50代同士の再婚「子どもたち」のリアルな反応

5/26 9:41 配信

東洋経済オンライン

結婚相談所の経営者として婚活現場の第一線に立つ筆者が、急激に変わっている日本の婚活事情について解説する本連載。今回は、中高生の子どもを育てるシングルマザーとシングルファザーの出会いを通して、これからの時代の新しい婚活と結婚スタイルについて解説します。

■子どもが巣立ったときのことを考えて…

 40代後半のシングルマザー、美香さん(仮名)は、高校生の息子と中学生の娘を育てながら婚活を始めました。年収は1000万円以上あるので、婚活を始めた理由は、「経済的に誰かを頼って生きたい」ではなく、将来子どもたちが巣立ったときに「誰かと一緒に生きていきたい」と思ったから。

 「バツイチ、しかも子連れは婚活に不利」という認識が当初からあり、お見合いではどんな男性と会ってもいつも謙虚。同じアラフィフでも、結婚経験のない女性は比較的自己評価が高く、男性に対して上から目線のことが多いのですが、そういう女性たちと比べると、本人が思うよりも男性からの好感度は高いほうでした。

 何人かお見合いした男性の1人が、シングルファザーの純也さん(仮名)でした。やはり、アラフィフで高校生の息子がいます。ひとり親家庭のうち、父子家庭の割合は15%にも満たず、その上、婚活中のシングルファザーはかなり珍しい存在です。結婚相談所にもようやくパラパラと見られるようになったという程度。

 お見合いの日、純也さんは待ち合わせ場所に走ってやってきたそうです。週末だったので家事がたまっていて余裕がなかったのかもしれません。約束の時刻の5分前でしたが、美香さんのほうが早く着いて待っていました。「すみません。お待たせしました」と、純也さんが汗を拭こうと出したハンカチを見て、美香さんは驚きました。

 純也さんのハンカチはきれいにアイロンがけされ、四角に折った端と端がピシッと揃っていたのだそうです。美香さんはそこに好感を持ったと言います。

 婚活女性の中には、こうした場合に「私より後から来るなんてどういうこと?  男性が先に来るべきでしょ」と怒ってしまう人も少なくありません。

■「ハンカチ」はアピールポイントだった

 ところが、美香さんは怒るどころか好感を持ったのです。細かいところに気がつくし、その人のいいところを見てあげようとする。それは美香さんのもともとの温厚な性格から来るものかもしれないし、子育ての経験が影響しているのかもしれません。あとで純也さんに聞いたら、「実は、ハンカチはアピールポイントだったんです」と明かしていました。

 「シングルファザーは婚活で苦戦すると思ったから、家事力を自分のアピールポイントにしようと考えた。ビシッとアイロンをかけたハンカチを持っていき、どこかのタイミングで見せられたらきっと気に入ってくれるんじゃないかと思った」とのこと。

 まさにそこを美香さんがしっかり受け止めてくれたわけですね。お見合いはうまくいき、何回目かのデートで2人はドライブをしました。そのときにはクイズ形式で互いのことを語り合い、とても楽しかったそうです。

 これもやはり子育ての経験が生かされているのでしょうね。小さな子どもがドライブ中に騒ぎ出したときに「クイズを出し合おう」などとなだめる。気晴らしの仕方を心得ているわけです。子育てに関する共通の話題も多く会話は大いに弾んだそうです。

 2人の仲は順調に深まっていきましたが、クリアしなければならない問題がいくつかありました。

 まず、お子さんに婚活についてどう伝えるか。美香さんのご家庭では、息子さんはまったく気づいていなかったので、お相手が決まってから伝えることにしました。

■子どもたちに伝えてみたら…

 一方で、娘さんは、ママが急におしゃれになって週末にうれしそうに出かけていくところから何も言わなくてもすぐに察したそうです。そこで美香さんは娘さんには正直に話しました。

 「ママはあなたたち2人が大きくなってうれしいけれども、いずれ家を出ていってしまうことを考えると寂しい。そのときママは60代になってしまう。今のうちに婚活したい。いい人が見つかったら紹介するね」。娘さんはうれしそうに「わかった。待ってるね」と言ってくれたそうです。

