日本株バブルが来る? 岡崎良介×馬渕磨理子が2025年マーケット予測《楽待新聞》

1/15 19:00 配信

不動産投資の楽待

2024年の株式市場は、日経平均が史上最高値を更新した一方、1営業日における過去最大の下げ幅も記録するなど、歴史に残る激動相場だった。

2025年は、アメリカではトランプ氏の大統領就任が控え、日本でも参議院選挙などの重要イベントが予定されている。市場はどのような展開を迎えるのだろうか。

市場を生き物と捉え、「日本株バブル到来」への道を描く金融ストラテジストの岡崎良介氏と、経済アナリストとして、金利や株価の適正価格を分析する馬渕磨理子氏に、2025年の展望を聞いた。

※収録日:2024年12月22日

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岡崎良介
金融ストラテジスト。野村投信や信託銀行で年金・投信の運用に長く携わり、2012年に独立。BS12の経済番組「マーケット・アナライズConnect」のメインキャスターを務める。

馬渕磨理子
経済アナリスト。2018年から日本初のECFアナリストとして活躍し、2022年には日本金融経済研究所代表理事に就任。自身のYouTubeチャンネルは登録者数約43万人(2025年1月時点)
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■米国債券市場が示す「再利上げのサイン」

岡崎
まずは昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)から振り返っていきます。政策金利が0.25ポイント引き下げられた一方で、2025年の利下げ回数見通しは4回から2回に修正されました。

いろいろ解釈の余地はあると思いますが、市場の反応がすべてです。FOMCが開催された昨年の12月18日、S&P500は1日で3%下がったんですよ。

これはドットチャートによるフォワードガイダンスが始まった、2012年1月会合からの102回で最大の下落です。投資家からすると、継続的な利下げ期待が高まっていたところで「はしごを外された」感がありました。

馬渕
岡崎さんは、FOMC開催前からこうなることを予測されていましたよね。

岡崎
正確にいうと、予測したのは私ではなくアメリカの債券市場なんです。アメリカの景気後退による利下げを織り込んで、長期金利は一時期3.6%まで下がっていましたが、12月のFOMC前には、1年~30年物まですべての債券で金利が4%を上回っていたんですよ。

そして今回のFOMCの結果は、いわば「あと2年くらいはインフレと闘うぞ」という決意表明ですね。当然、お金を借りて事業をしている人は苦しくなるので、それが株価に反映されたわけです。

FOMCの結果を受けて一番上昇したのが5年物金利です。少し飛躍しますが、2030年までのこれから5年間で、再利上げが始まると市場が見ているとも考えられます。

馬渕
それは波乱の展開ですね。翌年は予告通り2回利下げが実施されたとしても、その後は利上げがやってくるかもしれないということですね。

■「経済通」の新大統領は構造的インフレにどう向き合うか

馬渕
アメリカではインフレが簡単には収まらないので、金利も高止まりが見込まれていますが、そんな中で失業率がじわじわ高まっていることも懸念材料だと思っています。

これだけ長期間利上げをしてもインフレが収まらないのは、市場がトランプ大統領就任後の世界を先読みして動いているのか、それともアメリカ国内の潜在的なインフレ圧力が高いのか、どちらが原因なんでしょう。

岡崎
アメリカの構造的なインフレが、ここ数年で手ごわくなったのだと思っています。市場では失業率の上昇が注目されることが多いですが、諸悪の根源は強すぎる求人率なんですよ。

本来、失業率が上がったら求人率が下がらないと釣り合いが取れないのですが、今回は求人率は変わらないまま失業率が上がっているんです。

馬渕
AIでの代替が利かないエッセンシャルワーカーの人手が、常に不足してしまっているわけですよね。

岡崎
おっしゃる通りです。その上、トランプ氏が移民排斥を強行すれば、まさに「傷口に塩」で、人手不足によるインフレがより加速することになります。

もちろん、実際にはそれほど単純な話ではありません。減税やシェールガスの採掘を強化することで原油価格を抑えてバランスを取るかもしれませんし、関税の引き上げも、口先だけで実際には行わないかもしれません。

移民の排斥も、不法移民と正当な手続きを経た移民を分けて対応するのであれば、影響は限定的です。いずれにしても、トランプ氏の意向がはっきるするまでは、常に疑心暗鬼のはっきりしない状態が続きますね。

馬渕
トランプ氏は意外と経済や金融のことをよく理解されていますよね。「ドル基軸を守りたい」というメッセージは、本質をついているなと思いました。

ドル基軸を守るには、アメリカ経済の覇権を守る必要がありますし、株価も下がっては困るはずです。その考えが根底にあるのであれば、着地点はそれほど酷いことにはならないのではないかと思っています。

岡崎
長年トランプタワーを経営してきた商売人ですからね。2016年に初めてトランプ氏が大統領に選出されたとき、最初に何を言ったかというと「マネーサプライが低すぎる」ということなんですよ。

経済に疎い人の発言ではないなと思いましたね。マネーサプライの話ができる大統領は初めて見ましたから。

■日本株は「バブル待ち」の状態?

