トランプ氏が経済手腕でバイデン氏リード、有権者心理をデータで解読

5/18 0:27 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 11月の米大統領選に向けた世論調査では、経済運営の手腕に関してバイデン大統領よりも、トランプ前大統領を有権者はより信頼していることが繰り返し示されている。

実のところ、バイデン政権下で雇用情勢は1960年台以来の好調さを保ち、全体的な経済成長もトランプ政権を上回るが、有権者の実感には反映されていない。むしろ有権者の関心は今年、新型コロナウイルス禍後の物価高騰に集中している。

ブルームバーグとモーニング・コンサルタントが激戦州を対象に行った4月の世論調査では、トランプ政権下の方がバイデン政権下よりも経済的に良かったとの回答は51%に上り、その割合はバイデン政権下の方が良いと回答した32%を上回った。15項目の経済問題のうち、有権者の最大の関心事はダントツで生活必需品の価格だった。

バイデン・ハリス陣営の報道官は、大統領は「ドナルド・トランプの失策が残した混乱から、偉大な米国の復活を導いてきた」と指摘。米経済は利上げがリセッション(景気後退)の引き金になるだろうとの市場予想を上回る好調さをみせたと述べた。その上で、ブルームバーグが本記事で選んだ指標を「欠陥がある」とし、バイデン大統領の就任以来、1500万人の新規雇用が創出されたと指摘した。

トランプ陣営の報道官は、コロナ禍の雇用喪失は割り引いて考えるべきだと主張。トランプ氏が返り咲きば「米国第一主義、成長・雇用の促進策を実施し、すべての米国人の生活を向上させる」と述べた。

有権者の経済に関する体験はまず購買力から始まる。

可処分所得

国民1人当たりの実質可処分所得(税引き・インフレ調整後)は生活水準を測る明確な指標だ。バイデン政権下で改善したが、平均するとトランプ政権時代の約4分の1のペースにとどまる。

トランプ氏は、バイデン氏よりもはるかに多くの財政赤字を伴う刺激策で景気を活性化させ、コロナ流行による経済危機が起こる前から、富裕層に偏った10年間で1兆9000億ドル(約295兆円)規模の減税を実施した。

超党派の非政府組織(NGO)「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」の推計によると、トランプ氏はさらに現金給付を含むコロナ救済策に3兆5000億ドルを投じた。そのためコロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)が経済に大きな打撃を与え、失業率が急上昇する中でも、米国人の所得は押し上げられた。

CRFBの分析によると、トランプ氏の減税とコロナ救済策に対して、バイデン氏は差し引き2兆20000億ドルの救済策を実施した。両氏の相次ぐ景気刺激策によって連邦債務は急増した。

それでも、バイデン政権下における可処分所得の伸びは、インフレによって第二次世界大戦後の歴代大統領の中でも極めて低い水準にとどまる見通しだ。

インフレ

バイデン政権下における消費者物価指数(CPI)の累積上昇率は、過去40年のどの歴代大統領よりも高くなる可能性が高い。これに対し、トランプ政権下のインフレ率は概ね米金融当局の目標である2%前後で推移し、さらに低い水準で任期を終えた。

トランプ大統領が就任した2017年のインフレ率は2.5%で、コロナ流行に伴う経済危機でインフレ率はほぼゼロになった。経済再開に伴い2022年6月には40年ぶりの高水準となる9.1%に急上昇。その後、インフレは下がってきたが、4月は3.4%となお高水準にとどまる。

共和党はインフレ高進を招いたとして、バイデン大統領が主導した2021年3月のコロナ救済法やその他の連邦支出を非難している。しかし、トランプ氏の任期中にもコロナ救済の現金給付は実施され、減税も行われた。トランプ、バイデン両政権下で実施されたコロナ救済策の効果が合わさり、経済活動の再開時に物価を跳ね上がらせる誘因となった可能性が高い。

これに加え、プライチェーンの目詰まりも、さらなる(そして重大な)インフレ要因となった。

失業率

バイデン政権時代の平均失業率は推定4.1%と、リンドン・ジョンソン政権(1965ー1969年)を除けば、現代における歴代大統領の中で最低となる。

失業率は2019年末の3.6%から、コロナ禍が最も深刻だった2020年4月には14.8%に跳ね上がった。トランプ氏が大統領を退任した月には6.4%に低下。バイデン政権になっても景気回復とともに下がり続けた。

バイデン氏は2年余りにわたって失業率が4%を割り込んでいることを実績として誇ることができる。低失業率の記録としては過去半世紀余りで最も長い。

好調な雇用機会の持続は、マイノリティーや障害者など、歴史的に仕事に就くのが困難だった層にとりわけ恩恵をもたらした。アフリカ系米国人の失業率はバイデン政権下で過去最低を記録したが、コロナ禍直前のトランプ政権下でも数十年ぶりの低水準に下がった。

18歳未満の子供を持ち、仕事を持つ母親は、データがさかのぼれる2009年以降で最も多い。これは好調な労働市場に加え、リモートワークやハイブリッド型勤務の普及が後押しした可能性が高い。

株価

バイデン、トランプ両氏の下で株価は急上昇した。バイデン政権下におけるS&P500種株価指数の累積上昇率(15日終値時点)は、同時期におけるトランプ政権時代の上昇率をわずかに上回っている。

トランプ政権時代の減税により、連邦法人税率は35%から21%に下がり、企業利益と株価を押し上げた。金利も低く、インフレ率も3%未満に抑えられていたことも、株価の支援材料だった。

バイデン政権下では、高金利にもかかわらず、株価はこのところ好調だ。力強い経済成長が企業利益を押し上げ、人工知能(AI)の進歩が生産性向上への期待を高めている。またハイテク7社で構成する「マグニフィセント・セブン」の突出した成長も市場の追い風となっている。

住宅

バイデン政権下で住宅購入のハードルがはるかに高くなったのは、インフレ抑制に向けた急ピッチの利上げが住宅ローン金利を押し上げたことが大きい。

もっとも、住宅ローン金利は現代において、オバマ政権以前の歴代大統領よりは低い水準にある。

だが、コロナ禍の超低金利がかえって住宅購入を難しくしている面もある。低い金利でローンを借り換えた住宅所有者は売りたがらないため、供給が減り、価格高止まりを招いている。

経済成長率

全体的な経済成長率は、バイデン政権の方がトランプ政権を上回っている。コロナ流行時に積み上げた貯蓄と、バイデン政権のコロナ救済策による景気刺激が後押しした。

またバイデン政権下の米経済は、コロナ禍からの経済再開で欧州連合(EU)や日本、英国といった諸外国を上回る回復を遂げている。

原題:These Figures Show Why Voters Prefer Trump to Biden on Economy(抜粋)

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:5/18(土) 0:27

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