 純也さんのご家庭では、照れもあったのかほとんど話しませんでした。ただ、「結婚相談所に入ったよ」と告げると、息子さんは「足を引っ張らないようにするよ、親父」と静かに言っていたそうです。お父さん思いの息子さんですね。

 お見合いからたった3カ月で、2人は結婚の意思を固めました。シングルマザーと初婚男性が結婚するケースはたびたびありますが、シングルマザーとシングルファザーの結婚は珍しい。本人たちも想定していませんでした。

 次の問題は一緒に暮らすかどうか。私は婚活初期から美香さんに「無理して一緒に住む必要はありませんよ」と提案していました。

 「今の時代、別居婚や週末婚は珍しくありません。子どもたちの成長に合わせてスタイルを変えていけばいい。せめて娘さんが高校生になるまであと数年は、今のままそれぞれのファミリーで別居して、たまに美香さん、純也さんが行き来したり、子どもたちだけが行き来したりする生活をして様子を見てから同居したほうがいいと思いますよ」。このアドバイスによって美香さんは気が楽になったようです。

■子ども同士がいきなり家族になるのは難しい

 年頃の子どもたちがいきなり家族として一緒に住むというのは非常に難しい。まず、物理的に、どちらの家に住むにしても手狭になるケースが多いでしょう。

 引っ越す場合は、場所によっては子どもを転校させなければなりません。親の再婚が理由での転校だと、子どもはすんなり納得しないかもしれませんし、塾も変えるのかどうかといった問題が山ほど出てくる。実際、転校について揉めて結婚がなかなか進まないカップルもいます。

 もちろん心理的な面での心配もあります。子どもたちの性別や性格、育った背景にもよりますが、いきなり「お父さん」「お母さん」と呼ぶことはハードルが高い。

 年頃の男の子と女の子だと同居に抵抗を示すかもしれない。子どもが公立小中学校に通っていた場合、同じ学校に行くことになりますから、周りに対して気まずい面もあるでしょう。特に、思春期のお子さんの場合はゆっくりと時間をかけてサポートしてあげなければなりません。

 かつては夫がたとえ暴君であっても妻は耐えて仕えていた結婚。それは女性の働き口が少なく生活するすべがないために我慢して小さくなっていたから。今は女性がどんどん社会進出しているので、夫に愛想を尽かしたら我慢せずに離婚します。3組に1組の夫婦が離婚している時代です。

 そんな時代にあって「子どもがいるから再婚は無理」とあきらめてしまうのはもったいない。結婚のスタイルも多様化していますし、家事・育児ができる男性も増えています。子どもを1人で育てるよりも、新しいパパ、ママがいたほうがいい。

 日本も夫婦別姓を認めるなど法改正を進めて、結婚しやすく、同時に離婚も再婚もしやすい環境にしてほしい。それがひいては子育てしやすい環境にもなり、少子化対策にもなるのではないでしょうか。

■長い人生のうち何回結婚しても悪くない

 20年以上前のこと、友人女性がアメリカ人男性と結婚しました。男性の母親は医者で5回結婚していました。ウェディングパーティーには彼と血が繋がってない兄弟が20人以上出席していました。

 「ステップブラザー」「ステップシスター」といった話が当たり前のように飛び交い、大家族がみんなで踊って楽しそうにしていて、一般的な披露宴とは雰囲気がまったく違う。当時、私は「アメリカは進んでいるなあ」と大きな衝撃を受けたものです。

 1回の結婚でうまくいけばもちろんいいのですが、何事も1回で成功するとは限りません。20代1回、30代で1回、40代で1回⋯⋯と、長い人生のうちに4、5回結婚してもいい時代なのではないでしょうか。

 その都度、できた子どもも、「前の夫の子どもだから」「相手の連れ子だから」と区別するのではなく、みんなで仲良くする。別れた相手だって縁があって一度は結婚したのだから、一時的に憎み合うことがあったとしてもゆるやかにつながっておけば、老後また仲直りする可能性だってあります。

 そうしてみんなが家族として、みんなで子育てしていく。そんな「多婚時代」に、これからはなっていくのではないかと思います。

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最終更新:5/26(日) 9:41

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