馬渕
日本に目を向けてみると、日銀は中立金利を表明していないので金融政策の終着点が見えづらいですよね。

あくまでアナリスト的なロジックですが、日本の潜在成長率は0.5~1%程度とされているので、そこまでは短期金利を引き上げることができると考えられます。

その値に、期待インフレ率である2%を加えた中立金利は、2.5~3%と推定できます。もしこの数値が日銀から中立金利として発表されると、市場へのインパクトは大きいでしょうね。

岡崎
理屈はわかるのですが、経済は生き物なので、リハビリが終わって普通に動けるようになっても、企業はラクな状態のままでいたいんですよ。つまり、金利を引き上げなくてもいい理屈を探すんです。

だからこういうんです。「金利を上げなきゃいけないのはわかっている。でも、もっと慎重に進めるべきだ。2年、いや3年待ってみよう」と。

そうやって本来の実力より低い金利が保たれれば、いまに日本株はバブルになると思います。私は日本株をバブル待ちで見ているんですよ。

馬渕
なるほど、バブルを利用して経済をフカすんですね。

岡崎
そうなんです。バブルになったら、みんな「早く利上げしろ」と手のひらを返して怒り出すのですが、インフレ対策はバブルになってから考えればいいと思います。

逆にバブルでもないと、一度凍ってしまった消費が復活するとは思えないんですよね。だって、去年は賃金が上がっても結局消費は増えなかったでしょ。所得が増えた分はほとんど消費に回ってないんです。

馬渕
株価も賃金も上昇してはいますが「浮揚感」が足りないですよね。たしかに、消費が戻ってくるには、もう1~2年経済を過熱させる期間が必要だと思います。

■インデックス投資家でも「最低限見るべき指標」とは?

馬渕
昨年から始まった新NISAの影響で、オルカンやS&P500といった言葉が一般の方にかなり浸透したと思います。講演や解説の仕事でも、若い世代を含めて幅広い層の方々からの投資熱を感じた1年でした。

岡崎
ただ勘違いしちゃいけないのは、新NISAだから株価が上がるわけじゃなくて、企業の価値が高まるから株価が上がるということですよね。

馬渕
企業の成長を描いて投資をする以上、株価のベースとなるEPS(1株当たり利益)×PER(株価収益率)の計算式は、初心者の方でも理解しておいてほしいなと思います。

個別株でも、日経平均やS&P500のような指数でも、企業の利益に対する投資家の期待値で値付けが決まっていて、日経平均であれば、基本的に企業業績に対して11~16倍の範囲に収れんしていきます。

仮に2025年、日本企業全体が平均で前年比10%増益となって、EPSが2700円まで伸びるのであれば、4万4000円から3万3000円のレンジで株価が動くと予測できます。

岡崎
投資家の期待値を反映するPERは実態がないので難しいですよね。例えば去年の7月まで、日銀は利上げをしないというスタンスだったため、投資家の期待値が高まり株価も上昇しました。

ところが、日銀が8月利上げを実施したことで期待が裏切られ、PERが11倍程度まで低下し、株価も急落したというのが、いわゆる「令和のブラックマンデー」です。金融政策は、期待値を適正に保つ仕事なんですよ。

馬渕
少し専門的ですが、IRの実務を担当している立場から「CAPM(資本資産評価モデル)」の話もできればと思います。

配当利回りと業績の予想成長率などの要素を足し合わせた、最終的に株主に還元するリターンがいくらになるのかという試算で、最近は開示する会社が増えてきています。

計算方法は複数あるのですが、トヨタを例に挙げると自社の資本試算評価を6%から10%と評価しており、私の試算では6.65%です。

岡崎
配当が3%あって、1年間の株価の伸びが3.6%あったら6.6%。トヨタの経営陣たちは「トヨタは株主の皆さんに、投資額に対して最低でも6.6%のリターンをお返しします」という意味なんです。

トヨタほどの安定した大企業が6.6%のリターンを提示するのは、大きな意味があります。他の企業に投資する際は、CAPMが「トヨタ以上か、トヨタ以下か」ということが1つの目安になってくると思います。

馬渕
「自分たちはこれくらい成長する」という数値を投資家に開示する、画期的な取り組みです。でも、口先だけの会社もありますから、見極めが大事ですね。

■2025年の市場を生き抜く心構え

馬渕
私からは「ビジネスは先に怒った方が負け」という言葉を贈りたいです。今年の市場は波乱の展開が多いと思うんです。それに参議院選挙もあります。選挙があると、国民が苛立つことが多い印象です。

最近は将来への不安が政治への不満につながり、声を上げる人も多くなっています。それは良いことなのですが、あまり強い言葉を見聞きしていると心が痛むので、マーケットを見るときは、落ち着きを保ちたいです。

岡崎
少し先の話ですが、日本株バブルに向けた買い時についてお伝えします。FRBの再利上げの話をリスクシナリオとしてお伝えしましたが、本当はアメリカの再利上げが始まったときは、株を買うチャンスなんです。

よく考えてみてください。なぜいまアメリカが利下げをするかというと、インフレのピークが過ぎたことと、景気が悪くなる懸念があったからですよね。

利下げは株を買うチャンスとされますが、景気が悪くなって物価が下がると見通されている時期に株を買うのは、本来おかしな行動なんです。

逆にアメリカが次に利上げをするときは、これ以上景気が悪くならないと判断した局面です。日本株にとっても、バブルへ向かう大きな買い場になるのではないかと思っています。



2025年以降の金利や株価の見通しから、トランプ大統領の政策が及ぼす影響、株式投資を行う上で見るべき指標について、岡崎さん、馬渕さんの2人に語ってもらった。

本編では、法人営業の強化で収益力を高めた地方銀行や、バフェット氏の物色で注目を集めた商社株など、2人の日本株「推し銘柄」も大公開。続きはぜひ動画で見てほしい。

不動産投資の楽待

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最終更新:1/15(水) 19:00

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