「A、B、Cの発言をもとに、14ある候補から“チャーリーの誕生日”を特定できるか?」
これは知識や計算はいっさい不要で、「考える力」のみが問われる「論理的思考問題」のひとつ。論理的思考問題はGoogle、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験でも出題され、「スティーブ・ジョブズ超えの天才」と言われたあのピーター・ティールも自社の採用試験に取り入れた。これまでの正解が通用しない時代に必要な「思考力」を鍛える、「最高の知的トレーニング」でもある。
そんな論理的思考問題の傑作を世界中から収集し、解説した書籍が『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』だ。「論理的思考」「批判思考」「水平思考」「俯瞰思考」「多面的思考」が身につく67の問題を紹介。「頭のいい人の思考回路」がわかり、読むだけで、一生モノの武器となる「地頭力」が鍛えられると話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「難しすぎる!」と世界中で話題になった難問を紹介する。(構成/石井一穂)
● 言葉に表れていない真意に気づけるか?
思考の読み合いは、ここから加速していきます。
次の問題にも「わからない」という発言が。
この言葉が意味することを見抜けるでしょうか。
「チャーリーの誕生日」 A,B,Cの3人がチャーリーに「誕生日はいつ?」と尋ねた。
チャーリーは下の候補のどれかだと告げた。
1990年4月14日
2000年2月19日
2000年3月14日
2000年3月15日
2000年4月15日
2000年4月16日
2001年2月15日
2001年3月15日
2001年4月14日
2001年4月16日
2001年5月14日
2001年5月16日
2001年5月17日
2002年2月17日
そしてチャーリーはAに正解の「月」を、Bに「日」を、Cには「年」を伝えた。
そのことは、3人もお互いにわかっている。
A「私はわからないけど、Bもわかっていないよ」
B「そうだね。Cもわかっていないよ」
C「うん、わからない。でもAもまだわかっていないよ」
B「あ、わかった」
A「いま、全員がわかったね」
チャーリーの誕生日はいつ?
イラスト:ハザマチヒロ
次のページで、正解と考え方をお伝えします。
<正解> 2000年4月16日
14~15歳向けの数学の問題として2015年に登場した「シェリルの誕生日」という超有名な問題がありました。
「難しすぎる」と世界中で評判になった話題作ですが、こちらの「チャーリーの誕生日」は、その進化版。
発表したのは、米国最高峰の頭脳が集まるNSA(米国国家安全保障局)です。
シンプルに見える状況ですが、さまざまな多面的思考が必要になります。
● 「Bはわからない」と、わかっていたA
この問題、考え方自体はとてもシンプルです。
3人の会話の内容をふまえて、示された「14の候補」の中から正解を絞り込んでいくだけです。
しかし発言の内容は、「わからない」ばかり。
よって、
「わからない」という発言から、わかること。
これを見抜いていく必要があります。
では、一人ひとりの発言から何がわかるのか、考えていきましょう。
“A「私はわからないけど、Bもわかっていないよ」”
14の候補のなかで、1つしかない日付があります。
それは「19日」です。
もし正解が「19日」なら、Bは正解の日付を聞いた瞬間、即座に「2000年2月19日」が正解だとわかります。
しかし、正解の「月」を知るAは「Bもわからない」と言ってのけた。
「日付だけで特定できる可能性がない」と知っていたからです。
「19日」が答えになりようがない、つまり、
「2月」が正解ではないと知っていたということです。
よって、正解の月は「2月」ではないことが判明します。
候補の中から「2月」を含む選択肢が3つ消えました。
● Bが「わかった」と言わなかったからわかったこと
現在の候補:
1990年4月14日
2000年3月14日
2000年3月15日
2000年4月15日
2000年4月16日
2001年3月15日
2001年4月14日
2001年4月16日
2001年5月14日
2001年5月16日
2001年5月17日
次に、Bの発言を考えてみましょう。
“B「そうだね。Cもわかっていないよ」”
なんの変哲もないこの発言が、本問における難関となります。
発言の内容を考える前に、見落としてはいけないポイントがあります。
それは、Bが「そうだね」と言っているということです。
BはAに「あなたにもわからない」と言われたことで、「2月」が選択肢から消えたことに気づいているはずです。
それでも、答えを特定できませんでした。
つまり、現状の選択肢においても「日付だけで特定できる日」は正解ではないということです。
残っている候補のなかで「17日」は1つしか登場していないため、もし正解が「17日」なら、BはAの発言を聞いて正解を特定できます。
それができなかったということは、候補から「17日」が消えます。
● 「Cはわからない」と、わかっていたB
現在の候補:
1990年4月14日
2000年3月14日
2000年3月15日
2000年4月15日
2000年4月16日
2001年3月15日
2001年4月14日
2001年4月16日
2001年5月14日
2001年5月16日
では、もう一度Bの発言に戻りましょう。
“B「そうだね。Cもわかっていないよ」”
Bは、「Cにはわからない」とわかっていた。
この発言の考え方は、最初に考察したAの発言と同じです。
候補のなかには、「年」がわかるだけで特定できる選択肢があります。
それは、14の候補のなかで1つしかない「1999年」。
つまり正解が「1999年」なら、Cはこの時点で正解がわかります。
しかしBは「Cにはわからない」と断言しました。
「年だけで特定できる可能性がない」と知っていたからです。
「1999年」が答えにはなりえない、つまり「14日」が正解ではないと知っていたのです。
よって、正解の日付は「14日」ではないことが判明します。
「14日」を含む選択肢が候補から除外されます。
● 「Aはわからない」と、わかっていたC
現在の候補:
2000年3月15日
2000年4月15日
2000年4月16日
2001年3月15日
2001年4月16日
2001年5月16日
次に、Cの発言を考えてみましょう。
“C「うん、わからない。でもAもまだわかっていないよ」”
ここまでのAとBの発言により、候補は6つまで絞られました。
ですが、「年」だけで特定できるものはないため、Cにはまだ正解はわかりません。
一方で、「Aもまだわからない」と発言しています。
これは、「Aが正解の月を知っていても、まだ特定できない」と、Cが知っているということです。
月を知っているだけで特定できる選択肢は「5月」です。
もし正解が「5月」なら、Aはこの時点で正解を特定できます。
しかしCが「Aもまだわからない」と断言したということは、答えが「5月である可能性はない」と知っているということです。
つまりCは、正解の「年」が「2001年」ではないと知っていたのです。
よって、正解の年は「2001年」ではないことが判明します。
「2001年」を含む選択肢が候補から除外されます。
現在の候補:
2000年3月15日
2000年4月15日
2000年4月16日
ここまでくれば、もう簡単です。
次の、Bの発言を見てみましょう。
”B「あ、わかった」”
候補が3つに絞られた段階で、「日」を知るBが正解を見抜きました。
つまり候補リストの中で「日」が1回のみ登場する日付が正解です。
以上より、チャーリーの誕生日は2000年4月16日です。
● 「思考」のまとめ
最初の考え方さえわかってしまえば、あとはその繰り返し。
難易度のわりに、考え方は意外とシンプルでした。
ネックになるのは、最初の「Bもわかっていない」と断定したAの発言です。
ここで、「なぜAには断定できたのか」を考えられるかどうかが最大のポイントでした。
「わからないことが、わかっている」ということから、わかることを考える。
その視点さえ得られたら、難しい問題ではなかったと思います。
・発言の内容だけでなく、その発言の背景や、発言者の脳内にある情報にも着目すると別のヒントが見えてくる
(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)
野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。
ダイヤモンド・オンライン
最終更新:4/26(金) 6:02
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