パウエルFRB議長、雇用市場を支援する用意-インフレ高止まりでも

3/25 1:06 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 2022年にインフレ率が急上昇した際、米連邦準備制度は金利を引き上げることで賃上げスパイラルを防ごうと動いた。失業率が上昇傾向にある現在、金融当局は雇用減のスパイラルに歯止めをかけるため、しばらくの間インフレが高止まりするとしても金利を引き下げる意向を示している。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は20日の記者会見の冒頭で、現在の景気上昇の中で初めて、失業率が予想外に上昇すれば利下げに踏み切る可能性があると表明した。パウエル議長はその後、記者団の質問に答える中で何度もこのメッセージを繰り返した。

連邦準備制度は利下げに踏み切る前にインフレとの闘いに勝利したことを確認するのを待っているが「労働市場が予想外に弱まれば政策対応が必要になる可能性もある」とパウエル議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に述べた。

パウエル議長は、現在の雇用市場に亀裂は見られないと述べたが、エコノミストの中にはそれほど楽観的でない者もおり、多くの州で失業率が著しく上昇していること、派遣労働者の減少が続いていること、労働時間が短縮されていることを指摘している。

いずれにせよ、パウエル議長ら当局者は一見堅調に見える労働市場が短期間に悪化するし得ることを認識している。歴史的に、失業率はいったん上昇し始めると、企業が他社に追随するように人員削減を発表するため大きく上昇する。

パウエル議長は、労働市場が過度に悪化した場合には金利を引き下げる可能性を示すことで、そのプロセスを回避しようとしているようだ。

ブルッキングス研究所ハミルトン・プロジェクトのディレクターで元FRBエコノミストのウェンディ・エデルバーグ氏は「失業率上昇を勢い付かせたくないということだ」と語った。

インフレ率は当局の目標である2%に「手が届きそうな距離」にあるため、パウエル議長は緩和への扉を開けておくことができると同氏は指摘。当局は物価上昇を抑制するために労働市場に打撃を与える必要はなく、数年間はやや高めのインフレに耐えることを選択できると付け加えた。

「時間をかけてインフレ率を2%まで下げることに強くコミットしている。しかし、時間をかけてだ」と議長は強調している。

資産運用会社ポイント72のエコノミスト兼ストラテジスト、ソフィア・ドロッソス氏は22日、ブルームバーグテレビジョンに「中央銀行は、特に米国において、その使命である成長面を支援するために保険をかけようとしている」とし、「これはリスク資産にとって大きな支援だ」と語った。

雇用減速

FRBの最新の経済予測によると、今年の失業率は上昇する見込みだが、それほど大きくは上昇しない。失業率は2年ぶり高水準となった2月の3.9%から、2024年最終四半期には平均4%に上昇するとみられている。

企業が雇用を抑制する中、解雇が相次げば失業率がかなり急速に上昇するリスクを当局は認識しているとパウエル議長は述べた。同時に、特に失業保険申請件数が「非常に低い」水準にあることを指摘し、そのような事態が起きるとは考えていないと付け加えた。

しかし一部エコノミストは、雇用市場に減速の兆しを感じている。UBS証券の米国担当チーフエコノミスト、ジョナサン・ピングル氏の計算によれば、いわゆる「サーム・リセッション・ルール」を発動させるに十分な失業率の上昇を記録した州は20に上る。

元FRBエコノミストで現在はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストであるクラウディア・サーム氏が考案したこのルールは、米国の失業率の3カ月移動平均が過去12カ月の最低値から半ポイント以上上昇したときに景気後退が始まると仮定している。

それはまだ起きていない。この条件が全米に当てはまるには、失業率が4%以上に上昇する必要がある。市場軟化のもう一つの潜在的兆候は、多くの米国人が労働時間を減らしていることだ。

サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は先月ワシントンでの講演で、雇用市場が悪化する危険性はほとんどないとしながらも、「労働市場の転換が歴史的にどのようなスピードで行われてきたかを考えると、そのリスクは念頭に置かなければならない」と述べた。

原題:Powell Ready to Support Job Market Even If Inflation Lingers(抜粋)

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最終更新:3/25(月) 1:06

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