔でいることがかなうのです。
そして笑顔でいることが、人から見て、元気そう、楽しそうと感じられる要素になります。
メンバーから見たリーダー自身が「この人は元気そうだな、いつも楽しそうだな」と感じられる人でなければ、一緒に働きたいとは思われないでしょう。だからまずは笑顔が大切です。
「おはようございます」や「お疲れさまです」といったちょっとしたあいさつも、笑顔で元気に。顔の表情だけで笑っていても不十分です。身ぶりや手ぶり、声のトーン、そういった全体の立ち居振る舞いで「明るくて楽しそう、元気そう、エネルギッシュ」と感じてもらえる演出を自分自身で作ります。
今、「え? 演出した笑顔でいいの?」と思った方、心配しなくても大丈夫です。
先にも述べたように、大人の表情筋は放っておけば硬くなります。ですからそもそも笑顔とは、意識して作る必要があります。そうしないと、どんどん笑顔が失われていくのが自然なことだからです。
そもそも笑顔でいるというのは、大人にとっては努力が必要だと思ってください。
最初は「こんな笑い方でいいかな? こんなふうに明るいトーンで言葉を発したらいいかな?」と考えながらいろいろ試しているうちに、自分のスタイルとして定着します。
そして、ナチュラルな笑顔で、明るく元気そうな立ち居振る舞いができるようになります。
「私は笑顔を作るのが苦手だな」と思っている人は、周りを見回して、笑顔が素敵な人を見つけ、真似してみましょう。
別に管理職やリーダーの方でなくても、同僚や後輩でもOK。
職場にはそういう人がいなければ、たとえばプライベートの友人や、テレビで見かける芸能人の誰かを思い浮かべるのでも構いません。
■相談しやすいリーダーとは
人は、大きく3つのタイプに分かれます。
① 一緒に働くとエネルギーを与えてくれる人
② 一緒に働くとエネルギーを吸い取られる人
③ 一緒に働いても何も感じない人
メンバーのモチベーションを上げるのは、やはりエネルギーを与えてくれるリーダーです。
先にお話しした「笑顔」ももちろんその要素の1つですが、もう1つ大切なのが、「メンバーにはポジティブな言葉をかける。ネガティブな言葉は使わない」ということです。
人は、ポジティブな言葉、自分を肯定してくれる言葉を聞きたいと思う傾向にあります。ですから、「この人の言葉を聞くと元気になる。やる気が湧いてくるな」と思えれば、自ら話しかけたい、相談したいと考えるようになります。
そこで心掛けたいのが、メンバーの良いところを見つけてフィードバックすること。
そのためにはメンバー1人ひとりを、日ごろからよく観察する必要があります。
人は、他人のできていないところや欠点などに目がいってしまうものです。もしあなたが、「人のいいところやできている部分など、ポジティブな要素を見つけるのは苦手」だと思っているとしたら、それは当然のこと。だから安心してください。
そういう意味では、常に笑顔でいるのと同様に、人のポジティブな要素を見つけるのもまた、努力を続けているうちにできるようになります。
「こういうところがこの人の良いところだな」と気づいたら、すかさず本人に、自分の言葉で伝えるようにしましょう。
それと同時に、ネガティブな言葉は使わないように心掛けます。ですから、メンバーに対して、「そういうところがダメだよね」「それができていないよね」などと良くないところやできていないことを指摘するような“ダメ出し”はしません。
もちろん、リーダーという立場にある以上、メンバーに対して時には伝えにくいことを伝えなければならない場合もあります。そういうときには、どのような言い方をすれば相手が受け入れやすいのかを十分考えます。
■どんなこともポジティブワード
基本は、「どんなこともポジティブワードに変換」です。
たとえばメンバーに対して、「この人は他のスキルに比べてコミュニケーションスキルが低い」と感じたとしても、それをそのまま本人に伝えたりはしません。
「あなたはコミュニケーションスキルをもっと磨くと、今よりさらに仕事の幅が広がりますね」と、ポジティブな表現へと変換して伝えるようにします。
メンバーに対してネガティブな言葉を言わないようにするには、仕事の場だけでなくプライベートも含めて、日頃から自分でもできるだけネガティブな言葉を使わないようにするのが有効です。
たとえば「園部さん、忙しそうですね?」と聞かれても、「いえいえ、充実していますよ」と、笑顔でポジティブなワードに変換することを意識してます。
あなたが誰かに話しかけたいと感じるとき、それはどんなときでしょうか。
その人があなたの話をちゃんと聴いてくれるからではないですか? 話を聴いてもくれない人に、わざわざ話しかけたくないですよね。
リーダーも同じです。メンバーが「このリーダーなら、私の話をちゃんと聴いてくれる」と感じるからこそ、話しかけたくなるのです。
■メンバーの話を「聴く」
ビジネスコミュニケーションの本などにも、ビジネスを円滑に進めるためのノウハウとして、よく「傾聴」という言葉が取り上げられています。
「人の話を聴く」というのは、コミュニケーションの基本です。
リーダーは、メンバーの話をただ聞くだけではなく、メンバーが気持ちよく話し続けられるように、「あなたに関心がありますよ。話を聴いていますよ」と感じてもらえるようなリアクションをする必要があります。
ですから、メンバーが十分話してすっきりしたと感じるまで、うなづいたりあいづちを打ったりします。
「話を聴いてもらえた」と感じられた経験は、メンバーの表情や態度に表れます。
表情や態度が明るく、生き生きしたり、「話を聴いてもらえてよかったです」「次の報告ができるのが楽しみになりました」といった感想を口にするようにもなります。
メンバーの話を聴くときの表情は、先にも述べた通り、もちろん笑顔です。笑顔がメンバーに安心感を与えてくれます。
それから、メンバーの話を否定するような態度や言葉は出しません。
その点も、先に述べた「ネガティブな言葉を口にしない、ダメ出しをしない」というのと同様です。
メンバーが「この人なら私の話を受け止めてくれる、気持ちよく話すことができる」と思って安心できるように、上下関係を感じさせないフラットな態度を心がけます。
東洋経済オンライン
最終更新:5/14(火) 6:41
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