副業解禁で社会のルール・常識が変わっても楽しく生き抜く キャリアの「ポートフォリオ化」がもたらす利点

11/30 16:02 配信

東洋経済オンライン

近年、「副業」という言葉が広く浸透し、さらに「複業」や「パラレルキャリア」という働き方に注目する人が増えています。さらに、単一の職種や雇用形態に縛られず、複数の仕事やプロジェクトを組み合わせて柔軟にキャリアを構築する人を指す「ポートフォリオワーカー」という、新しい働き方も提唱されています。
『ポートフォリオ型キャリアの作り方 「複業力」で変わる働き方、そしてお金と自由』から一部抜粋・再構成の上、キャリアを充実させるための具体的なポートフォリオ構築方法を紹介します。

■社会のルール・常識は変わる

 一昔前の日本の働き方は、一つの会社に勤務してキャリアやスキル、給与を伸ばしていくことが一般的でした。

 しかしながら現在は企業が競争力を維持するために、労働力の適切な配置や組織の再構築が必要な時代になっています。また、労働法や雇用規制の緩和や、労働者の価値観やキャリア意識の変化などにより、終身雇用制度よりも柔軟な雇用形態が求められるようにもなりました。

 2018年あたりから、副業・複業・パラレルキャリアという言葉が使われるようになり、新しい働き方として浸透してきています。みなさんの周りでも、副業に興味を持っている、あるいはすでに副業を始めている人も出てきているのではないでしょうか。

 副業容認の大きな要因の一つとして、日本政府が掲げた「働き方改革」という方針が挙げられます。

 2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。同時に同省が提示していた「モデル就業規則」を改定し、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」という規定を削除し、副業・兼業について規定を新設しました(第14章第67条)。

 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」についての詳細な解説は割愛しますが、要はモデル就業規則の内容が「原則副業禁止」から「原則副業自由」に変換されたわけです。

 労働者としては収入源が一社の給与だけというのは、先行きの見えないこの時代では大きなリスクになります。突如として倒産する企業もあれば、業績不振でリストラを断行する企業もあります。

 そのリスクは複数の収益源を作っておくこと、つまりポートフォリオ型キャリアを構築しておくことで回避できます。収入がいきなりゼロになることは準備によって防げるのです。

 さらに複数の収益源があるということは、人生の選択肢を増やすことにも繋がります。給料は下がっても昔から夢だった職に就きたい、副業で得た資金でデザインスクールに通いたい、思い切って独立したいなど、一つの会社からの給与の他に収入があることで、心の余裕が生まれ、新たなチャレンジに踏み出しやすくなるのです。

■副業意向が過去最大に

 副業人材マッチングサービス「lotsful」を展開する、パーソルイノベーションが定期的に行っている「副業に関する定点調査」では、副業経験、今後の副業意向はどちらも2022年5月の調査開始から過去最大になるという結果が出ています。

 労働者が自由な働き方を求めるようになると、企業側も一社に縛り付けておくような雇用形態では優秀な人材を繋ぎ留められない状況になります。

 なぜなら副業を禁止することで、能力の高い社員の離職を促進してしまう可能性があるからです。優秀な人材であればあるほど引く手あまたで、なおかつ少子化による労働力不足も相まって、条件の良い企業に転職してしまうリスクが発生します。

 0:100で人材を失ってしまうのか、それとも業務量は50:50になったとしても在籍してくれるのかは大きく違います。また副業が一般化されることで、他の会社に勤めている優秀な人材を自社に招き入れるチャンスも生まれます。

■副業・複業マッチングプラットフォームも続々登場

 現在の日本は労働力不足のフェーズに突入していますが、優秀な人材は複数の仕事を請け負いつつ自分の人生を楽しんでいくことができるでしょう。逆に準備(スキル)の足りない人はまったく仕事がなくなる世界になるかもしれません。

 本業の時間外に動画編集の業務委託を請け負う、自分の知識や経験を活かして講演する、ブログやSNSで情報発信をして広告収入を得る、セミナーを販売する、企業や行政機関のアドバイザーとして伴走する、自身のノウハウを盛り込んだ書籍を出版する、オンラインスクールを運営する、など副業には様々な種類があります。

 これらの事例はすべて私も取り組んできたことです。コロナ禍を経て、リモートワークが普及したことで、通勤に使っていた時間を有効活用することもできるようになりました。

 ここ数年で数多くの副業・複業マッチングプラットフォームが誕生しています。マッチングサービスを利用することで、様々な場所で自分のスキルを試すことも可能になりました。

 私は自分の力でお金を稼ぐ力を身につけることは、これからの激動の時代を楽しく生き抜く上で非常に重要な要素だと考えています。

 会社に勤めながらも、本業以外の仕事でお金を稼ぐことができたなら、稼ぐための準備をしていたなら、あるいはコネクションや能力を伸ばしておいたならば、急激な時代の変化に対応できるのです。

 もちろん本業でたくさん稼いで、何かあっても何カ月は耐えられるような状況にしておくというのも一つの方法ですし、本稿で解説する副業と本業の仕事を合わせて収入源を増やしておくことも一つの方法です。あるいは資産運用、例えば株式投資や不動産投資といったあまり手をかけなくても副収入が入ってくるような仕組みを構築するのもいいでしょう。

■これからの時代、キャリアのポートフォリオ化は必須に

 アメリカの格言に「Don’t put all your eggs in one basket.(卵を一つのかごに盛るな)」という言葉があります。

 卵を一つのかごに盛ると、万が一、かごを落としてしまった場合、全部の卵が割れてしまいます。でも卵を複数のかごに分けて盛っておけば、一つのかごを落として卵が割れて駄目になったとしても、他のかごの卵はもちろん無事です……当たり前の話ですよね。

 でもこの当たり前の話を数学的に理論として証明して、ノーベル経済学賞を授与された学者がいます。それがハリー・マーコウィッツという経済学者で1990年に「資産運用の安全性を高めるための一般理論形成」という研究でノーベル経済学賞を受賞しています。

 この理論では資産運用における現代ポートフォリオ理論として、分散投資の重要性について述べられています。資産運用とかポートフォリオという言葉を使うと小難しく感じますが、日常生活における収入の分散化にも同じことが言えます。

 そして自分のキャリアやスキルも一つのポートフォリオになります。多くのポートフォリオを持っておくことがこれからの時代のアピールポイント、あるいはリスクヘッジになります。

 とはいえ、いきなり副業に取り組みましょうと促されても、すぐ行動できる人は決して多くありません。まず自分のキャリアを見つめ直し、一つの副業にチャレンジしてみる。次第に社外でいくつかのプロジェクトに取り組むことができるようになれば、副業から複業へ変わってきます。

 そして副業で得たスキルやキャリアを言語化し、ポートフォリオとして構築することがこれからの時代に必要になってくるでしょう。

東洋経済オンライン

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最終更新:11/30(土) 16:02

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